ワールドカップ2026は、メキシコ対南アフリカの開幕戦から始まった。
2010年大会と同じカードで幕を開け、メキシコが勝ち、南アフリカが苦い再出発を迎えた。大会の最初の試合らしい華やかさと、少し荒れた空気が残る一戦だった。
そして、同じグループAでもうひとつの試合が行われた。
韓国対チェコである。
この試合は、韓国が2-1で逆転勝利を収めた。チェコが先に点を取ったが、韓国が後半に2点を返した。開幕戦のメキシコに続き、韓国も勝ち点3を手にしたことになる。
グループA順位表
グループAは、いきなりはっきりとした形になった。
メキシコと韓国が勝ち、南アフリカとチェコが追いかける。もちろん、まだ1試合が終わっただけである。それでも、最初の勝ち点3にはやはり重みがある。
特に韓国にとっては、大きな勝利だったと思う。
静かな前半と、動き出した後半
試合の前半は、派手な展開ではなかった。
韓国はボールを動かしながら、チャンスを探していた。チェコは体の強さと高さを生かし、簡単には崩れない。お互いに持ち味は見えるが、決定的な場面まではなかなか届かない。
ワールドカップの初戦には、こういう時間がある。
負けたくない。先に失点したくない。大会の入り方を間違えたくない。そういう慎重さが、試合全体を少し重くする。選手たちは走っているのに、試合の空気だけがどこか硬い。
出典:FIFA公式
韓国にはソン・フンミンがいる。イ・ガンインもいる。技術のある選手がいて、攻撃の形も作れる。
それでも、ワールドカップでは名前だけで点は入らない。
チェコは簡単にはスペースを与えず、球際では強く、前線へ送るボールにも迫力があった。韓国が細かく動かそうとしても、チェコは高さと強さで試合を自分たちの側へ引き寄せようとしていた。
前半は0-0。
この時点では、どちらに転んでもおかしくない試合だった。
チェコの先制、高さが出た瞬間
後半に入って、試合が動いた。
先に点を取ったのはチェコだった。
後半59分、ラディスラフ・クレイチーが頭で決める。ロングスローからの流れで、チェコの高さと強さが出た場面だった。
出典:FIFA公式
チェコという国のサッカーには、どこか堅実な印象がある。派手な南米のようなリズムではない。だが、体の強さがあり、空中戦があり、相手にとって嫌なところを突いてくる。
韓国にとっては、非常に嫌な失点だった。
ワールドカップ初戦で、後半に先制される。しかも、相手の得意な形でやられる。ここで崩れてしまえば、そのまま試合を持っていかれてもおかしくなかった。
しかし、韓国は崩れなかった。
ここが、この試合の大事なところだったと思う。
ファン・インボムが変えた流れ
韓国は、失点からそれほど時間を置かずに追いついた。
後半67分、ファン・インボムが決める。
イ・ガンインのパスから生まれたチャンスだった。ファン・インボムはうまく前を向き、相手を外して、低いシュートを流し込んだ。力任せではなく、落ち着きのあるゴールだった。
出典:biz.chosun.com
この1点は大きかった。
先制されたまま時間が過ぎると、試合はどんどん難しくなる。焦りが出る。無理な攻撃が増える。相手は守りやすくなる。
だが、韓国は早い時間に追いついた。
しかも、偶然のこぼれ球ではなく、自分たちの技術と判断で取った点だった。これによって、試合の空気が一気に変わった。
ファン・インボムは、この試合の中心だった。
同点ゴールを決めただけではない。後半80分には、右サイドから低いボールを送り、オ・ヒョンギュの決勝点を助けた。1ゴール1アシスト。数字としてもはっきり残る活躍である。
ただ、それ以上に印象的だったのは、先制されたあとに韓国が慌てすぎなかったことだ。
ソン・フンミンがなかなか決められない日でも、別の選手が試合を動かす。これができるチームは強い。
オ・ヒョンギュの決勝点
決勝点を決めたのは、途中出場のオ・ヒョンギュだった。
出典:www.mk.co.kr
後半80分、ファン・インボムの低いクロスに合わせ、ゴールへ流し込む。シンプルな形だが、あの時間帯にそこへ入っていることが大事である。
ワールドカップでは、途中から出た選手が試合を決めることがある。
