ワールドカップ2026出場国紹介の第7回は、カタール代表である。
グループBは、カナダ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、カタール、スイスの4か国で構成されている。
第5回ではカナダ代表を取り上げた。開催国として2026年大会に臨み、まだワールドカップで勝ったことのない国である。
第6回ではボスニア・ヘルツェゴビナ代表を取り上げた。2014年ブラジル大会以来、12年ぶりにワールドカップへ戻ってくる国だった。
そして今回は、カタール代表である。
カタールと聞くと、多くの人が思い出すのは2022年大会だと思う。
2022年のワールドカップは、カタールで行われた。中東で初めてのワールドカップであり、冬に行われた大会でもあった。日本代表がドイツとスペインに勝った大会としても、日本のサッカーファンには強く記憶されている。
出典:ALLSTARS CLUB
その開催国だったカタールが、2026年大会にも出場する。
ただし、今回の意味は少し違う。
2022年は開催国としての出場だった。2026年は、アジア予選を勝ち抜いて出場する大会である。つまり、カタールにとって2026年大会は、「招かれた開催国」ではなく、「自分たちの力で戻ってきた国」として戦うワールドカップになる。
まず、カタール代表の基本情報を整理しておきたい。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 国名 | カタール |
| 愛称 | アル・アンナビ |
| 2026年大会 | アジア予選を突破して出場 |
| グループ | B組 |
| 対戦相手 | カナダ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、スイス |
| 監督 | フレン・ロペテギ |
| W杯出場 | 2022年、2026年 |
| W杯最高成績 | グループステージ |
| 2022年大会 | 開催国として初出場、3戦全敗 |
| 注目選手 | アクラム・アフィフ、アルモエズ・アリ |
| 特徴 | アジア王者としての経験と、2022年大会の悔しさ |
カタール代表をひと言で表すなら、私は「開催国の悔しさを越えて、予選から戻ってくる国」と書きたくなる。
2022年大会のカタールは、とても難しい立場にいた。
開催国である。国中の期待を背負う。世界中から注目される。しかも、カタールにとっては初めてのワールドカップ本大会だった。
普通なら、初出場の国は挑戦者として大会に臨む。失うものは少ない。世界の舞台でどこまでやれるか、という気持ちで戦える。
しかし、2022年のカタールは違った。
初出場でありながら、開催国だった。
これはかなり難しい。経験は少ないのに、期待は大きい。まだ世界の舞台に慣れていないのに、自国開催の重圧だけは一気にかかってくる。普通の初出場国とはまったく違う重さを背負っていた。
結果は3戦全敗だった。
エクアドル、セネガル、オランダと同じ組に入り、勝ち点を取ることはできなかった。開催国としては厳しい結果であり、世界中からも失望を込めて見られた部分があったと思う。
ただ、私はその結果だけでカタール代表を見るのは少しもったいないと思う。
たしかに、2022年大会の結果は厳しかった。開催国としては物足りなかった。だが、その前後のカタール代表には、アジアの中で確かな実績がある。
カタールは2019年のアジアカップで優勝した。
さらに2023年大会でも優勝し、アジア王者としての地位を重ねた。アジアの中では、決して弱い国ではない。むしろ、近年のアジアサッカーにおいては、かなり存在感のある国である。
出典:FIFA公式
だからこそ、2022年大会の失敗は不思議でもある。
アジアでは勝てる。だが、ワールドカップでは勝てない。
この差は大きい。
アジアカップとワールドカップは、同じサッカーでも別の大会である。相手の強度も違う。プレッシャーも違う。世界中の視線も違う。アジアで強い国が、ワールドカップでそのまま勝てるとは限らない。
カタール代表は、その現実を2022年に味わったのだと思う。
しかし、2026年大会では立場が変わる。
カタールは開催国ではない。自国のスタジアムで戦うわけではない。過度な注目を一身に集めるわけでもない。今度は、アジア予選を突破した一つの出場国として、グループBに入る。
これは、カタールにとって少し戦いやすいかもしれない。
もちろん、ワールドカップ本大会が簡単なわけではない。相手はカナダ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、スイスである。どの試合も難しい。だが、2022年のように「開催国なのだから結果を出さなければならない」という重圧とは違う。
今回は、取り返しに行く大会である。
2022年の悔しさを、2026年でどう変えるか。
そこに、カタール代表を見る面白さがある。
カタール代表の中心選手としてまず名前が挙がるのが、アクラム・アフィフである。
出典:ゲキサカ
アフィフは、カタールの攻撃を象徴する選手である。技術があり、得点にも絡める。2023年アジアカップ決勝ではハットトリックを記録し、カタールを優勝へ導いた選手でもある。
サッカーに詳しくない人には、カタールの選手の名前はあまりなじみがないかもしれない。だが、カタール代表を見るなら、まずアフィフを覚えておくと分かりやすい。
彼がボールを持つ。仕掛ける。チャンスを作る。相手の守備を崩す。
カタールがワールドカップで勝ち点を取るためには、アフィフのような選手が違いを作らなければならない。
もう一人、アルモエズ・アリも重要である。
出典:サッカーダイジェストWeb
アリは、カタール代表の前線を支えてきた選手である。2019年アジアカップでは大会得点王になり、カタールの優勝に大きく貢献した。アフィフとアリは、近年のカタール代表を語るうえで欠かせない存在である。
この二人がいるから、カタール代表にはアジア王者としての記憶がある。
ただし、ワールドカップではそれを証明しなければならない。
2026年大会の監督はフレン・ロペテギである。
出典:FIFA公式
スペイン代表やレアル・マドリード、セビージャなどで指揮を執った経験のある監督である。かなり大きなキャリアを持つ指導者が、カタール代表を率いることになる。
これは、カタールが2026年大会を本気で取りに来ているということでもあると思う。
もちろん、優勝を狙うという意味ではない。だが、2022年のように何もできずに終わるわけにはいかない。少なくとも、ワールドカップで勝ち点を取りたい。できれば初勝利を挙げたい。さらに言えば、グループステージ突破を狙いたい。
そのために、経験ある監督を迎えたのだろう。
グループBの中で、カタールはどのような位置にいるのだろうか。
まず、初戦はスイスである。

