アルジェリア代表 / 砂漠の狐と、12年ぶりに戻る緑の誇り ワールドカップ2026出場国紹介・第38回

前回は、グループJの最初としてアルゼンチン代表を取り上げた。2022年カタール大会を制した前回王者であり、メッシの物語が一度完成したあと、なお続いていくチームである。水色と白のユニフォームには、1978年、1986年、2022年の記憶が重なっていた。

そのアルゼンチンと同じグループJに入ったのが、アルジェリア代表である。

アルジェリアは、ワールドカップに戻ってくる国である。前回出場は2014年ブラジル大会。2026年大会は、12年ぶりの本大会復帰となる。

12年という時間は、サッカーにおいて短くない。選手は入れ替わり、監督も変わり、国の期待も形を変える。2014年の記憶を知る選手は少なくなり、その後に代表を応援し始めた若いファンにとっては、アルジェリアがワールドカップで戦う姿は、長く待ち続けた景色でもある。

愛称は「砂漠の狐」。北アフリカの大地、地中海の風、緑と白の旗。そのすべてをまとって、アルジェリアは北米へ向かう。

目次

アルジェリア代表 基本情報

項目内容
国名アルジェリア民主人民共和国
代表チームアルジェリア代表
愛称砂漠の狐
大陸連盟CAF
ワールドカップ出場5回目
ワールドカップ最高成績ベスト16(2014年)
監督ウラジミール・ペトコヴィッチ
注目選手リヤド・マフレズ、モハメド・アミン・アムーラ、イスマエル・ベナセル、ラミ・ベンセバイニ、ライアン・アイト=ヌーリ など
グループJの相手アルゼンチン、オーストリア、ヨルダン

1982年、世界に刻まれた勝利

アルジェリア代表を語るとき、まず思い出されるのは1982年スペイン大会である。

この大会で、アルジェリアは初めてワールドカップに出場した。そして初戦で西ドイツを破った。2-1。ヨーロッパの強豪を相手に、アフリカの初出場国が勝ったのである。

出典:サッカーダイジェストWeb

この勝利は、アルジェリアのサッカー史だけでなく、ワールドカップ史にも残る出来事だった。ラバ・マジェール、ラクダル・ベルミらを擁したチームは、技術と勇気を持って強豪に挑んだ。単に守って耐えたのではない。自分たちのサッカーで、世界を驚かせた。

だが、1982年大会はアルジェリアにとって苦い記憶も残した。

グループ最終戦で、西ドイツとオーストリアが対戦した。結果は西ドイツの1-0勝利。この結果によって、両国がそろって次のラウンドへ進み、アルジェリアは敗退した。後に「ヒホンの恥」として語られる試合である。

出典:Reddit

この出来事は、ワールドカップの制度にも影響を与えた。以後、グループ最終戦は同時刻に行われるようになった。つまり、アルジェリアは勝利だけでなく、ワールドカップの歴史そのものに傷跡と教訓を残した国でもある。

1982年のアルジェリアは、結果としてグループステージを突破できなかった。だが、その存在感は大きかった。アフリカのチームが世界の強豪を倒せることを示し、同時に大会運営のあり方を変えるきっかけにもなった。

2014年、ドイツを追い詰めた夜

アルジェリア代表の近年最大の記憶は、2014年ブラジル大会である。

この大会で、アルジェリアは初めて決勝トーナメントへ進出した。グループステージを突破し、ベスト16でドイツと対戦した。相手はのちに優勝するドイツである。

試合は延長戦までもつれた。

アルジェリアは粘った。走り、守り、カウンターでドイツを脅かした。ゴールキーパーのライス・エンボリは何度も好セーブを見せ、チーム全体が強豪を相手に怯まず戦った。最終的には1-2で敗れたが、世界王者になるチームを延長戦まで追い詰めたその姿は、アルジェリアの誇りとして残っている。

出典:阿佐谷隆輔ブログ – ココログ

あの試合には、負けてもなお記憶に残る強さがあった。

ワールドカップでは、勝者だけが語り継がれるわけではない。敗れた側の戦いぶりが、長く人々の心に残ることもある。2014年のアルジェリアは、まさにそういうチームだった。

