2026年– date –
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鑑賞ノート
山本周五郎『狐』考察——人はなぜ、見たいものを信じてしまうのか
山本周五郎の『狐』は、題名だけを見ると、いかにも怪異譚のように思える。 狐が人を化かす。城に怪しいものが出る。誰も正体を見破れない。 そんな昔話めいた空気が、物語の入口には漂っている。 しかし読み終えてみると、この小説で本当に人を化かしてい... -
鑑賞ノート
「掟上今日子の備忘録」── 眠れば消える探偵の全記録
眠ると記憶がリセットされる"忘却探偵"が、どんな事件も1日で解く── 2015年秋、日本テレビ系で放送されたこのドラマは、西尾維新作品初の実写化にして、新垣結衣の白髪メガネ姿が鮮烈な印象を残したミステリー×ラブストーリーである。脚本は後に『逃げるは... -
鑑賞ノート
NOPE/ノープ』考察|あらすじ解説とゴーディ事件、「大空の恐怖」が照らす見世物の残酷さ
ジョーダン・ピールの「nope/ノープ」は、観ている最中より、観終わってからじわじわ効いてくる映画だ。最初はUFOスリラーに見える。途中から怪獣映画の顔を見せる。けれど最後に残るのは、宇宙人の恐怖よりも、「人はなぜ見たがるのか」「なぜ撮りたがる... -
鑑賞ノート
「お悧巧すぎた」少女の叫び——太宰治『葉桜と魔笛』に見る失われた青春
太宰治の『葉桜と魔笛』は、老夫人が若き日の妹との記憶を語る短編である。 舞台は、日本海沿いの城下町。語り手の姉と妹は、父とともに寺の離れで暮らしている。妹は腎臓結核を患い、医者からは余命百日ほどと告げられている。 ある日、姉は妹の箪笥から... -
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若い愛を笑ってしまう前に——山川方夫『赤い手帖』を読む
山川方夫の『赤い手帖』は、深夜の街で行き場を失った一人の男が、若い恋人たちの「愛」に触れ、自分自身の空虚さに気づかされる物語である。 テレビ番組の録音を終えた男は、若い女優に誘いをかけるがかわされ、さらに年上の女優の部屋を訪ねても不在で、... -
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「本物の吸血鬼」神話を生んだ身体──マックス・シュレックの演技解剖
はじめに 無声映画の怪物は、特殊効果ではなく身体で作られていた。1922年の『吸血鬼ノスフェラトゥ』におけるオルロック伯爵は、その極致である。台詞を持たない俳優マックス・シュレックは、頭蓋の形から指先の角度、歩幅、停止の秒数に至るまで「身体の... -
鑑賞ノート
回り続ける日常の中で ―芥川龍之介『一夕話』再読と、ささやかな自己認識―
大正11年(1922年)に発表された芥川龍之介の短編小説『一夕話(いっせきわ)』は、劇的な事件や超常的な要素を持たない、一見するととても穏やかで平易な作品だ。『羅生門』に見られる人間のエゴイズムや、『蜘蛛の糸』の教訓、『河童』の鋭い社会風刺と... -
お店と日々
店の裏側で起きていた、三つ目の設備の話
昨日、冷凍冷蔵庫とエコキュートの交換工事が終わった。厨房に新しい機械が入り、空気が少しだけ変わった気がした。設備が更新されると、仕事の段取りまで新しくなったような錯覚がある。 そんな流れで、ふと照明のことが気になった。冷凍冷蔵庫の近くには... -
お店と日々
長い一日、その先の十数年
数年前に、店の冷暖房設備をリース契約した会社がある。今日はその点検の日で、いつものように担当の方が店に来てくれた。 この方は、点検のついでに店の奥にあるホシザキ製の大型冷凍冷蔵庫も毎回さっと見てくれる。業務用の機械は、壊れてから慌てるより... -
鑑賞ノート
辞表が刀になった日|映画『サラリーマン忠臣蔵』(1960年)が描いた昭和サラリーマンの『仇討ち』
1. はじめに ─ 「忠臣蔵」を会社に持ち込む発想 日本人が最も愛する歴史劇といえば「忠臣蔵」である。元禄15年(1702年)12月、赤穂浪士47名が主君の仇を討つべく吉良邸に討ち入った事件は、義侠心と滅私奉公の物語として、歌舞伎、講談、映画、テレビドラ...