これはかなり難しい相手である。スイスは派手な国ではないが、欧州の中でも安定感がある。守備が堅く、組織が整っていて、ワールドカップでもしぶとく勝ち点を取る印象がある。カタールにとって、初戦から非常に大きな試練になる。
次にカナダと対戦する。

カナダは開催国のひとつであり、ホームの声援を受ける。カナダにとっても、カタール戦は勝ちたい試合になるはずである。2022年大会でともに苦しんだ国同士でもある。カナダも2022年大会では3戦全敗だった。カタールも3戦全敗だった。
つまり、カナダ対カタールは、「前回大会で勝てなかった国同士」の試合でもある。
これは面白い。
カナダは、開催国として初勝利を目指す。カタールは、前回開催国としての悔しさを越えたい。どちらも、ワールドカップで新しい記憶を作りたい国である。
最後はボスニア・ヘルツェゴビナ戦である。

ボスニア・ヘルツェゴビナは2014年以来の出場で、欧州のしぶとさを持つ国である。ジェコのような象徴的な選手もいる。カタールにとっては、ここも簡単ではない。
グループBは、全体として非常に読みづらい。
スイスが実力的には上に見られるかもしれない。カナダにはホームの力がある。ボスニア・ヘルツェゴビナには欧州の経験とジェコの存在がある。カタールにはアジア王者としての経験と、2022年の悔しさがある。
どの国にも、勝ち上がる理由がある。
カタール代表にとって、2026年大会の目標ははっきりしている。
まず、ワールドカップで勝ち点を取ること。
そして、初勝利を挙げること。
2022年大会では、開催国として勝ち点を取れなかった。だから2026年大会では、まずその記憶を変えたいはずである。勝ち点1でも大きい。勝ち点3なら歴史になる。もしグループステージを突破できれば、カタールサッカーにとって新しい時代の始まりになる。
カタール代表を見るとき、私は少し複雑な気持ちになる。
2022年大会は、カタールという国そのものに多くの議論が集まった大会だった。大会運営、スタジアム建設、労働環境、人権問題。サッカーの外側の問題も含めて、世界中でさまざまな意見があった。
その中で、代表チーム自体は非常に厳しい結果に終わった。
だから、カタール代表というチームだけを純粋に見ることが、少し難しい国でもある。
しかし、2026年大会では、少し違う見方ができるかもしれない。
今回は開催国ではない。巨大な大会を背負う立場ではない。アジア予選を突破して、自分たちの力でワールドカップに出てくる。そこで、サッカーのチームとしてどこまでやれるのかが問われる。
これは、カタール代表にとって大事な大会になる。
2022年のカタールは、開催国としての記憶が強すぎた。
2026年のカタールは、代表チームとしての評価を作り直す大会になるのかもしれない。
アジアでは強い。アジアカップでは勝てる。では、ワールドカップではどうなのか。
その問いに答える大会である。
日本から見ると、カタール代表は近年のアジアサッカーを考えるうえで避けて通れない存在である。
日本代表はアジアの強豪である。韓国、イラン、オーストラリア、サウジアラビアもいる。その中に、カタールがしっかりと入ってきた。2019年、2023年とアジアカップを制したことで、カタールは一時的な勢いではなく、継続した力を持つ国として見られるようになった。
ただ、アジアの強さをワールドカップでどう示すか。
これはカタールだけでなく、アジア全体の課題でもある。
2022年大会では、日本がドイツとスペインに勝ち、韓国も決勝トーナメントに進んだ。サウジアラビアはアルゼンチンに勝った。アジアの国も、ワールドカップで大きな結果を出せる時代になってきた。
その中で、カタールはまだワールドカップで結果を出せていない。
だからこそ、2026年大会は重要である。
アジア王者として、前回開催国として、そして予選から戻ってきた国として、カタールがどんな試合を見せるのか。
派手な優勝候補ではない。
だが、2022年の悔しさを知っている国である。自国開催の重圧に押しつぶされた経験がある国である。そして、その悔しさを抱えたまま、今度は予選を突破して戻ってくる国である。
ワールドカップには、栄光の物語だけではなく、やり直しの物語もある。
カタール代表の2026年は、まさにその「やり直しの物語」になるのだと思う。
開催国の悔しさを越えて、予選から戻ってくる国。
カタール代表が2026年大会で何を取り戻すのか、静かに見ておきたい。






コメント