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お店と日々
よだかの星と、今夜のパスタ
宮沢賢治の童話に、『よだかの星』という作品がある。 容姿の醜さゆえに仲間外れにされ、鷹から改名まで強要されたよだかという鳥が、ある夜ふと気がつくのだ。自分が生きるために、夜ごと無数の虫を口に飲み込んでいることに。 「ああ、かぶとむしや、た... -
お店と日々
聞く時代とめくる時間 ― 『ダ・ヴィンチ』休刊を受けて
出版大手KADOKAWAが月刊誌『ダ・ヴィンチ』を今年11月号(10月6日発売)をもって休刊すると発表した。創刊から約32年にわたる歴史に一区切りがつくというこのニュースは、雑誌というメディアの形と役割を改めて考えさせる出来事である。 僕がよく読んでい... -
鑑賞ノート
『D坂の殺人事件』考察|明智小五郎の登場と乱歩が描いた人間心理
はじめに:古い探偵小説を読む面白さ 江戸川乱歩の「D坂の殺人事件」を読むと、まず印象に残るのは、事件そのものの派手さよりも、どこか湿ったような空気です。 舞台は大正時代の東京。古本屋、狭い路地、日本家屋、そこに暮らす人々の視線や気配。今の感... -
鑑賞ノート
芥川龍之介「神神の微笑」を徹底解説!あらすじから「煙草と悪魔」との比較まで
1. はじめに:一世紀を経てなお響く「日本人論」の傑作 芥川龍之介が1922年(大正11年)に世に問うた短編「神神の微笑」。この物語は、一人の宣教師が16世紀の日本で直面した文化的な葛藤を描きながら、単なる歴史小説の枠を超え、私たちに普遍的な問いを... -
お店と日々
日常の中の非日常――カフェが生み出す「特別な一瞬」と芥川龍之介「ひょっとこ」
ひょっとこの面をかぶった男の最期 芥川龍之介の初期作品「ひょっとこ」は、大正時代の浅草を舞台にした短編である。春の花見シーズン、隅田川にかかる吾妻橋の上には、花見船を見物しようと大勢の人々が集まっている。川を下る船の上では、酔った客が踊っ... -
鑑賞ノート
『夢遊病者の死』考察|真相より先に、人は自分の思い込みに追い詰められる
真相より先に、人は自分の思い込みに追い詰められる 江戸川乱歩の短編には、読み終えたあとに妙な湿り気を残すものがある。謎が解けて胸がすっと晴れるのではなく、むしろ真相が明らかになったあとで、かえって空気が重くなる。『夢遊病者の死』は、まさに... -
鑑賞ノート
山本周五郎『狐』考察——人はなぜ、見たいものを信じてしまうのか
山本周五郎の『狐』は、題名だけを見ると、いかにも怪異譚のように思える。 狐が人を化かす。城に怪しいものが出る。誰も正体を見破れない。 そんな昔話めいた空気が、物語の入口には漂っている。 しかし読み終えてみると、この小説で本当に人を化かしてい... -
鑑賞ノート
「お悧巧すぎた」少女の叫び——太宰治『葉桜と魔笛』に見る失われた青春
太宰治の『葉桜と魔笛』は、老夫人が若き日の妹との記憶を語る短編である。 舞台は、日本海沿いの城下町。語り手の姉と妹は、父とともに寺の離れで暮らしている。妹は腎臓結核を患い、医者からは余命百日ほどと告げられている。 ある日、姉は妹の箪笥から... -
鑑賞ノート
若い愛を笑ってしまう前に——山川方夫『赤い手帖』を読む
山川方夫の『赤い手帖』は、深夜の街で行き場を失った一人の男が、若い恋人たちの「愛」に触れ、自分自身の空虚さに気づかされる物語である。 テレビ番組の録音を終えた男は、若い女優に誘いをかけるがかわされ、さらに年上の女優の部屋を訪ねても不在で、... -
鑑賞ノート
回り続ける日常の中で ―芥川龍之介『一夕話』再読と、ささやかな自己認識―
大正11年(1922年)に発表された芥川龍之介の短編小説『一夕話(いっせきわ)』は、劇的な事件や超常的な要素を持たない、一見するととても穏やかで平易な作品だ。『羅生門』に見られる人間のエゴイズムや、『蜘蛛の糸』の教訓、『河童』の鋭い社会風刺と...