スコットランド、36年ぶりの白星|ハイチを退けた、重く静かな初戦勝利

ワールドカップで一勝することは、簡単ではない。

強豪国にとっては当たり前のように見える勝利でも、ある国にとっては、何十年も待ち続けた扉である。ハイチ対スコットランドの試合を見ながら、そんなことを思った。

グループCの初戦。先に行われたブラジル対モロッコが引き分けに終わったことで、この試合には少し違う重みがあった。勝てば、グループの中で一歩前に出られる。ブラジルとモロッコが勝ち点を分け合ったあとだけに、ハイチにもスコットランドにも、その意味はよく見えていたはずである。

結果は、ハイチ0-1スコットランド。

スコットランドが、実に36年ぶりとなるワールドカップ本大会での勝利を手にした。

決勝点は前半28分だった。チェ・アダムスのシュートをハイチのGKジョニー・プラシドが防ぐ。そのこぼれ球に反応したのが、ジョン・マッギンである。大きく派手なゴールではない。だが、こういう一点こそ、ワールドカップでは重い。美しい軌道よりも、そこに詰めていたことが大事になる。

出典:東京新聞

マッギンのゴールで、スコットランドは先制した。

その瞬間、スコットランドのサポーターの胸には、長い時間が流れたのではないかと思う。1990年大会以来の勝利。言葉にすれば短いが、そこには何度もの予選敗退があり、届かなかった大会があり、ようやく戻ってきた舞台がある。

スコットランドにとって、この一点は単なる先制点ではなかった。

待ち続けた国が、ようやくワールドカップの本番で前に出た瞬間だった。

ただ、試合は楽なものではなかった。ハイチは簡単には崩れない。1974年以来のワールドカップ本大会となったチームは、序盤から粘り強く、時に鋭く前へ出た。スコットランドがリードしたあとも、試合の緊張は消えなかった。

ハイチには、失うものがないように見える強さがあった。大国に比べれば注目度は低いかもしれない。だが、ワールドカップの舞台に立った以上、国の記憶を背負っていることに変わりはない。走り、競り、奪い返し、最後まで可能性を消さなかった。

後半に入っても、スコットランドは追加点を奪えない。こういう試合は、見ている側にもじわじわとした緊張が残る。一点差は安全ではない。どれだけ守れていても、たった一度のミス、たった一度のこぼれ球で、試合は振り出しに戻る。

スコットランドは、華やかに勝ったわけではない。

むしろ、耐えて勝った試合である。守備陣が集中を切らさず、GKアンガス・ガンも最後までゴールを守った。攻撃で圧倒したというより、得た一点を大事に抱えたまま、最後まで運び切った。そこに、スコットランドらしい勝ち方があった。

出典:スポーツブル

一方のハイチには、悔しさが残る。

大きく崩された試合ではなかった。大量失点でもない。だからこそ、届かなかった一点が重い。ワールドカップでの敗戦は、どれも苦い。だが、一点差の敗戦には、特に長く残る感触がある。あの場面が決まっていれば。あのこぼれ球を拾えていれば。そういう小さな後悔が、試合後の表情に滲む。

それでも、ハイチの戦いは次につながるものだった。ブラジル、モロッコ、スコットランドがいるグループCで、簡単な試合などひとつもない。初戦を落としたことで苦しくはなったが、まだ終わったわけではない。次にブラジルと向き合う時、この敗戦の悔しさをどこまで力に変えられるかで、チームの表情は変わる。

出典:サッカーダイジェストWeb

グループCは、初戦を終えてスコットランドが勝ち点3で一歩前に出た。ブラジルとモロッコは引き分けで勝ち点1。ハイチは勝ち点0である。数字だけを見れば、スコットランドにとっては理想的な出発であり、ハイチにとっては厳しい出発である。

だが、この試合の余韻は、それだけではない。

スコットランドがようやく勝った。

その事実が、試合後もしばらく残る。長く待った国の勝利には、派手な大勝とは違う重みがある。選手たちが抱き合う姿や、サポーターの声には、単なる初戦勝利以上のものがあった。

出典:FIFA公式

店のテレビで見ていると、ワールドカップはやはり国ごとの時間を映す大会なのだと思う。ブラジルのように優勝を求められる国があり、モロッコのように新しい強さを証明しようとする国があり、ハイチのように久しぶりの舞台で爪痕を残そうとする国がある。そして、スコットランドのように、長い空白のあとで一勝の重みを噛みしめる国がある。

0-1。

スコアだけなら小さな試合に見える。けれど、スコットランドにとっては大きな一勝であり、ハイチにとっては次へ向かうための苦い出発だった。

ワールドカップの初戦は、いつも何かを残していく。

この試合が残したのは、36年ぶりの白星をつかんだ国の安堵と、あと一歩届かなかった国の静かな悔しさである。

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