ベルギーとイランの試合は、0-0で終わった。
スコアだけを見れば、何も起こらなかった試合に見える。だが、この0-0には、かなり重いものが詰まっていた。攻めたベルギー。耐えたイラン。決められなかった赤いユニフォームと、守り抜いた白いユニフォーム。その表情は、同じ勝ち点1でもまったく違っていたはずである。
グループ第2戦である。
ベルギーは初戦でエジプトと1-1。イランもニュージーランドと2-2。どちらも勝ち点1を持って迎えた一戦だった。だから、この試合の勝ち点3には大きな意味があった。勝てば一気に突破へ近づく。引き分けなら、最終戦にすべてを持ち越す。第2戦らしい重さが、試合の最初から漂っていた。
ベルギーは、ボールを持った。
前へ出る時間も長かった。相手陣内で動かし、ゴールへ近づく場面もあった。だが、最後のところで届かない。シュートまでは行く。崩しかける。けれど、ネットは揺れない。こういう試合は、見ている側にもじわじわと重さが伝わってくる。
出典:FIFA公式
イランのゴール前には、アリレザ・ベイランヴァンドがいた。
この日のベイランヴァンドは、ベルギーにとって大きな壁だった。ベルギーが作った好機を、何度も止める。GKが止めるたびに、ベルギーの時間は少しずつ焦りに変わり、イランの守備は少しずつ自信を得ていく。サッカーでは、こういうGKの存在が試合全体の空気を変えてしまうことがある。
出典:Yahoo!ニュース – Yahoo! JAPAN
ベルギーにとっては、もどかしい夜だった。
攻めている。勝ちたい気持ちも見える。だが、ゴールが遠い。黄金世代と呼ばれた時代を通り過ぎ、いまのベルギーには、どこか新しい形を探しているような印象もある。力はある。名前もある。だが、試合を決め切る鋭さが、この夜は最後まで出てこなかった。
一方のイランは、ただ守っていたわけではない。
耐える時間は長かった。だが、カウンターに出る場面もあり、前へ出たときにはきちんと相手に怖さを与えた。メフディ・タレミがネットを揺らした場面もあった。結果的にはVARで取り消されたが、あの場面はベルギーにとってかなり冷やりとする瞬間だったはずである。
0-0の試合にも、流れの震えはある。
得点として記録されないプレーでも、試合の記憶には残る。タレミの幻のゴールは、イランがただ耐えるだけのチームではなかったことを示していた。ベルギーが攻め、イランが守る。そう単純には言い切れない緊張が、この試合にはあった。
後半、ベルギーはさらに難しい状況に置かれる。
出典:Vietnam.vn
ネイサン・ンゴイが退場し、ベルギーは10人になった。勝ち点3が欲しい試合で、人数を失う。これは重い。そこからは、ベルギーが押し切るというよりも、試合そのものを壊さずに終えることも大切になっていった。攻め切れない焦りと、失点してはいけない慎重さ。その間で、ベルギーの時間はさらに複雑になった。
イランにとっては、勝ち点1を持ち帰る価値が大きくなった。
ベルギー相手に無失点。しかも、相手に退場者が出たとはいえ、最後まで試合を崩さなかった。ワールドカップの第2戦で、こういう勝ち点1は効いてくる。勝てなかった悔しさもあるかもしれない。だが、負けなかったことの意味は大きい。
ベルギーにとっては、重い勝ち点1である。
2試合を終えて勝ち点2。敗れてはいない。だが、まだ勝ってもいない。これは簡単な状態ではない。最終戦のニュージーランド戦に、かなりのものを背負って向かわなければならない。強豪として見られる国にとって、勝ち点2で第3戦を迎えることは、想像以上に重い。
イランもまた、最終戦へ向かう。
相手はエジプトである。初戦の2-2、そしてこの0-0。勝ち点は積み上げているが、突破のためにはまだ足りない。けれど、イランには守れるという手応えが残った。ベイランヴァンドの好守、チーム全体の粘り、そして幻に終わったとはいえタレミが見せた鋭さ。最終戦へ持っていけるものは確かにあった。
この試合は、華やかなゴールで語られる一戦ではない。
むしろ、止めた手、届かなかった足、取り消されたゴール、退場の笛。そういう断片が残る試合だった。0-0という数字の中に、両国の焦りと粘りが詰まっていた。
ベルギー 0-0 イラン。
勝ち点3は、どちらの手にも渡らなかった。
だが、イランは守り抜き、ベルギーはこじ開けられなかった。同じ勝ち点1でも、試合後に胸に残る温度は違う。グループGは、まだ答えを出さないまま、最終戦へ向かっていく。




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