2026年– date –
-
本の考察(読書録)
回り続ける日常の中で ―芥川龍之介『一夕話』再読と、ささやかな自己認識―
大正11年(1922年)に発表された芥川龍之介の短編小説『一夕話(いっせきわ)』は、劇的な事件や超常的な要素を持たない、一見するととても穏やかで平易な作品だ。『羅生門』に見られる人間のエゴイズムや、『蜘蛛の糸』の教訓、『河童』の鋭い社会風刺と... -
映画・ドラマ・アニメ考察
辞表が刀になった日|映画『サラリーマン忠臣蔵』(1960年)が描いた昭和サラリーマンの『仇討ち』
1. はじめに ─ 「忠臣蔵」を会社に持ち込む発想 日本人が最も愛する歴史劇といえば「忠臣蔵」である。元禄15年(1702年)12月、赤穂浪士47名が主君の仇を討つべく吉良邸に討ち入った事件は、義侠心と滅私奉公の物語として、歌舞伎、講談、映画、テレビドラ... -
本の考察(読書録)
『セロ弾きのゴーシュ』(宮沢賢治)——関係性が人を変える仕事論
宮沢賢治のセロ弾きのゴーシュを読んでいて、どうしても自分のこれまでの仕事の時間が重なって見えてくる。 ゴーシュは楽団のセロ弾きである。しかし、彼はうまく弾けない。指揮者には叱られ、仲間からも遅れている。ひとりで練習しても、なかなか上達しな... -
本の考察(読書録)
よだかの星と、今夜のパスタ
宮沢賢治の童話に、『よだかの星』という作品がある。 容姿の醜さゆえに仲間外れにされ、鷹から改名まで強要されたよだかという鳥が、ある夜ふと気がつくのだ。自分が生きるために、夜ごと無数の虫を口に飲み込んでいることに。 「ああ、かぶとむしや、た... -
本の考察(読書録)
太宰治『嘘』を解釈する男の限界。この考察すら「男の錯覚」かもしれない
太宰治が昭和21年(1946年)に発表した短編小説『嘘』。戦後の津軽を舞台にした本作は、一見すると「女の嘘の底知れぬ恐ろしさ」を男性目線から語ったホラーめいたエピソードに思えるかもしれない。 しかし、最後まで読み通すと、その印象はガラリと変わる... -
エッセイ
店を閉めたあとの時間に
店を閉めたあとの時間、店の中で本を読んだり、文章を書いたりしていると、だいたいクラシックが流れている。 たぶん、一番無難で、邪魔にならない音だからだと思う。その音に混じって、台下冷蔵庫の低い駆動音が、同じ調子でずっと続いている。 照明を少... -
お店のこと
無理をしないために、営業時間を戻してサイトも1つに。
春から営業時間を少し変えて、11時から23時まででやってみていました。 前にも書いたんですが、もともとの前提は「無理をしないこと」でした。年齢のこともあるし、店を続けていくなら、とにかく気合いで押し切るんじゃなくて、自分に合う形を探していかな... -
映画・ドラマ・アニメ考察
WOWOW『闇の伴走者』第1シーズン徹底解説|漫画の画稿に隠された35年前の連続失踪事件の真実
漫画の画稿に隠された暗号、35年前の連続失踪事件、そして現代の拉致犯罪が交差する。WOWOWの「連続ドラマW」枠で2015年に放送された『闇の伴走者』は、漫画編集者という異色の探偵役を据えた本格ミステリーである。全5話構成で、回を追うごとに深まる伏線... -
映画・ドラマ・アニメ考察
距離が育てた愛、霧が隠していた地獄——映画『深い谷の間に』ネタバレレビュー
ロマンス、SFホラー、アクション、政治スリラー——これだけのジャンルを一本に押し込んだら、たいていは収拾のつかない散漫な作品になる。ところが『深い谷の間に』は、そのすべてが「谷」という一点に収束していく構造になっており、観客は気づけばジャン... -
映画・ドラマ・アニメ考察
橋本環奈より佐藤二朗を見ていた──『トクメイ!警視庁特別会計係』全話考察
「捜査に金は必要だ」と叫ぶ刑事たちと、「それでも一円たりとも無駄にはできない」と立ちはだかる会計係の女性警官。一見コメディタッチに見えるこのドラマが、終盤にかけて警察組織の腐敗と、一人の父親の絶望的な復讐劇へと変貌していく──それが2023年...