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鑑賞ノート
ガラスの短刀との深謀 ── 江戸川乱歩「兇器」を読む
江戸川乱歩の短篇「兇器」は、ミステリーとしてのトリックの面白さだけでなく、人間の心の恐ろしさをじっくり描いた作品である。「ガラスで人を殺す」という、読んだあとも頭から離れない仕掛けと、そこに至るまでの女の計算された演技。この記事では、物... -
鑑賞ノート
炎跡に生まれた縁——永井荷風「にぎり飯」考察
焼け跡から始まる物語 「にぎり飯」は、昭和二十年三月九日夜半——東京大空襲の翌朝から始まる短篇小説である。荷風がこの作品を書いたのは、自らも戦火のなかを生き延びた経験を持つ晩年期のことである。 主人公は深川古石場町で荒物屋を営む佐藤という中... -
鑑賞ノート
誰にも理解されなくても、未来のために泥をかぶる。現代人に刺さる『晩秋』の教え
山本周五郎の短編小説「晩秋」は、武家社会を舞台にしながらも、人間の心の奥底にある「孤独」や「自己犠牲」、そして「許し」を深く描き出した作品です。 出典:日本の古本屋 物語は、父を理不尽に死に追いやられた娘・都留(つる)が、仇(かたき)であ... -
鑑賞ノート
怖いのに見惚れる――『殺し屋の営業術』、鳥井という男について
野宮有『殺し屋の営業術』は、普通に面白かった。 出典:ほんのひきだし まずそこを、変にひねらず書いておきたい。 設定の勝利、と言ってしまえばそれまでだが、営業成績トップの男・鳥井が、殺人現場に居合わせたことをきっかけに、殺人請負会社の営業を... -
鑑賞ノート
江戸川乱歩「百面相役者」考察|Rは百面相役者ではなく、“それを殺した男”なのか
はじめに 江戸川乱歩の短編『百面相役者』は、読了後に「結局、何が真実だったのか」と考えさせる、不思議な余韻を残す作品である。 明確な犯人も提示されず、決定的な真相も示されない。それにもかかわらず、いったんは納得したような感覚を与えられる。... -
お店と日々
よだかの星と、今夜のパスタ
宮沢賢治の童話に、『よだかの星』という作品がある。 容姿の醜さゆえに仲間外れにされ、鷹から改名まで強要されたよだかという鳥が、ある夜ふと気がつくのだ。自分が生きるために、夜ごと無数の虫を口に飲み込んでいることに。 「ああ、かぶとむしや、た... -
お店と日々
聞く時代とめくる時間 ― 『ダ・ヴィンチ』休刊を受けて
出版大手KADOKAWAが月刊誌『ダ・ヴィンチ』を今年11月号(10月6日発売)をもって休刊すると発表した。創刊から約32年にわたる歴史に一区切りがつくというこのニュースは、雑誌というメディアの形と役割を改めて考えさせる出来事である。 僕がよく読んでい... -
鑑賞ノート
『D坂の殺人事件』考察|明智小五郎の登場と乱歩が描いた人間心理
はじめに:古い探偵小説を読む面白さ 江戸川乱歩の「D坂の殺人事件」を読むと、まず印象に残るのは、事件そのものの派手さよりも、どこか湿ったような空気です。 舞台は大正時代の東京。古本屋、狭い路地、日本家屋、そこに暮らす人々の視線や気配。今の感... -
鑑賞ノート
芥川龍之介「神神の微笑」を徹底解説!あらすじから「煙草と悪魔」との比較まで
1. はじめに:一世紀を経てなお響く「日本人論」の傑作 芥川龍之介が1922年(大正11年)に世に問うた短編「神神の微笑」。この物語は、一人の宣教師が16世紀の日本で直面した文化的な葛藤を描きながら、単なる歴史小説の枠を超え、私たちに普遍的な問いを... -
お店と日々
日常の中の非日常――カフェが生み出す「特別な一瞬」と芥川龍之介「ひょっとこ」
ひょっとこの面をかぶった男の最期 芥川龍之介の初期作品「ひょっとこ」は、大正時代の浅草を舞台にした短編である。春の花見シーズン、隅田川にかかる吾妻橋の上には、花見船を見物しようと大勢の人々が集まっている。川を下る船の上では、酔った客が踊っ...