20年ぶりに戻ってくる、静かな欧州の古豪――チェコ代表 ワールドカップ2026出場国紹介・第4回 

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ワールドカップ2026出場国紹介・第4回

ワールドカップ2026出場国紹介の第4回は、チェコ代表である。

ここまで、グループAの国を順番に見てきた。

第1回はメキシコ代表。開催国のひとつであり、「強いのに、あと一歩届かない国」として紹介した。

第2回は南アフリカ代表。2010年大会の記憶を背負って、メキシコとの開幕戦に戻ってくる国だった。

第3回は韓国代表。日本から見ると「近くて遠い、アジアの強豪」であり、2002年日韓大会のベスト4という大きな記憶を持つ国だった。

そして第4回が、チェコ代表である。

グループAは、メキシコ、南アフリカ、韓国、チェコの4か国で構成されている。並べてみると、どの国にも分かりやすい物語がある。開催国メキシコ、2010年の南アフリカ、アジアの強豪韓国。そしてチェコは、20年ぶりにワールドカップへ戻ってくる欧州の古豪である。

まず、チェコ代表の基本情報を整理しておきたい。

項目内容
国名チェコ
2026年大会欧州予選プレーオフを突破して出場
グループA組
対戦相手メキシコ、南アフリカ、韓国
監督ミロスラフ・コウベク
キャプテンラディスラフ・クレイチー
独立国家としての前回W杯出場2006年ドイツ大会
W杯最高成績準優勝
最高成績の大会1934年、1962年(チェコスロバキア時代)
注目選手パトリック・シック、トマーシュ・ソウチェク、ラディスラフ・クレイチー

チェコ代表をひと言で表すなら、私は「静かに戻ってきた欧州の古豪」と書きたくなる。

チェコは、サッカーをあまり詳しく知らない人にとっては、ブラジルやアルゼンチン、フランス、ドイツほど分かりやすい名前ではないかもしれない。ワールドカップの優勝候補として、大きく騒がれる国でもない。

しかし、サッカーの歴史を振り返ると、チェコには確かな重みがある。

チェコスロバキア時代には、1934年と1962年にワールドカップで準優勝している。つまり、かつては世界の頂点にかなり近い場所まで行った国である。今のチェコ代表を語るとき、その歴史をどこまで現在のチームに重ねてよいかは難しい。それでも、この国のサッカーが長い歴史を持っていることは間違いない。

1934年イタリア大会
出典:FIFA公式

ただ、独立したチェコ代表として見ると、ワールドカップでの存在感はそれほど大きくない。

2006年ドイツ大会に出場したあと、チェコは長く本大会から遠ざかっていた。2010年、2014年、2018年、2022年と、ワールドカップの舞台に姿はなかった。

そして2026年、20年ぶりに戻ってくる。

20年という時間は長い。

2006年大会を見ていた人も、もうかなり年を重ねている。若いサッカーファンにとっては、チェコがワールドカップに出ていた記憶そのものが薄いかもしれない。かつてのチェコ代表には、パベル・ネドベド、トマーシュ・ロシツキー、ペトル・チェフ、ヤン・コレルといった印象的な選手がいた。けれど、彼らの時代を知らない人にとって、チェコ代表は「久しぶりに聞く名前」に近いのかもしれない。

だからこそ、2026年大会のチェコ代表には静かな面白さがある。

派手な主役ではない。だが、歴史を持っている。長く姿を消していたが、完全に消えていたわけではない。欧州の中で戦い続け、ようやくワールドカップの舞台に戻ってきた。

チェコ代表は、欧州予選で苦しみながらもプレーオフを勝ち抜いた。

しかも、プレーオフではアイルランド、デンマークを相手に、いずれもPK戦で勝ち上がった。これは簡単な道のりではない。すっきりと大勝して本大会を決めたわけではない。最後の最後まで粘り、PK戦という緊張感の中で生き残った。

出典:FIFA公式

こういう勝ち上がり方をしたチームには、独特のしぶとさがある。

強豪国のように余裕を持って勝ち上がるのではなく、苦しみながら、耐えながら、最後に残る。派手ではないが、簡単には折れない。チェコ代表には、そういう雰囲気がある。

監督はミロスラフ・コウベクである。

かなり経験豊かな監督で、年齢も高い。若くて新しい戦術家というより、長くサッカーの現場を見てきた指導者という印象がある。ワールドカップでは、勢いのある若い監督だけが成功するわけではない。大会の緊張感、短期決戦の難しさ、選手の気持ちの整え方を知っている監督の存在は大きい。

出典:FIFA公式

チェコ代表は、パトリック・シック、トマーシュ・ソウチェク、ラディスラフ・クレイチーといった選手を中心に戦うことになる。

パトリック・シックは、得点を期待されるストライカーである。大柄で、左足のシュートがあり、前線で存在感を出せる選手だ。欧州選手権でも印象的なゴールを決めており、チェコ代表の攻撃を語るうえで欠かせない。

パトリック・シック
出典:ゲキサカ

トマーシュ・ソウチェクは、中盤の柱である。イングランドのプレミアリーグでも長くプレーし、空中戦や運動量、ゴール前への飛び込みに強さがある。派手なドリブラーではないが、チームに安定感を与える選手である。

トマーシュ・ソウチェク
出典:footballista

ラディスラフ・クレイチーは、守備の中心であり、キャプテンでもある。後ろからチームを支え、相手の攻撃を受け止める役割を担う。チェコ代表は、こうした身体の強さと規律のある選手たちで成り立っている。