スタメンだけで大会は戦えない。長い大会では、交代選手の働きが勝ち点を左右する。特に初戦で途中出場の選手が決勝点を決めると、チーム全体に良い空気が生まれる。
韓国にとって、このゴールは単なる2点目ではない。
先制されても逆転できる。エースが苦しい日でも、別の選手が点を取れる。そういう手応えを得たゴールだった。
韓国は昔から、粘る国である。
走り、食らいつき、最後まであきらめない。そこに近年は技術のある選手が加わってきた。ソン・フンミン、イ・ガンイン、ファン・インボム。名前を挙げれば、以前とは違う韓国代表の姿が見える。
この試合は、その両方が出た。
技術だけではなく、粘りだけでもない。先制されてから、自分たちの形で押し返した。
チェコにも残った悔しさ
一方のチェコにとっては、かなり悔しい試合だったはずである。
先制点は理想的だった。自分たちの強みである高さとパワーを生かし、後半の良い時間に点を取った。あのまま守り切る、あるいはもう1点を狙う展開にできれば、初戦の勝ち点3が見えていた。
しかし、そこから韓国に2点を許した。
チェコは終盤に同点の可能性もあった。トマーシュ・ソウチェクがネットを揺らす場面もあったが、オフサイドで取り消された。あの場面が認められていれば、試合の記憶はまったく違ったものになっていたかもしれない。
ワールドカップでは、こういう紙一重が残る。
勝った側には「よく耐えた」と言える場面があり、負けた側には「あれが決まっていれば」と思う場面がある。その小さな差が、勝ち点3と0を分ける。
チェコは20年ぶりにワールドカップへ戻ってきた国である。
その初戦で先制しながら逆転された。悔しさは大きいだろう。ただ、内容を見れば、何もできずに敗れたわけではない。高さ、強さ、セットプレーの迫力は十分に見せた。
次の南アフリカ戦は、チェコにとって非常に大事な試合になる。
グループAが動き出した
これでグループAは、メキシコと韓国が勝ち点3で並んだ。
メキシコは南アフリカに勝ち、韓国はチェコに勝った。次に韓国はメキシコと対戦する。開幕から勝った国同士の試合である。
これは面白い。
メキシコは開催国として、スタジアムの熱を背負っている。韓国は逆転勝利で勢いを得た。どちらも勝ち点3を持っているからこそ、次の試合の意味が大きくなる。
引き分けでも悪くないと考えるのか。勝って一気に突破へ近づこうとするのか。試合の入り方にも、それぞれの考えが出るだろう。
一方で、南アフリカとチェコは次戦でぶつかる。
初戦を落とした国同士の試合である。ここで負ければ、グループ突破はかなり苦しくなる。だからこそ、そちらも重い試合になる。
ワールドカップのグループリーグは、1試合が終わるだけで景色が変わる。
昨日までただの組み合わせだったものが、勝ち点と得失点差を持った現実の表になる。国の名前が並んでいただけのグループが、物語を持ち始める。
グループAも、そうなった。
韓国の勝利に残ったもの
韓国の勝利は、派手な圧勝ではなかった。
むしろ、苦しい時間があった。先制された。ソン・フンミンが決めきれない場面もあった。チェコの高さにも苦しんだ。
それでも、勝った。
ワールドカップでは、これが何より大きい。
初戦の勝利は、チームを落ち着かせる。次の試合へ向かう表情を変える。負けて修正するのと、勝って修正するのでは、まったく違う。
韓国は、悪い時間を経験しながら勝った。これは大会を戦ううえで、良い材料になる。
一方で、チェコはこの敗戦を引きずりすぎてはいけない。先制できたこと、高さで相手を苦しめたこと、終盤に同点へ迫ったこと。そこには次につながるものがある。
勝った国にも課題があり、負けた国にも希望がある。
そういう試合だった。
店で試合を見ていると、ワールドカップの面白さは、強い国が順当に勝つことだけではないと感じる。
先に点を取った国が勝つとは限らない。エースが決めるとも限らない。途中から入った選手が試合を変えることもある。オフサイドの旗ひとつで、歓声がため息に変わることもある。
韓国対チェコは、まさにそういう試合だった。
韓国が逆転で白星発進した。チェコは悔しい敗戦を抱えた。
グループAは、早くも次の一戦が楽しみになってきた。





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