1982年に西ドイツを倒し、2014年にドイツを追い詰めた。偶然のようでいて、アルジェリアとドイツの間には、ワールドカップの記憶が何度も交差している。

2026年のアルジェリアにとって、2014年は越えるべき基準でもある。ベスト16へ進んだ過去がある以上、今回も「出場できてよかった」だけでは終われない。もう一度決勝トーナメントへ、そしてその先へ。そうした期待が自然に生まれる。

2019年の栄光と、その後の停滞

アルジェリアは、ワールドカップだけでなくアフリカでも大きな記憶を持つ国である。

2019年、アルジェリアはアフリカネーションズカップを制した。リヤド・マフレズを中心に、ジャメル・ベルマディ監督のもとで結束したチームは、アフリカの頂点に立った。

あの優勝は、アルジェリアにとって特別だった。

マフレズはすでにプレミアリーグで名を上げていた。マンチェスター・シティでも大きな舞台を経験した選手である。その彼が代表の主役として国を導き、アルジェリアは大陸王者になった。

だが、その後は簡単ではなかった。

2022年ワールドカップ予選では、あと一歩のところで本大会出場を逃した。カメルーンとのプレーオフは劇的であり、アルジェリアにとっては忘れがたい痛みになった。スタジアムに残った呆然とした空気、あと数秒で手に入るはずだった切符が消えた感覚。あの敗退は、代表チームに大きな傷を残した。

さらに、アフリカネーションズカップでも期待通りの結果を残せない時期が続いた。2019年の栄光があるだけに、その後の停滞は余計に重く見えた。

代表チームは、強かった記憶を持つほど難しい。過去の栄光が励みになる一方で、比較の対象にもなる。2019年のチームと比べられ、2014年のチームと比べられる。アルジェリアは、その記憶の重さとも戦ってきた。

ペトコヴィッチの再構築

出典:FIFA公式

現在のアルジェリア代表を率いるのは、ウラジミール・ペトコヴィッチである。

スイス代表を率いた経験を持つ監督であり、ヨーロッパの大会でも結果を残してきた人物である。アルジェリアにとって、彼の就任は再構築の意味を持っている。

代表には、まだマフレズがいる。ベンセバイニ、ベナセルのような経験ある選手もいる。一方で、モハメド・アミン・アムーラ、ライアン・アイト=ヌーリ、アニス・ハジ・ムサ、イブラヒム・マザのような新しい世代もいる。つまり、アルジェリアは完全な新チームではない。過去の中心選手を残しながら、次の世代へ橋をかけている段階である。

ペトコヴィッチに求められるのは、そのバランスである。

マフレズの経験と技術を生かしながら、若い選手たちのスピードや勢いも取り込む。守備を整え、試合の中で崩れないチームにする。アフリカ予選では結果を残したが、ワールドカップでは相手の質が一段上がる。アルゼンチン、オーストリア、ヨルダン。それぞれ違う難しさを持つ相手に対して、柔軟に戦う必要がある。

ペトコヴィッチ体制のアルジェリアには、派手さよりも安定感が求められるだろう。

砂漠の狐という愛称にふさわしく、相手の隙を見つけ、素早く仕掛け、必要なところで牙を見せる。力任せではなく、賢く戦うチームでありたい。

マフレズという最後の灯

リヤド・マフレズは、アルジェリア代表にとって特別な存在である。

出典:Goal.com

彼はクラブでも代表でも、多くのものを手にしてきた。レスター・シティの奇跡の優勝、マンチェスター・シティでの成功、そしてアルジェリア代表でのアフリカ制覇。左足のタッチ、細かいフェイント、相手を外す間合い。彼のプレーには、柔らかさと冷静さがある。

2026年大会は、マフレズにとっておそらく特別な意味を持つ。

年齢的に見ても、ワールドカップで中心として臨む最後の機会になるかもしれない。2014年大会を知る選手として、2019年のアフリカ王者として、そして長く代表を引っ張ってきた象徴として、彼が北米のピッチに立つ姿には重みがある。

ただし、今のアルジェリアはマフレズだけのチームではない。

モハメド・アミン・アムーラは、攻撃に勢いを与える選手である。スピードがあり、前線で相手を揺さぶる力がある。ライアン・アイト=ヌーリは、サイドから攻撃を作れる現代的な選手である。ベナセルは中盤でリズムを作り、ベンセバイニは守備に経験をもたらす。

