ワールドカップ2026が始まった。
開幕戦は、メキシコ対南アフリカである。
このカードを見て、すぐに2010年を思い出す人も多かったのではないか。南アフリカ大会の開幕戦も、同じメキシコ対南アフリカだった。あのときは南アフリカのチャバララが鮮やかな先制ゴールを決め、メキシコのラファエル・マルケスが追いつき、1-1で終わった。
あれから16年が経った。
今度は舞台がメキシコになった。メキシコシティの大きなスタジアムで、開催国のひとつであるメキシコが、再び南アフリカと開幕戦を戦う。こういう偶然というか、巡り合わせのようなものが、ワールドカップにはある。
試合は、メキシコが2-0で勝った。
開始早々の9分、フリアン・キニョネスが先制する。開幕戦の最初のゴールというものは、ただの1点ではない。その大会の空気を最初に動かす音のようなものだ。メキシコの観客にとっては、これ以上ない始まりだっただろう。
出典:Yahoo!ニュース – Yahoo! JAPAN
南アフリカにとっては苦しい入り方になった。16年ぶりにワールドカップへ戻ってきたチームが、開催国の大声援の中で早い時間に失点する。これは簡単な状況ではない。
それでも、南アフリカは一方的に壊れたわけではなかった。ゴールキーパーのローベン・ウィリアムズが何度も止め、試合を何とかつなぎとめていた。0-1の時間が続いている間は、まだ何かが起こる可能性が残っていた。
しかし後半に入ると、試合はだんだん荒れていく。
南アフリカに退場者が出る。さらにもうひとり退場者が出る。人数が減れば、サッカーは一気に別の競技のようになる。耐えるだけで精一杯になり、反撃の形を作ることが難しくなる。
出典:THE ANSWER
そして67分、ラウール・ヒメネスがヘディングで追加点を決める。
この2点目で、開幕戦の流れはほぼ決まった。メキシコは開催国として、まずは勝った。しかも、無失点で勝った。ワールドカップの開幕戦としては、十分すぎる結果である。
出典:東京新聞
ただ、試合としては少し後味の複雑さも残った。
3枚のレッドカードが出た。ワールドカップの最初の試合としては、かなり激しい幕開けである。開会式の華やかさ、スタジアムの熱気、メキシコの勝利。その一方で、南アフリカの苦しさと、試合の荒れ方も印象に残った。
出典:スポニチ Sponichi Annex
ワールドカップは、いつも祝祭として始まる。
けれど、ピッチの上では祝祭だけでは済まない。勝ち点がかかり、国の期待がかかり、選手たちの人生がかかる。華やかな開幕の日であっても、試合が始まれば、そこには焦りも、ミスも、怒りも、悔しさも出てくる。
それがワールドカップなのだと思う。
メキシコにとって、この勝利は大きい。
開催国としての初戦は、勝って当然のように見られる。しかし、実際に勝つのは簡単ではない。開幕戦には特別な緊張がある。スタジアム全体が味方である一方で、その声援は重圧にもなる。
その中で、メキシコは早い時間に先制し、後半に追加点を取り、最後まで試合をものにした。細かい内容よりも、まず勝ったことが大きい。大会は長いが、最初の一歩を踏み外さなかった意味は大きい。
出典:FOOTBALL ZONE
一方の南アフリカは、厳しい再出発になった。
2010年、自国開催で世界を迎えた国が、今度はメキシコの地で開幕戦を戦った。その物語だけでも十分に大きかったが、結果は0-2。しかも退場者を出し、次戦以降にも影響を残すかもしれない。
それでも、ワールドカップは一試合で終わらない。
南アフリカには、まだグループリーグの試合が残っている。開幕戦で傷を負ったチームが、次にどう立ち上がるか。そこにも大会の物語がある。
そして、見ているこちらも、ようやくワールドカップが始まったのだと感じる。
国旗が揺れ、スタジアムが歌い、ひとつのゴールで何万人もの声が跳ね上がる。遠い国の試合であっても、その熱気は画面越しに届いてくる。
店をしていると、スポーツの大会は少し不思議なものに見える。
普段はそれぞれ別の場所にいる人たちが、同じ画面を見る。同じ場面で声を上げる。よく知らない国の選手の名前を、気づけば覚えている。勝った国だけでなく、負けた国の表情も残る。
メキシコ対南アフリカの開幕戦は、華やかで、少し荒れていて、そしてワールドカップらしい試合だった。
2010年に始まった記憶が、2026年にもう一度重なった。
大会はまだ始まったばかりである。これからいくつもの国が登場し、いくつもの勝利と敗北が積み重なっていく。その最初の一枚として、メキシコの2-0という結果と、南アフリカの苦い再出発は、きっとこの大会の記憶に残る。
ワールドカップが、また始まった。
そう思わせる開幕戦だった。






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