『最も危険な遊戯』ハードボイルドな殺し屋の、だらしない締めくくり

『最も危険な遊戯』で一番よかったのは、銃撃戦ではなかった。最後に鳴海が、女の乗った車を追いかけて走る場面だ。

あれを切ない恋の結末として見る気にはなれない。振られた男が愚痴をこぼしながら走っている。そう見えたから、笑ってしまった。

話の筋はこうだ。財界人の誘拐事件をきっかけに、殺し屋の鳴海昌平が、二つの企業の争いと警察の陰謀に巻き込まれていく。誰とも組まず、鳴海は一人でその中に踏み込んでいく。

以下、結末に触れる。

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杏子との関係は、暴力から始まっている

鳴海が杏子の前に現れるのは、誘拐グループを率いる居郷の居場所を聞き出すためだ。押し入り、脅し、性的な暴力も含めて、彼女から情報を引き出す。

そこに好意はない。杏子は目的のための道具として扱われている。

そのあと、傷を負った鳴海を杏子が手当てするようになり、二人の距離は近づいていく。ただ、なぜ彼女がこの男に近づいていくのか、映画はほとんど説明しない。後半で鳴海が彼女を助けるからといって、最初の暴力が消えるわけではない。

だから私は、この二人の話を純愛として受け取らなかった。そう受け取らなかったことが、ラストの見え方を変えた。


二度の追走は、まるで違って見える

鳴海は、映画の中で二度、車を追って走る。

一度目は中盤、桂木警部たちが杏子を連れ去る場面だ。車を人間の脚で追うという無茶なアクションで、鍛えた身体がそのまま殺し屋の力として見える。ここには、目の前で連れ去られた杏子を取り戻そうとする気持ちが、少しは混ざっていたのかもしれない。

二度目は最後。こちらは、ほとんど喜劇だ。


ラストの鳴海は、ただの振られた男だ

その前に鳴海は、ストリッパーを口説いて「私、草刈正雄みたいなのが好きなの!」とあっさり断られている。この時点で、クールな殺し屋の格好よさにはひびが入っている。

明け方、劇場を出た鳴海は、見知らぬ男の車で去っていく杏子らしき女を見つけて走り出す。そこで出る台詞が、「格好つけてないで、杏子とも綾乃ともやっときゃ良かったんだよっ」。

これは後悔でも一途な想いでもない。振られたばかりの男が、その勢いのまま、やり損ねたことを悔やんでいるだけに聞こえる。そもそも車の女が本当に杏子なのかも、はっきりしない。似た誰かを見間違えただけかもしれない。

映画は、この場面に鳴海の深い内面を込めていない。だから可笑しい。


格好よさがあるから、情けなさが効く

この映画の松田優作は、とにかく身体がすごい。トレーニングの場面では、あそこまで鍛えた肉体をさらす俳優はそういないと思った。

ストリップ小屋に『人間の証明』のテーマ曲が流れ、麦わら帽子が出てくるところも忘れがたい。ただ、私にはあれが余韻を盛り上げているというより、映画が自分の格好よさを少し茶化しているように見えた。

鳴海は麻雀で負け、ギャンブルをやめず、女を口説いては断られる。格好よさと情けなさが、最初から同じ画面にある。

だから最後に、二枚目の殺し屋が三枚目の顔に戻って走り去るのが、とてもしっくりきた。非情な男の美しい恋物語で終わらなかったことが、この映画のいいところだと思う。

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