2026年8月– date –
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鑑賞ノート
なぜカンヌは「切腹」を悲劇美と呼んだのか
1962年。小林正樹監督の「切腹」が世に出たとき、この映画はある奇妙な分裂を起こした。日本国内では、竹光で腹を切らせるという場面の凄惨さに、賛否が分かれた。 だが海を渡った先——カンヌの映画祭の客席では、同じ場面が、まったく違う表情で受け止... -
鑑賞ノート
あの頃の興奮はどこへ消えたか——『少年探偵団』を読み直して
大人になって読む『怪人二十面相』 正直に言うと、面食らった。『怪人二十面相』を読み始めたとき、それまで読んでいた江戸川乱歩の小説とは明らかに毛色が違うと感じたのである。「屋根裏の散歩者」や「心理試験」のような、じっとりとした人間の暗部を覗... -
鑑賞ノート
5000円で解決する事件、5000円では解決しない動機
きっかけは「水曜どうでしょう」だった。あの番組を通じて大泉洋という人を好きになり、ついでに、彼と一緒にハプニングに巻き込まれていく安田顕のドジっぷりにも、すっかり惹かれてしまった。 出典:SODANE そこから安田顕のファンになり、彼が出演して... -
鑑賞ノート
派手な解決を拒む物語 ― 横溝正史「裏切る時計」の味わい
横溝正史の短編「裏切る時計」を読んだとき、率直に言って拍子抜けした。ミステリーを読み慣れた者にとって、結末はあまりに地味で、ほとんど救いのない形で終わってしまう。だが、そのあっけなさが、かえって新鮮に感じられたのである。 物語は、妻を殺し... -
鑑賞ノート
嘘が嘘を呼ぶとき――『恐ろしき四月馬鹿』の二重構造
悪戯のはずが、本当の事件になった M中学校の寄宿舎で、4月1日の朝に「殺人事件」が発覚する。小崎という学生の部屋は血まみれで、格闘の跡があり、遺体がない。隣室の学生は誰も物音を聞いていない。容疑者は同室の栗岡、証拠は揃っている。しかし栗岡は... -
鑑賞ノート
欠けた三人が揃うとき――『鍵のかかった部屋』のチーム設計
感情で動かない探偵 名探偵には、たいてい動機がある。正義感、使命感、あるいは個人的な執着。エルキュール・ポワロは秩序への信念から動き、コロンボは被害者への共感を隠しながら追い詰める。しかし榎本径(大野智)は、そのどちらでもない。 彼は大手... -
鑑賞ノート
独裁者を笑え――『担へ銃』から『独裁者』へ、チャップリンが22年かけて完成させた「権力への嘲笑」
はじめに 1918年10月、第一次世界大戦の休戦協定締結まで残りわずか数週間という時期に、チャールズ・チャップリンの短編映画『担へ銃』が公開された。その22年後の1940年、チャップリンは長編トーキー映画『独裁者』を世に送り出す。 二作品の間には二つ... -
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『SAND LAND』に学ぶ善悪の本質――鳥山明が遺した「極悪の善人」と「最凶の天使」から読み解く、レッテル社会を生きる私たちへの道標
私たちは日常の中で、どれほど「見た目」や「肩書」に騙されているのだろうか。 「悪魔」と聞けば誰もが邪悪な存在を思い浮かべ、「天使」と聞けば誰もが清らかな正義の味方を想像する。しかし、鳥山明氏が遺した名作『SAND LAND 天使の勇者篇』は、そんな... -
鑑賞ノート
省略の美学――甲賀三郎のデビュー作と、本格探偵小説が成立する条件
はじめに 1923年(大正12年)、二人の新人作家がほぼ同時に「探偵小説」というジャンルへ乗り込んできた。4月、江戸川乱歩が「新青年」に「二銭銅貨」を発表し、その4ヶ月後、甲賀三郎が「新趣味」の懸賞小説に「真珠塔の秘密」を投じ、一等入選を果たした... -
鑑賞ノート
なぜ彼はこの話をしたのか――大坪砂男『浴槽』、答えのない問いが残る20分間
列車の中で、見知らぬ青年が話しかけてくる。 彼は「面白い事件があった」と言い、温泉宿での謎の女性の死を語り始める。語り口は淀みなく、事件は事故として処理済みだという。普通ならここで終わる。 しかし相手はよりによって探偵小説家だった。 大坪砂...