出典:FIFA公式

若い選手たちが、マフレズの背中を見ながら、自分たちの代表を作っていく。アルジェリアの2026年は、そういう大会でもある。

マフレズの最後の灯を、若い世代がどう受け継ぐのか。そこに、このチームの静かな見どころがある。

グループJの現実

アルジェリアが入ったグループJには、アルゼンチン、オーストリア、ヨルダンがいる。

最も大きな相手は、もちろんアルゼンチンである。前回王者であり、メッシを擁する国である。アルジェリアにとって、初戦から非常に大きな試合になる。相手はボールを持ち、試合を支配しようとするだろう。アルジェリアは守備の集中を切らさず、カウンターやセットプレーで少ない機会を生かす必要がある。

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ただし、アルゼンチン戦は怖さだけではない。

前回王者と戦えることは、アルジェリアにとって自分たちの現在地を測る機会でもある。1982年に西ドイツを倒した国であり、2014年にドイツを追い詰めた国である。強豪相手に名前を刻む記憶を、アルジェリアは過去に持っている。

オーストリア戦も重要である。実は1982年大会では、アルジェリアとオーストリアは同じグループにいた。あの時代の記憶を思えば、2026年に再び同じ組に入ることには不思議な巡り合わせがある。

1982年大会
出典:時事通信

現在のオーストリアは、組織的で強度の高い欧州のチームである。アルジェリアにとっては、グループ突破を争う直接の相手になる可能性が高い。

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ヨルダンは、初出場国である。アルジェリアから見れば勝ち点3を狙いたい相手になるだろう。だが、初出場国は簡単ではない。国の熱を背負い、失うものの少なさを力に変えてくる。アルジェリアが上へ行くには、この試合で取りこぼさない冷静さが必要になる。

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グループJでは、アルゼンチンが本命と見られるだろう。残る席を、アルジェリア、オーストリア、ヨルダンが争う構図になるかもしれない。アルジェリアにとっては、初戦で大敗しないこと、ヨルダン戦で確実に勝ち点を取ること、そしてオーストリア戦で勝負することが大切になる。

ディアスポラと代表の結びつき

アルジェリア代表には、国外に暮らす人々の視線も強く注がれている。

フランスをはじめ、ヨーロッパにはアルジェリアにルーツを持つ人々が多い。代表チームは、そうしたディアスポラにとっても大切な存在である。国を離れて暮らしていても、アルジェリア代表の試合が始まると、緑と白の旗のもとに気持ちが集まる。

出典:FIFA公式

この感覚は、アルジェリア代表を特別にしている。

選手の中にも、ヨーロッパで生まれ育った者が多い。フランス、イングランド、イタリア、ドイツなど、さまざまな場所で育った選手たちが、アルジェリア代表のユニフォームを着る。そこには、国籍やルーツ、家族の記憶が重なっている。

アルジェリア代表は、単に国内リーグの選手だけで作られたチームではない。地中海を越えたつながりの中で作られている代表である。

ワールドカップでアルジェリアの試合が行われるとき、スタンドにはきっと緑と白の旗が多く見えるだろう。アルジェリア本国から来た人だけではなく、世界のあちこちで暮らすアルジェリア系の人々が、その旗を掲げるはずである。

砂漠の狐は、もう一度牙を見せるか

アルジェリア代表には、ワールドカップで強豪を驚かせてきた記憶がある。

1982年の西ドイツ戦。2014年のドイツ戦。どちらも、アルジェリアが世界の舞台でただの参加国ではなかったことを示す試合である。

2026年大会で、アルジェリアは12年ぶりに戻ってくる。

マフレズという象徴がいる。アムーラやアイト=ヌーリのような新しい力がいる。ペトコヴィッチ監督のもとで、チームは再び世界大会へ向かう形を整えた。

もちろん、簡単な大会にはならない。初戦は前回王者アルゼンチン。続く相手も、初出場の勢いを持つヨルダン、欧州の組織力を持つオーストリアである。どの試合にも違う難しさがある。

それでも、アルジェリアには期待がある。

2014年にベスト16へ進み、世界王者になるドイツを延長まで苦しめた国である。2019年にアフリカを制した国である。長い停滞を経て戻ってきた砂漠の狐が、北米のピッチでどんな足跡を残すのか。

緑と白のユニフォームが再びワールドカップに現れる。

その姿には、12年分の待ち時間と、まだ終わっていないマフレズの物語、そして次の世代へつながる静かな期待が重なっている。

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