2026年9月– date –
-
鑑賞ノート
二十数分の乱歩「日記帳」が、店に着いても終わらなかった
江戸川乱歩の「日記帳」は、暗号ですれ違った二人の話として読まれることが多い。語り手の兄もそう結論する。ただ、日付を並べてみると、その結論は一つの読みにすぎないように思えてくる。 オーディブルで二十数分。買い出しの車の中で聞き終え、店に着く... -
鑑賞ノート
記憶喪失の鬼刑事と動物たち ―「警視庁いきもの係」が描く新しい警察ドラマ―
人と動物の関係性を軸に展開する物語は、これまでも数多く生み出されてきた。しかし、2017年に放送されたドラマ「警視庁いきもの係」は、警察組織という制度化された空間に動物との共生を持ち込むことで、まったく新しい物語の地平を切り開いた作品である... -
鑑賞ノート
ヒッチコック『殺人!』と『メアリー』── 1930年代の英独で描かれた差別と偏見
深夜の劇場で響く女性の悲鳴。暖炉の火掻き棒を手に呆然と立ちつくす若手女優。そして、陪審員席で苦悩する名優の表情──。1930年に公開されたアルフレッド・ヒッチコック監督の『殺人!』は、このような印象的なシーンの連なりによって、観る者の心を鷲掴... -
鑑賞ノート
『宇宙大戦争』(1959) – 戦後日本が描いた壮大な宇宙への夢~円谷英二と本多猪四郎が挑んだ、人類初の本格的宇宙戦争~
1959年に公開された『宇宙大戦争』は、本多猪四郎監督、特撮監督・円谷英二、音楽・伊福部昭という布陣で作られたSF映画である。 当時まだ誰も本格的に描いていなかった宇宙を舞台に選び、その後の世界のSF映画にも影響を残した一作である。 物語の舞台は... -
鑑賞ノート
地下迷宮のメロディ ―― リュック・ベッソン『サブウェイ』が描く自由と再生の物語
暗く湿った地下鉄の通路を、一人の男が疾走している。逆立てた金髪に身なりの良いタキシード姿。その不思議な取り合わせは、この映画全体を貫く異質な魅力を象徴しているかのようだ。 1985年、リュック・ベッソンが世に送り出した『サブウェイ』は、そんな... -
鑑賞ノート
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』評論 ー 戦後日本の闇と人間の再生を描く魂の物語
『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は、単なる人気キャラクターの起源譚を超えた、深い人間ドラマとして描かれた作品である。 昭和31年という時代を舞台に、戦後日本の闇と人間の業を鋭く描き出しながら、それでもなお希望を見出そうとする物語は、現代の観客の心... -
鑑賞ノート
力と色気、戦いと笑い――『アマゾネス対ドラゴン/世紀の激突』
『片腕カンフー対空飛ぶギロチン』『阿修羅/ミラクル・カンフー』『ダーティキッズ ぶきみクン』など、タイトルを眺めているだけで気になってしまう映画がある。今回見た『アマゾネス対ドラゴン/世紀の激突』も、まさにその一本だった。 出典:allcinema... -
鑑賞ノート
山を戻し、祭りを続ける――『七夕の国』における信仰と伝統
あらすじ 大学生の南丸洋二、通称ナン丸は、物体に触れずに小さな穴をあける力を持っていた。ある日、歴史民俗学者の丸神教授が、東北の山間部にある丸川町で消息を絶つ。ナン丸は教授の教え子たちと町を訪れ、そこに自分の家系とも関わる秘密が隠されてい... -
鑑賞ノート
笑っている、この恐怖の前で——江戸川乱歩「白昼夢」を読んで
最初の乱歩体験が呼び覚ました記憶 私が最初に読んだ江戸川乱歩の作品は「踊る一寸法師」だった。あのときの感覚を何と形容すればいいのか、今でもうまく言葉にならない。なんとも言えない恐怖感、おどろおどろしさ。異常な光景を高いところから俯瞰で眺め... -
鑑賞ノート
ヒルダからラナ、シータへ――大人になって見えた『太陽の王子 ホルスの大冒険』の新しさ
『太陽の王子 ホルスの大冒険』を見始めたとき、最初に思い出したのは『未来少年コナン』だった。 荒々しい自然。よく動く少年。崖や海や氷を舞台にした冒険。古いアニメーションらしい素朴な線と、どこか民話のような世界。画面を見ながら、これは後の宮...