ガーナが、パナマを1-0で下した。
スコアだけを見れば、最少得点差の勝利である。だが、この試合の印象は、単に「ガーナが勝った」という言葉だけでは収まりきらない。長い時間、どちらにも傾ききらない試合だった。ボールが落ち着かず、身体がぶつかり、雨の影響もあってか、試合全体に少し重たい湿り気があった。
立ち上がりはパナマの方が良かった。
パナマは前から勢いを持って入り、セシリオ・ウォーターマンを中心にガーナのゴールへ迫った。ガーナは受けに回る時間があり、序盤から簡単な試合にはならないことが伝わってきた。パナマは、相手がアフリカの強豪であっても怯まない。むしろ、自分たちの初戦を自分たちのものにしようという意思があった。
出典:note
その時間帯にガーナを支えたのが、GKローレンス・アティ=ジギだった。鋭いシュートを止め、危ない場面をしのぐ。試合の流れがパナマに傾きかける中で、ゴール前に踏みとどまった存在は大きかった。
しかし、そのアティ=ジギは前半の接触の影響で、ハーフタイムに交代を余儀なくされる。ガーナにとっては、決して小さくないアクシデントである。ワールドカップ初戦、拮抗した試合、そして守護神の交代。流れだけを見れば、ガーナには不安が増えていくようにも見えた。
それでも、ガーナは崩れなかった。
後半に入っても、試合は簡単には動かない。パナマは粘り強く守り、機を見て前に出る。ガーナも攻めようとするが、最後のところで決め切れない。時間だけが過ぎていく。0-0のまま試合が進むと、見ている側の気持ちも少しずつ変わっていく。どちらかが勝つというより、このまま引き分けで終わるのではないか。そんな空気が、少しずつ濃くなっていた。
ワールドカップの初戦では、勝ち点1も悪くない。特にグループLにはイングランドとクロアチアがいる。ガーナにとっても、パナマにとっても、この試合で負けないことは大きな意味を持つ。だからこそ、終盤の時間帯には、慎重さと欲が同時に見えた。
だが、ガーナは最後に一歩を踏み出した。
後半アディショナルタイム。ブランドン・トーマス=アサンテが速い攻撃で前へ運び、最後はカレブ・イレンチへつなぐ。イレンチはそのチャンスを逃さなかった。
出典:Vietnam.vn
ゴール。1-0。長く閉じていた試合が、最後の最後に開いた。
この得点には、派手さよりも重みがあった。
90分を過ぎたところで、勝ち点1が見えかけていた試合である。そこから勝ち点3へ変える。しかも、苦しい時間をしのぎ、GK交代というアクシデントも乗り越えた後の一撃である。ガーナにとっては、ただの決勝点ではない。グループを戦ううえで、心の支えになるようなゴールだった。
出典:Yahoo!ニュース – Yahoo! JAPAN
パナマにとっては、あまりにも痛い失点である。
序盤の入りは良く、試合の中で十分に勝ち点を持ち帰れるだけの内容はあった。守備も粘り強く、ガーナに簡単なリズムを与えなかった。だからこそ、最後の失点は重い。もう少しで初戦を引き分けで終えられた。そう思える試合ほど、敗戦の余韻は長く残る。
それでも、パナマは完全に崩されたわけではない。ガーナを苦しめた時間は確かにあった。次に残るものもある。ただ、ワールドカップでは、その「あと少し」が大きすぎる。ほんの一瞬、相手に前を向かせたところで、勝ち点が手からこぼれていく。
ガーナは、きれいに勝ったわけではない。
圧倒した試合でもない。序盤は苦しみ、途中でGKを失い、なかなかゴールを奪えなかった。それでも最後に決めた。ワールドカップの初戦では、こういう勝ち方があとから効いてくることがある。内容の良し悪しを越えて、勝ち点3が残る。チームの中に、「最後までやれば何かが起こる」という感覚が残る。

グループLは、簡単ではない。
イングランドがクロアチアを4-2で下したことで、ガーナは次に大きな相手と向き合うことになる。だが、その前にこの1勝があるのは大きい。パナマは苦しい出発になったが、まだ終わったわけではない。クロアチア戦へ向けて、初戦で見せた粘りをどう次につなげるかが問われる。
試合が終わったあと、印象に残ったのは、歓喜の大きさよりも、最後まで消えなかったガーナの辛抱強さだった。
黒い星は、ずっと強く光っていたわけではない。雲の向こうに隠れ、雨に濡れ、時には見えなくなりそうだった。それでも最後の瞬間、ひとつだけ確かに光った。
ガーナ 1-0 パナマ。
その小さな数字の中に、90分以上待ち続けた国の粘りが残っていた。




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