決勝トーナメントには、激闘と呼びたくなる試合がある。
延長に入り、PK戦までもつれ、最後の一蹴で勝者と敗者が分かれる試合である。ドイツ対パラグアイ、オランダ対モロッコのように、120分を越えた先で扉が開く試合もある。
だが、その一方で、強い国が強いまま勝つ試合もある。
フランス対スウェーデンは、後者だった。
結果は、フランス 3-0 スウェーデン。
フランスが危なげなく勝ち抜き、ラウンド16へ進んだ。
スコアだけを見れば、はっきりした勝利である。だが、決勝トーナメントで3-0という結果を残すことは、簡単ではない。相手もここまで勝ち上がってきた国である。スウェーデンはグループFを3位で通過し、日本やオランダと同じ組を戦い抜いた。日本にとっても、決して遠い相手ではなかった。
そのスウェーデンを相手に、フランスは重さを感じさせなかった。
もちろん、試合の入りからすべてが楽だったわけではない。決勝トーナメントの初戦には、どの強豪にも独特の硬さがある。負ければ終わりという条件は、フランスほどの国にも同じようにのしかかる。グループリーグでどれだけ強くても、この一試合で足元をすくわれることはある。
しかし、フランスにはキリアン・エムバペがいた。
出典:ライブドアニュース – livedoor
45分、前半終了間際にエムバペが先制点を決めた。
この時間帯のゴールは大きい。スウェーデンにとっては、前半を0-0で終えられれば、後半にまだ別の展開を描けたはずである。だが、前半の最後にフランスが先に扉を開けた。
1-0で折り返すフランス。
追いかけるスウェーデン。
この時点で、試合の輪郭はかなり変わった。
後半に入ると、フランスはさらに試合を自分たちのものにした。
53分、ブラッドリー・バルコラが追加点を決める。
これで2-0。スウェーデンにとっては、あまりに厳しい2点目だった。1点差なら、まだ耐えながら終盤に勝負をかけることができる。だが、2点差になると、リスクを背負って前に出なければならない。前に出れば、フランスの速さが待っている。
強いチーム相手に、追いかける側が最も苦しくなる展開である。
フランスは、ただ守って逃げ切るのではなく、さらに前へ出た。
そして74分、エムバペがこの日2点目を決める。
3-0。
ここで試合は、ほとんど決まった。
エムバペは、この大会でも得点を積み重ねている。報道では、今大会6得点となり、得点王争いでも存在感を強めているとされている。ワールドカップという舞台で、何度も何度も決定的な仕事をする。その継続性こそが、彼を特別な選手にしているのだと思う。
フランスの怖さは、エムバペだけではない。
バルコラが決め、オリセも攻撃の流れを作る。デンベレもいる。途中から出てくる選手にも力がある。相手がひとりを警戒しても、別のところから崩される。今大会のフランスは、個の名前が並んでいるだけではなく、その名前が実際に試合の中で機能しているように見える。
もちろん、ここで優勝候補だと騒ぐのは簡単である。
だが、決勝トーナメントはまだ始まったばかりである。
それでも、この3-0には強さがあった。
危なげなく勝つことの怖さがあった。
スウェーデンは、ここで大会を去る。
グループFで日本、オランダ、チュニジアと戦い、3位通過で決勝トーナメントに残った。5-1でチュニジアを下した試合もあった。あの攻撃の勢いを思えば、スウェーデンにもまだ先へ進む可能性はあったはずである。
だが、フランスはその可能性を少しずつ消していった。
先制点で前半を閉じ、後半早々に2点目を奪い、さらにエムバペの2点目で試合を終わらせた。スウェーデンにとっては、希望を持つ時間が短くなっていく試合だったのではないか。
それでも、スウェーデンを責める気にはなれない。
決勝トーナメントに出て、フランスと戦う。
それだけで簡単なことではない。相手が強すぎたと言えば、それは言い訳のようにも聞こえるかもしれない。だが実際に、フランスは強かった。スウェーデンの選手たちは、その強さを真正面から受け止めるしかなかった。
サッカーでは、善戦しても敗れることがある。
粘っても、崩されることがある。
そして、ときには相手の質が、こちらの物語を静かに終わらせてしまうことがある。
この試合は、そういう敗退だった。
フランスは次に、パラグアイと対戦する。
パラグアイはドイツをPK戦で下して勝ち上がってきた。120分を耐え、PK戦を制したチームである。フランスが見せた3-0の余裕と、パラグアイが見せた粘り。まったく違う勝ち上がり方をした二つの国が、次のラウンドでぶつかる。
そこにはまた、別の重さがある。
フランスにとって、この勝利は通過点である。
だが、スウェーデンにとっては終点だった。
同じ試合でも、見る国によって意味は違う。
フランスにとっては、次へ向かうための確かな一歩。
スウェーデンにとっては、グループリーグから続いた物語の終わり。
3-0という数字は、淡々としている。
しかし、その裏には、勝者の落ち着きと、敗者の静かな去り際がある。
フランスは強かった。
スウェーデンは、その強さの前で大会を終えた。
そして決勝トーナメントは、また一つ、次の扉を開いた。


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