ワールドカップ2026出場国紹介は、ここからグループBに入る。
グループAでは、メキシコ、南アフリカ、韓国、チェコを見てきた。開催国として大会を迎えるメキシコ。2010年の記憶を背負う南アフリカ。近くて遠いアジアの強豪である韓国。そして20年ぶりに戻ってくるチェコ。
それぞれに物語があった。
そして今回からはグループBである。
グループBの最初に取り上げるのは、カナダ代表である。
2026年大会は、カナダ、メキシコ、アメリカの3か国共催で行われる。カナダにとっては、男子ワールドカップを自国で開催する初めての大会になる。つまり、カナダ代表はただの出場国ではない。迎える側として、世界中の視線を受ける国でもある。
まず、カナダ代表の基本情報を整理しておきたい。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 国名 | カナダ |
| 2026年大会 | 開催国として出場 |
| グループ | B組 |
| 対戦相手 | ボスニア・ヘルツェゴビナ、カタール、スイス |
| 監督 | ジェシー・マーシュ |
| W杯出場 | 1986年、2022年、2026年 |
| W杯最高成績 | グループステージ |
| W杯通算成績 | 6戦全敗 |
| W杯初ゴール | アルフォンソ・デイヴィス |
| 注目選手 | アルフォンソ・デイヴィス、ジョナサン・デイヴィッド、サイル・ラリン、タジョン・ブキャナンなど |
カナダ代表をひと言で表すなら、私は「勝った記憶を、これから作る国」と書きたくなる。
カナダは大きな国である。
国土は広く、自然も豊かで、冬のスポーツの印象が強い。アイスホッケーの国、というイメージを持っている人も多いと思う。サッカーの国というより、まずホッケーの国として思い浮かべる人のほうが多いかもしれない。
出典:Yahoo!ニュース – Yahoo! JAPAN
しかし、近年のカナダ代表は大きく変わってきた。
1986年メキシコ大会に初めて出場したあと、カナダは長くワールドカップから遠ざかっていた。次に本大会へ戻ってきたのは、2022年カタール大会である。実に36年ぶりの出場だった。
出典:FIFA公式
36年ぶりというのは長い。
一人のサッカーファンが子どもから大人になり、さらに親になっていてもおかしくない時間である。1986年大会を覚えている世代と、2022年大会で初めてカナダ代表をワールドカップで見た世代。その間には、大きな空白がある。
2022年大会のカナダは、結果だけを見れば3戦全敗だった。
ベルギー、クロアチア、モロッコと同じ組に入り、勝ち点を取ることはできなかった。ワールドカップの厳しさを味わった大会だったと言える。
けれど、2022年大会でカナダは大きな一歩を刻んだ。
アルフォンソ・デイヴィスが、カナダ代表としてワールドカップ初ゴールを決めたのである。
出典:FIFA公式
クロアチア戦の開始早々、デイヴィスが頭で決めたゴールは、カナダサッカーにとって歴史的な瞬間だった。試合には敗れた。しかし、カナダがワールドカップで初めて得点したという事実は消えない。
勝てなかった大会だった。
それでも、初めてのゴールは生まれた。
この「結果は届かなかったが、記憶は残った」という感じは、ワールドカップらしい。すべての国が優勝を狙えるわけではない。すべての国が決勝トーナメントへ進めるわけでもない。けれど、一つのゴール、一つのプレー、一つの瞬間が、その国のサッカー史に残ることがある。
カナダにとって、2022年のデイヴィスのゴールはそういうものだったと思う。
そして2026年、カナダは開催国としてワールドカップに臨む。
ここが大きい。
2022年は、久しぶりに戻ってきた大会だった。2026年は、自分たちの国で迎える大会である。カナダのサポーターは、自国のスタジアムで代表を応援できる。選手たちは、遠く離れた土地ではなく、自分たちのホームでワールドカップを戦うことになる。
これは大きな力になる。
同時に、大きな重圧にもなる。
開催国というのは、ただ有利なだけではない。応援があるぶん、期待も大きい。負けたときの落胆も大きい。国中が見ているという感覚は、選手にとって力にもなれば、重さにもなる。
カナダ代表は、まだワールドカップで勝ったことがない。
1986年大会も、2022年大会も、勝利はなかった。引き分けもない。つまり、カナダにとって2026年大会は、初勝利を目指す大会でもある。
開催国として、初めての勝利をつかむ。
この目標は、とても分かりやすい。
優勝を狙うという話ではない。もちろん、スポーツだから可能性はゼロではないが、現実的に見れば、まずはグループステージを突破すること、そしてその前にワールドカップ初勝利を挙げることが大きな目標になるはずである。
カナダ代表の中心にいるのは、アルフォンソ・デイヴィスである。
デイヴィスは、カナダサッカーを象徴する存在になった。スピードがあり、左サイドを一気に駆け上がる力がある。バイエルン・ミュンヘンでプレーし、世界のトップレベルを知っている選手である。カナダ代表にとって、彼の存在は非常に大きい。
ただ、デイヴィスは単なるスター選手ではない。
彼は、カナダのワールドカップ初ゴールを決めた選手でもある。つまり、カナダ代表の過去と未来をつなぐような存在である。2022年に初ゴールを決め、2026年には自国開催の大会でチームを引っ張る立場になる。
出典:FIFA公式
こういう選手がいる国は、見ていて分かりやすい。
サッカーに詳しくなくても、「この選手が中心なのだな」と分かる。デイヴィスが走る。デイヴィスが仕掛ける。デイヴィスがチームに勢いを与える。カナダを見るとき、まず彼の動きを追うだけでも十分に楽しめると思う。
もう一人、重要なのがジョナサン・デイヴィッドである。
出典:ゲキサカ
デイヴィッドは、前線で得点を期待される選手である。クラブでも結果を残してきたストライカーで、カナダ代表にとってゴールを取る役割を担う。ワールドカップで勝つためには、良い守備だけでは足りない。最後にゴールを決める選手が必要である。
カナダには、デイヴィスとデイヴィッドがいる。
この二人がいることで、カナダ代表はただ守って耐えるだけのチームではなくなる。スピードがあり、前に出る力があり、相手の背後を突く怖さがある。
監督はジェシー・マーシュである。
マーシュはアメリカ出身の指導者で、レッドブル系のクラブでも指揮を執ってきた。前から強く奪いに行く、激しく走る、相手に圧力をかける。そういうスタイルのイメージがある監督である。
出典:Reddit
カナダ代表にとって、この積極性は合っているのかもしれない。
開催国として受け身になるのではなく、自分たちから走り、自分たちから仕掛ける。ワールドカップで初勝利を狙うチームにとって、怖がって後ろに下がるだけでは難しい。もちろん無謀に攻めるわけにはいかないが、前へ出る勇気は必要である。
グループBの対戦相手を見てみる。
カナダは、ボスニア・ヘルツェゴビナ、カタール、スイスと同じ組に入った。

