派手ではないのに、いつもそこに残っている国――スイス代表 ワールドカップ2026出場国紹介・第8回

ワールドカップ2026出場国紹介の第8回は、スイス代表である。

これでグループBの4か国がそろう。

第5回はカナダ代表。開催国として大会を迎え、ワールドカップ初勝利を目指す国だった。

第6回はボスニア・ヘルツェゴビナ代表。2014年の初出場と初勝利の記憶を持ち、12年ぶりに戻ってくる国だった。

第7回はカタール代表。2022年大会の開催国として味わった悔しさを越え、今度は予選から戻ってくる国だった。

そして第8回が、スイス代表である。

グループBは、カナダ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、カタール、スイスの4か国で構成されている。こうして並べると、スイスだけが少し違う立ち位置に見える。

カナダは開催国の物語がある。
ボスニア・ヘルツェゴビナは復帰の物語がある。
カタールは前回開催国のやり直しの物語がある。

では、スイスには何があるのか。

私は、スイス代表を「派手ではないのに、いつもそこに残っている国」と書きたくなる。

まず、基本情報を整理しておきたい。

項目内容
国名スイス
愛称ナティ
2026年大会欧州予選を無敗で突破して出場
グループB組
対戦相手カナダ、カタール、ボスニア・ヘルツェゴビナ
監督ムラト・ヤキン
W杯出場6大会連続出場
W杯最高成績ベスト8
最高成績の大会1934年、1938年、1954年
注目選手グラニト・ジャカ、マヌエル・アカンジ、グレゴール・コベル、ブレール・エンボロ
チームの印象堅実、組織的、簡単には崩れない

スイス代表は、ワールドカップで優勝候補として大きく騒がれる国ではない。

ブラジルやアルゼンチンのような華やかさがあるわけではない。フランスやイングランドのように、スター選手が次々と出てくる印象でもない。スペインのように、ボールを支配する美しいサッカーの代名詞として語られることも少ない。

けれど、ワールドカップや欧州選手権になると、スイスはだいたいそこにいる。

そして、気がつくとグループを突破していることがある。

これがスイス代表の怖さである。

派手ではない。
でも弱くない。
大騒ぎされない。
でも簡単には負けない。

この感じが、スイス代表の魅力だと思う。

スイスは2026年大会で、6大会連続のワールドカップ出場になる。これはかなり立派な記録である。ワールドカップに一度出るだけでも簡単ではない。まして欧州予選を突破し続けるのは、非常に難しい。

欧州には強い国が多い。

ドイツ、フランス、スペイン、イングランド、イタリア、オランダ、ポルトガル、クロアチア。名前を挙げるだけでも、強豪国が並ぶ。その中で、スイスは派手な看板を掲げるわけでもなく、しっかり本大会へ出てくる。

これは、偶然ではない。

スイスには、国としてのサッカーの土台がある。組織があり、守備があり、経験のある選手がいる。大きな波に乗って一度だけ出てくる国ではなく、一定の力を保ち続けている国である。

出典:FIFA公式

2026年大会でも、スイスは欧州予選を無敗で突破した。

無敗という言葉には、スイスらしさがある。大量得点で派手に勝ち続けるというより、負けない。崩れない。安定して勝ち点を積み上げる。そういうイメージがある。

ワールドカップでは、この「負けない力」がとても大事になる。

トーナメントに入れば一発勝負だが、まずはグループリーグを抜けなければならない。グループリーグでは、派手な勝ち方よりも、勝ち点を確実に取る力がものを言う。負けない国は強い。引き分けに持ち込める国も強い。

スイスは、そういう大会向きの強さを持っている。

スイス代表の中心にいるのは、グラニト・ジャカである。

ジャカは、スイス代表を長く支えてきた中盤の選手である。強い左足のキック、広い視野、試合を落ち着かせる力、そして時には熱くなりすぎるほどの闘志。良くも悪くも、スイス代表の心臓のような存在である。

出典:FIFA公式

スイスの試合を見るなら、まずジャカを見ておくと分かりやすい。

彼がどこでボールを受けるか。
どこへパスを出すか。
どのタイミングで試合を落ち着かせるか。
あるいは、どの場面で感情を出すか。

中盤にジャカがいることで、スイスには一本の軸が通る。

もう一人、重要なのがマヌエル・アカンジである。

出典:theWORLD(ザ・ワールド)

アカンジは守備の中心であり、現代的なセンターバックである。体が強く、足元も安定しており、後ろから試合を組み立てることもできる。スイスが簡単に崩れないチームであるためには、こうした守備の柱が欠かせない。

そしてゴールには、グレゴール・コベルがいる。

出典:フットボールチャンネル

コベルは高いレベルでプレーするゴールキーパーであり、スイスの最後の砦になる存在である。ワールドカップのような大会では、ゴールキーパーの出来が結果を大きく左右する。堅実なチームに良いゴールキーパーがいると、相手にとっては非常にやりにくい。

前線にはブレール・エンボロがいる。

出典:Goal.com

エンボロは、力強さと推進力のある選手である。スイスの攻撃は、華やかな連続パスで相手を崩すというより、堅い守備から前へ出て、少ないチャンスを生かす形が合っている。そこでエンボロのような選手がいると、相手の守備に圧力をかけられる。

