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鑑賞ノート
山本周五郎『狐』考察——人はなぜ、見たいものを信じてしまうのか
山本周五郎の『狐』は、題名だけを見ると、いかにも怪異譚のように思える。 狐が人を化かす。城に怪しいものが出る。誰も正体を見破れない。 そんな昔話めいた空気が、物語の入口には漂っている。 しかし読み終えてみると、この小説で本当に人を化かしてい... -
鑑賞ノート
「お悧巧すぎた」少女の叫び——太宰治『葉桜と魔笛』に見る失われた青春
太宰治の『葉桜と魔笛』は、老夫人が若き日の妹との記憶を語る短編である。 舞台は、日本海沿いの城下町。語り手の姉と妹は、父とともに寺の離れで暮らしている。妹は腎臓結核を患い、医者からは余命百日ほどと告げられている。 ある日、姉は妹の箪笥から... -
鑑賞ノート
若い愛を笑ってしまう前に——山川方夫『赤い手帖』を読む
山川方夫の『赤い手帖』は、深夜の街で行き場を失った一人の男が、若い恋人たちの「愛」に触れ、自分自身の空虚さに気づかされる物語である。 テレビ番組の録音を終えた男は、若い女優に誘いをかけるがかわされ、さらに年上の女優の部屋を訪ねても不在で、... -
鑑賞ノート
回り続ける日常の中で ―芥川龍之介『一夕話』再読と、ささやかな自己認識―
大正11年(1922年)に発表された芥川龍之介の短編小説『一夕話(いっせきわ)』は、劇的な事件や超常的な要素を持たない、一見するととても穏やかで平易な作品だ。『羅生門』に見られる人間のエゴイズムや、『蜘蛛の糸』の教訓、『河童』の鋭い社会風刺と... -
お店と日々
『セロ弾きのゴーシュ』(宮沢賢治)——関係性が人を変える仕事論
宮沢賢治のセロ弾きのゴーシュを読んでいて、どうしても自分のこれまでの仕事の時間が重なって見えてくる。 ゴーシュは楽団のセロ弾きである。しかし、彼はうまく弾けない。指揮者には叱られ、仲間からも遅れている。ひとりで練習しても、なかなか上達しな... -
鑑賞ノート
太宰治『嘘』を解釈する男の限界。この考察すら「男の錯覚」かもしれない
太宰治が昭和21年(1946年)に発表した短編小説『嘘』。戦後の津軽を舞台にした本作は、一見すると「女の嘘の底知れぬ恐ろしさ」を男性目線から語ったホラーめいたエピソードに思えるかもしれない。 しかし、最後まで読み通すと、その印象はガラリと変わる... -
鑑賞ノート
芥川龍之介『魔術』:欲望と芸術をめぐる深層分析
I. 作品の基本情報 著者、初版発行年、国、ジャンル 芥川龍之介の短編小説『魔術』は、1920年(大正9年)1月に、鈴木三重吉が立ち上げた児童文芸雑誌『赤い鳥』で発表されました 。作者は日本を代表する作家、芥川龍之介(1892-1927)で、この作品は彼の作... -
鑑賞ノート
芥川龍之介『一塊の土』の徹底解説:大正期農村のリアリズムと人間のエゴイズム
I. はじめに:都会の作家が描いた、リアルな農村の人間ドラマ 芥川龍之介といえば、『羅生門』や『蜘蛛の糸』のように、知的で少し難しい作品を書く都会的な作家、というイメージが強いかもしれません。そんな彼が1924年(大正13年)に発表した『一塊の土... -
鑑賞ノート
江戸川乱歩「一枚の切符」徹底解説:ネタバレあらすじと大正ミステリの深層
日本探偵小説の祖、江戸川乱歩。その輝かしいデビューは、1923年(大正12年)4月に雑誌『新青年』に掲載された「二銭銅貨」によって飾られた 。緻密な暗号解読を核とするこの本格探偵小説は、当時の読書界に衝撃を与え、乱歩の名を一躍高らしめた。 しかし... -
鑑賞ノート
芥川龍之介「あばばばば」徹底解説:あらすじから時代背景、母性の深層まで
芥川龍之介の後期を代表する短編「あばばばば」。多くの読者がまずその奇妙な題名に首を傾げるであろう 。「あばばばば」とは一体何を意味するのか。ある者は、作者の精神が錯乱し、意味をなさぬ言葉を発しているのではないかとさえ想像するかもしれない。...