ラディスラフ・クレイチー
出典:Reddit

チェコ代表を見るとき、私は「静かな強さ」という言葉を思い浮かべる。

スピードや華やかさで一気に相手を圧倒するというより、体を張り、セットプレーを生かし、守備を固め、少ないチャンスをものにする。欧州の中堅国には、こういう怖さがある。名前だけで派手に見えるわけではないが、実際に対戦すると非常にやりにくい。

グループAの中で、チェコはどのような立場になるのだろうか。

メキシコは開催国であり、地元の声援を受ける。南アフリカは2010年大会の記憶を持ち、挑戦者として戻ってくる。韓国はアジアの強豪で、ソン・フンミンという世界的な選手もいる。

その中でチェコは、地味に見えるかもしれない。

しかし、この「地味に見える」というところが、逆に怖い。

ワールドカップでは、前評判が高い国ばかりが勝つわけではない。大会が始まる前にはあまり注目されていなかったチームが、堅い守備と粘り強さで勝ち点を積み上げることがある。特にグループリーグでは、華やかな勝ち方よりも、負けない力がものを言うことがある。

チェコは、まさにそういうチームになり得る。

初戦は韓国戦である。

これは、グループAの行方を考えるうえで非常に大きな試合になる。韓国とチェコは、どちらも決勝トーナメント進出を狙う立場だろう。メキシコが開催国として有利に見られるなら、残りのチームは直接対決で勝ち点を落としたくない。

韓国にとっても、チェコにとっても、初戦は重要である。

韓国はスピードと攻撃の個の力を持っている。チェコは高さと規律、粘り強さを持っている。この対戦は、スタイルの違いが出る試合になりそうだ。

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その次に、チェコは南アフリカと戦う。

南アフリカは勢いのあるチームであり、挑戦者として思い切ってくるはずである。チェコにとっては、ここで勝ち点をしっかり取れるかどうかが重要になる。

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そして最後がメキシコ戦である。

開催国メキシコとの試合は、かなり難しいものになるだろう。スタジアムの雰囲気も、判定の空気も、すべてがメキシコ寄りに感じられるかもしれない。チェコがこの試合を迎える時点で、すでに勝ち点を持っているかどうか。それが大きな意味を持つ。

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チェコ代表には、優勝候補のような派手さはない。

けれど、ワールドカップにはこういう国が必要である。

大会の中には、華やかな主役がいる。一方で、静かに大会を締める国もいる。チェコはその後者かもしれない。相手にとっては嫌なチーム。観客にとっては、見ているうちにじわじわ気になってくるチーム。

サッカーには、そういう魅力もある。

派手なスター選手ばかりを追いかけていると、見落としてしまう国がある。しかし、じっくり見ていると、守備の整え方や、セットプレーの迫力、中盤の競り合いの強さなどに、その国らしさが見えてくる。

チェコ代表は、そういう見方が合うチームだと思う。

20年ぶりに戻ってくるという事実も、やはり大きい。

長くワールドカップから離れていた国が、もう一度本大会に出る。そこには、選手だけでなく、その国のサポーターの時間も流れている。2006年に見ていた人たちは、2026年には違う年齢になっている。子どもだった人が大人になり、大人だった人が年を重ねている。

ワールドカップは、4年ごとに行われる大会である。

だからこそ、出られない時間の長さも見えてしまう。4年出られない。8年出られない。12年、16年、20年と遠ざかる。そうなると、ワールドカップはだんだん遠い場所になる。

チェコ代表にとって、2026年はその遠くなった場所へ戻る大会である。

これは、どこか静かな感動がある。

大きな声で「復活」と叫ぶよりも、長い時間をかけて、ようやく扉を開けたような感じである。チェコ代表には、その静けさが似合う。

チェコスロバキア時代の準優勝という歴史は、今のチェコ代表にとって大きな誇りである。

しかし、それは同時に遠い歴史でもある。1934年、1962年という時代の記録を、今の選手たちが直接背負う必要はないのかもしれない。それよりも、今のチェコ代表には、2026年の自分たちの物語を作ることが求められている。

2006年で止まっていたワールドカップの記憶を、2026年に動かすこと。

それが、今回のチェコ代表の役割なのだと思う。

グループAを見渡すと、チェコは一番物語が見えにくい国かもしれない。

メキシコには開催国の物語がある。南アフリカには2010年の物語がある。韓国には2002年の物語がある。どれも分かりやすい。

チェコの物語は、それほど派手ではない。

だが、20年ぶりに戻ってくるという物語は、静かだが深い。長く待っていた国が、もう一度ワールドカップに出る。その事実だけで、十分に見る価値がある。

チェコ代表は、優勝候補ではないかもしれない。

けれど、グループAを簡単には終わらせない国になると思う。

韓国にとっても、南アフリカにとっても、メキシコにとっても、チェコは厄介な相手になるはずである。堅く、強く、粘り強い。そういうチームがいると、グループは面白くなる。

ワールドカップ2026出場国紹介の第4回としてチェコ代表を取り上げてみると、グループAの輪郭が少し見えてきた。

開催国メキシコ。

2010年の記憶を背負う南アフリカ。

近くて遠いアジアの強豪、韓国。

そして、20年ぶりに戻ってくる静かな欧州の古豪、チェコ。

この4か国が同じ組に入っている。

出典:FIFA公式

派手な優勝候補が集まった組ではないかもしれない。けれど、それぞれに歴史があり、悔しさがあり、期待がある。こうして一つずつ見ていくと、グループリーグの試合がただの勝ち点争いではなく、それぞれの国の物語に見えてくる。

チェコ代表は、2026年大会でどこまで進めるのだろうか。

20年ぶりに戻ってきた国が、ただ戻ってきただけで終わるのか。

それとも、静かにグループAを揺らす存在になるのか。

派手ではないからこそ、少し気にして見ておきたい国である。

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