イングランド 4-2 クロアチア|三度リードを奪った夜、撃ち合いを制したイングランド

イングランドが4-2でクロアチアを下した。

スコアだけを見れば、イングランドの攻撃力が前面に出た快勝のようにも見える。だが、この試合はそれほど単純ではなかった。立ち上がりからクロアチアが高い位置で圧力をかけ、イングランドが落ち着く前に試合の温度を上げてきた。クロアチアらしい入り方だった。相手がどれほど強豪であっても、ただ受け身になるのではなく、自分たちから試合を動かしにいく。

それでも、先にゴールを奪ったのはイングランドだった。

12分、ハリー・ケインが決める。初戦の早い時間帯にエースが点を取る。イングランドにとっては理想的な始まりである。だが、そこで試合が一方的に傾かなかったところに、この一戦の面白さがあった。

クロアチアは押し込まれる時間がありながらも、少ない好機を逃さなかった。36分、マルティン・バトゥリナがペタル・スーチッチとのワンツーから、ペナルティエリア外で右足を振り抜く。ボールは鋭くゴールへ向かった。1-1。クロアチアは、ただ耐えていたのではない。耐えながら、狙っていた。

その6分後、イングランドが再び前に出る。

42分、デクラン・ライスの正確なコーナーキックにケインが頭で合わせ、ファーサイドへ流し込んだ。2-1。ケインらしいゴールだった。大きな舞台で、必要な場所にいて、必要な瞬間に決める。派手に見せるというより、試合の急所を静かに突くような得点である。

出典:FOOTBALL ZONE

ここで前半が終われば、イングランドは良い形で折り返せたはずだった。

しかし、クロアチアはまたしても終わらない。前半終了間際、ペリシッチが落としたボールにペタル・ムサが反応し、ボレーで合わせる。2-2。土壇場で追いついた。

出典:日刊スポーツ

イングランドが二度リードし、クロアチアが二度追いつく。前半だけで、すでに試合はひとつの物語を持っていた。

クロアチアという国は、こういう時間帯に独特の強さを見せる。大きく崩れているようで崩れない。相手の勢いに飲まれたように見えても、どこかで試合に手をかけている。2018年の記憶を知っていると、イングランド側の胸には少し嫌なざわつきもあったのではないかと思う。

後半に入ってすぐ、そのざわつきを振り払ったのがジュード・ベリンガムだった。

エリオット・アンダーソンのパスを受けると、右サイドを鋭く持ち上がり、最後は自ら冷静に仕留めた。3-2。これがこの試合、イングランドにとって三度目のリードである。二度追いつかれたあとに、もう一度前へ出る。その力は大きかった。

ベリンガムのゴールには、勢いだけではない落ち着きがあった。若さで走り抜けるのではなく、試合の重さを背負ったまま決め切る。イングランドの新しい中心が、ただ名前だけでなく、プレーでその存在を示した場面だった。

出典:FIFA公式

それでも、3-2のままではまだ安心できなかった。

クロアチアは、最後まで何かを起こしそうな気配を残すチームである。点差がひとつである限り、試合は終わらない。イングランドがボールを持っていても、どこかにクロアチアの反撃の芽が見える。見ている側にも、まだもう一度追いつくのではないかという感覚が残っていた。

その空気を断ち切ったのが、85分のマーカス・ラッシュフォードである。

4点目。三度目のリードを守るだけではなく、イングランドはようやく試合を決めた。ラッシュフォードのゴールによって、クロアチアの反撃の余地は小さくなった。ようやくスコアが落ち着いた。4-2という数字になって初めて、この試合はイングランドのものになったように見えた。

イングランドは強かった。ケインが2点を取り、ベリンガムが流れを引き戻し、ラッシュフォードが締めた。攻撃陣の名前を並べるだけでも、優勝候補らしい厚みがある。

しかし、同時に危うさもあった。二度リードしながら、二度追いつかれた。クロアチアに試合の温度を戻され、そのたびにもう一度前へ出なければならなかった。完璧な勝利ではない。けれど、完璧でないからこそ、この勝ち点3には実感があった。

クロアチアもまた、敗れたとはいえ簡単に消えるチームではなかった。バトゥリナの一撃、ムサのボレー。限られた機会を仕留める力は、さすがである。試合の入り方も、追いつき方も、クロアチアらしい粘りがあった。4失点という結果の中にも、まだ次につながる火は残っている。

イングランドにとっては、過去の記憶を少しだけ押し返した試合でもあった。

クロアチアに苦しめられた記憶は、まだどこかに残っている。だが、この日は違った。追いつかれても、もう一度前へ出た。さらに追いつかれても、また前へ出た。そして最後に突き放した。

4-2というスコアには、華やかさと不安、勢いと重さが同居していた。

ワールドカップの初戦としては、十分すぎるほど濃い試合である。勝ったイングランドには確かな手応えが残り、敗れたクロアチアにもまだ消えない意地が残った。

大会は始まったばかりである。

イングランドは、きれいに勝ったというより、揺れながらも勝ち切った。その事実が、次の試合へ向かう足取りを少し強くする。クロアチアもまた、このまま終わる国ではない。

アーリントンの夜に残ったのは、勝者の歓声だけではなかった。二度追いついた国の粘りと、三度前へ出た国の力。その両方が、この4-2というスコアの中に残っていた。

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