アルゼンチン 2-0 オーストリア|メッシが歴史を越え、王者が静かに先へ進んだ夜

アルゼンチンがオーストリアを2-0で下した。

スコアだけを見れば、王者が順当に勝った試合である。だが、この試合には、単なる勝利以上のものがあった。リオネル・メッシが2得点を挙げ、ワールドカップ通算得点を18に伸ばした。歴代最多得点者となったのである。

数字として書けば、それだけで済む。

しかし、メッシという選手の歩みを思うと、この記録はただの数字ではない。若い頃から世界の期待を背負い、勝てないと言われ、届かないと言われ、それでも最後にはワールドカップを掲げた。その選手が、今度は大会の歴史そのものを塗り替えていく。これは、ひとつの試合結果を超えた出来事だった。

グループ第2戦である。

アルゼンチンは初戦でアルジェリアに3-0と勝っていた。オーストリアもヨルダンに3-1で勝利している。どちらも勝ち点3を持って迎えた一戦だった。勝てば決勝トーナメント進出へ大きく近づく。引き分けでも悪くはない。だが、王者アルゼンチンにとっては、ここで勝ち切ることに大きな意味があった。

試合は簡単ではなかった。

オーストリアはよく戦った。守備は粘り強く、アルゼンチンに自由な時間を長くは与えなかった。前から圧力をかける場面もあり、王者に対してただ引いて待つだけではなかった。初戦で勝ったチームらしい自信も見えた。

アルゼンチンも、思い通りに試合を進められたわけではない。

メッシがPKを外す場面もあった。普段ならほとんど起こらないような場面である。あの瞬間、スタジアムの空気は少し揺れたはずだ。アルゼンチンにとっては先に試合を楽にする機会を逃し、オーストリアにとっては「まだ行ける」と思える時間になった。

それでも、メッシはそこで終わらない。

前半、メッシが左足でゴールを決める。アルゼンチンが先制した。

この一点には、記録以上の静けさがあった。派手な大歓声の中で生まれたゴールでありながら、どこか淡々としている。メッシにとっては、何度も繰り返してきた動きの延長のようにも見える。だが、その一撃がワールドカップの歴史を更新する。そういうところに、この選手の特別さがある。

出典:Olympics.com

オーストリアにとっては、重い失点だった。

前半を耐え、アルゼンチンを苦しめていた。PK失敗もあった。試合の流れを自分たちの方へ少し引き寄せられる時間もあった。だが、メッシの一振りで景色が変わる。世界王者を相手にする難しさは、そこにある。長く耐えても、たった一瞬で試合が動いてしまう。

後半も、オーストリアは簡単には崩れなかった。

アルゼンチンがボールを持つ時間はあっても、追加点はなかなか入らない。1-0のまま時間が進むと、試合は最後まで分からない。オーストリアには高さも、走力も、前へ出る力もある。ひとつのセットプレー、ひとつのこぼれ球で、試合は同点に戻る可能性があった。

アルゼンチンの勝利は、華やかな大量得点ではなかった。

むしろ、守りながら、探りながら、最後まで緊張を残す勝利だった。王者らしい圧倒というより、王者らしい現実感があった。焦らず、崩れず、最後にもう一度決める。そういう試合だった。

後半アディショナルタイム、再びメッシが決める。

2-0。

このゴールで、試合は終わった。オーストリアが最後にかけていた同点への望みを、メッシが閉じた。1点目が歴史を開くゴールだったなら、2点目は勝利を確定させるゴールだった。どちらも重い。どちらも、メッシらしい。

出典:Yahoo!ニュース – Yahoo! JAPAN

アルゼンチンはこれで2連勝となった。

勝ち点6。決勝トーナメント進出。前回王者として、まずはきちんとグループを抜ける。その当たり前のように見える仕事が、ワールドカップでは簡単ではない。どの国も研究し、どの国も挑んでくる。その中で、アルゼンチンは結果を出した。

しかも、2試合でメッシがすべての得点を挙げている。

これは美しい話であると同時に、少し不思議な重さもある。チームとしての強さはある。守備も安定している。中盤も試合を整える。だが、最後に試合を決めているのは、やはりメッシである。年齢を重ねても、彼はまだアルゼンチンの中心にいる。

オーストリアにとっては、悔しい敗戦である。

決して大きく崩れたわけではない。アルゼンチンに対して、よく耐え、よく戦った。だが、勝ち点は得られなかった。初戦で得た勝ち点3があるとはいえ、最終戦へ向けて状況は軽くない。アルジェリア戦が、かなり大きな意味を持つことになる。

それでも、オーストリアにはまだ可能性が残っている。

この試合で見せた粘りは、次につながるはずである。メッシに決められたから敗れた。そう言ってしまえば簡単だが、それだけではない。アルゼンチンを苦しめた時間は確かにあった。その時間を、最終戦でどう生かすかである。

この試合を見終えたあと、残るのはアルゼンチンの強さだけではない。

メッシという選手が、まだ歴史の中を歩いているという感覚である。過去の偉大な選手として語られるのではなく、今この大会で、まだ新しい一行を書き加えている。もう十分に成し遂げたはずなのに、まだ終わらない。

アルゼンチン 2-0 オーストリア。

王者は勝ち点6へ進み、メッシはワールドカップの歴史を越えた。

派手に騒ぎ立てるよりも、少し静かに見届けたくなる夜だった。あの左足は、まだ世界の真ん中で試合を動かしている。

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