スイス代表は、全体としてバランスが良い。

スター選手が一人だけ突出しているというより、各ポジションに経験ある選手がいる。中盤にジャカ、守備にアカンジ、ゴールにコベル、前線にエンボロ。そこに若い世代も加わってくる。

こういうチームは、大会で大崩れしにくい。

もちろん、スイスにも弱点はある。

圧倒的に試合を決めるような攻撃力が、常にあるわけではない。強豪国相手に守り抜く力はあっても、格下相手に必ず勝ち切れるかというと、そこには難しさがある。堅実なチームほど、先に失点したときに試合運びが難しくなることもある。

それでも、スイスは厄介な相手である。

相手からすると、非常にやりにくい。簡単に崩れない。隙が少ない。セットプレーも怖い。終盤まで同点で進むと、どちらに転ぶか分からない。

ワールドカップでは、こういう国が勝ち上がることがある。

グループBの中で、スイスはおそらく一番安定感のある国として見られるだろう。

カナダにはホームの力がある。
ボスニア・ヘルツェゴビナには復帰の勢いがある。
カタールにはアジア王者としての自負がある。

しかし、スイスには大会経験がある。

この差は大きい。

初戦はカタールである。

カタールは前回2022年大会の開催国であり、アジア王者としての実績も持っている。しかし、ワールドカップ本大会ではまだ結果を出せていない。スイスにとっては、ここで確実に勝ち点3を取りたい試合になるはずである。

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ただし、簡単な試合ではない。

初戦はどの国にとっても難しい。格上と見られる国ほど、負けられない重圧がある。スイスが普段通りの堅実さを出せるかどうか。そこが大事になる。

次に、スイスはボスニア・ヘルツェゴビナと対戦する。

これは欧州同士の対戦である。互いに知っている部分も多い。ボスニア・ヘルツェゴビナにはジェコのような経験豊かな選手がいる。

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スイスにとっては、相手の一発を警戒しながら、自分たちのリズムで試合を進めたいところである。

最後はカナダ戦である。

これは、グループBの行方を決める大きな試合になるかもしれない。カナダは開催国のひとつであり、ホームの大声援を受ける。スイスがすでに突破を決めているか、それとも勝ち点が必要な状況で迎えるかによって、試合の意味は変わる。

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もしスイスがこの試合で勝ち点を必要としているなら、カナダのホームの空気はかなり難しいものになるだろう。

スイス代表にとって、2026年大会の目標は何だろうか。

まずはグループ突破である。

しかし、スイスにとってグループ突破は、もはや驚きではない。近年のスイスは、ワールドカップや欧州選手権で決勝トーナメントに進むことが珍しくない国になっている。

だからこそ、次の壁がある。

ベスト16の壁である。

スイスは、世界の8強に入るところまでは、近年なかなか届いていない。古い時代にはワールドカップでベスト8に進んだことがある。しかし、現代のワールドカップでは、ラウンド16あたりで止まる印象が強い。

堅実である。
安定している。
だが、最後のもう一段を越えられない。

そこに、スイス代表の切なさがある。

これは、メキシコ代表にも少し似ている。

メキシコは「強いのに、あと一歩届かない国」として第1回で書いた。スイスもまた、似たような感覚を持つ国である。ただし、メキシコが熱気と勢いを感じさせる常連国だとすれば、スイスは冷静さと秩序を感じさせる常連国である。

どちらも大会にいる。
どちらも簡単には負けない。
けれど、優勝候補として最後まで語られることは少ない。

こういう国を見るのも、ワールドカップの楽しみである。

スイス代表は、派手な物語を作る国ではないかもしれない。

けれど、じっくり見ていると味がある。守備の位置取り、中盤の落ち着き、相手に合わせて試合を進めるしたたかさ。観客を熱狂させる派手なサッカーではなくても、勝ち点を取るためのサッカーを知っている。

それは、とても大事な強さである。

ワールドカップは、夢の大会である。

だが、夢だけでは勝てない。熱狂だけでも勝てない。勢いだけで一試合は勝てても、長い大会を戦うには安定が必要である。

スイスは、その安定を持っている国である。

だから、グループBを見るとき、私はスイスを中心に考えたくなる。カナダがホームでどこまでやれるか。ボスニア・ヘルツェゴビナが12年ぶりの大会でどう戦うか。カタールが2022年の悔しさを越えられるか。そのすべてを測る基準として、スイスという堅実な国がいる。

スイスに勝てるか。
スイスから勝ち点を取れるか。
スイスの守備を崩せるか。

グループBの各国にとって、これは大きな問いになる。

スイス代表は、見る前から分かりやすくワクワクする国ではないかもしれない。

けれど、大会が始まると、いつの間にか重要な存在になっている。気がつくと決勝トーナメントにいる。負けたとしても、簡単には負けない。相手を苦しめ、試合を締める。

そういう国である。

派手ではないのに、いつもそこに残っている国。

スイス代表の2026年大会は、その堅実さがもう一段上の結果につながるかどうかを見る大会になるのだと思う。

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