初戦はボスニア・ヘルツェゴビナである。ボスニアにはエディン・ジェコのような経験豊かな選手の印象がある。ワールドカップ経験のある国であり、簡単な相手ではない。カナダにとっては、ここで勝ち点を取れるかどうかが大会全体を左右する。
次にカタールと対戦する。

カタールは2022年大会の開催国だった。あの大会では厳しい結果に終わったが、アジアの国として経験を積んでいる。カナダにとっては、勝ちを狙いたい相手になるだろう。ただし、そういう試合ほど難しい。勝たなければいけないと思う試合には、独特の重さがある。
そして最後にスイスと戦う。

スイスは欧州の実力国である。派手さはそれほどないかもしれないが、規律があり、簡単に崩れない。グループリーグでこういうチームと最後に当たるのは、かなり難しい。カナダがスイス戦の前にどれだけ勝ち点を積み上げているかが重要になる。
カナダ代表にとって、グループBは決して楽な組ではない。
しかし、まったく手が届かない組でもない。
ここが面白い。
開催国として、観客の後押しを受ける。デイヴィスやデイヴィッドといった世界で戦う選手がいる。監督は前向きなスタイルを持っている。そして相手は、強いが絶対に勝てないというほどではない。
だからこそ、期待が膨らむ。
カナダがワールドカップ初勝利を挙げるなら、この大会なのではないか。初めて決勝トーナメントに進むなら、この自国開催の大会なのではないか。そう思わせる条件がそろっている。
もちろん、サッカーはそんなに簡単ではない。
期待される大会で、期待通りに勝つのは難しい。2022年のカナダも、内容では良い時間帯があった。ベルギー戦では勢いもあった。それでも勝てなかった。ワールドカップでは、一つのミス、一つの決定力の差、一つの経験の差が結果に出る。
カナダは、それをすでに経験している。
だから2026年大会では、ただ勢いだけでなく、勝ち切る力が問われる。
良い試合だった、だけでは足りない。
惜しかった、だけでも足りない。
2022年のカナダは、世界に「カナダにも面白い選手がいる」と示した。2026年のカナダは、そこから一歩進んで、「カナダはワールドカップで勝てる国になった」と示さなければならない。
これは、かなり大きな挑戦である。
でも、だからこそ面白い。
カナダ代表には、まだワールドカップで勝った記憶がない。だから、2026年大会で初勝利を挙げれば、それはそのまま歴史になる。初めての勝ち点。初めての勝利。初めての決勝トーナメント進出。どれも、カナダサッカーにとって大きな出来事になる。
ワールドカップには、過去の栄光を取り戻そうとする国がある。
ブラジルやドイツのように、優勝を義務のように背負う国もある。アルゼンチンのように、スターと歴史を重ねる国もある。メキシコのように、いつも強いのにあと一歩届かない国もある。
カナダは、そのどれとも少し違う。
カナダは、これから記憶を作る国である。
過去のワールドカップで勝利の記憶がないからこそ、2026年の一勝が特別になる。世界中の強豪国にとっての一勝と、カナダにとっての一勝は、意味が違う。勝ち慣れている国の一勝は次への通過点かもしれない。しかし、カナダにとっての一勝は、国のサッカー史に残る出来事になる。
そう考えると、カナダ代表の試合はとても見たくなる。
デイヴィスが走る。デイヴィッドがゴールを狙う。スタジアムにはカナダのサポーターが集まり、赤と白の旗が揺れる。ホッケーの国という印象が強かったカナダで、サッカーがどこまで熱を帯びるのか。
2026年大会は、カナダにとって試される大会である。
開催国として世界を迎えるだけではない。自分たちの代表が、世界の舞台で勝てるのかを見せる大会でもある。
勝った記憶を、これから作る国。
カナダ代表の2026年は、その最初のページになるのかもしれない。







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