グループDは、開催国アメリカから始まった。
そこに、16年ぶりに戻ってくるパラグアイがいた。さらに、6大会連続で世界の舞台へ立つオーストラリアがいた。
そしてグループDの最後に取り上げるのが、トルコ代表である。
トルコという国のサッカーには、独特の熱がある。
ヨーロッパの一員として戦いながら、アジアにも近い。イスタンブールのように、東西が交わる土地の空気を持っている。サッカーもまた、どこか一筋縄ではいかない。技術があり、激しさがあり、感情の揺れも大きい。勢いに乗ったときの迫力は、見ている側まで巻き込んでくる。
そのトルコが、2026年ワールドカップに戻ってくる。
最後に本大会へ出場したのは、2002年の日韓大会だった。日本で行われた大会で、トルコは3位になった。日本代表も決勝トーナメント1回戦でトルコと対戦し、0-1で敗れた。雨の宮城スタジアムでの試合を覚えている人も多いだろう。
あれから24年である。
トルコ代表にとって、2026年大会は単なる出場ではない。長い不在のあとに戻ってくる、大きな再登場の舞台である。
トルコ代表の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 国名 | トルコ共和国 |
| 大陸連盟 | UEFA |
| 愛称 | 月星軍団 |
| ワールドカップ出場回数 | 4回目 |
| 最高成績 | 3位(2002年大会) |
| 2026年大会 | 欧州予選・プレーオフを経て出場 |
| 監督 | ヴィンチェンツォ・モンテッラ |
| 主な選手 | ハカン・チャルハノール、アルダ・ギュレル、ケナン・ユルディズ、メリフ・デミラル、チャーラル・ソユンジュ、ウールジャン・チャクル |
| グループ | D組 |
| 同組 | アメリカ、パラグアイ、オーストラリア |
2002年の記憶
出典:FIFA公式
トルコ代表を語るとき、どうしても2002年日韓大会の記憶から始めたくなる。
あの大会のトルコは強かった。
グループリーグではブラジルと同組になり、初戦で接戦を演じた。決勝トーナメントに進むと、日本を破り、セネガルも下し、準決勝まで進んだ。準決勝では再びブラジルに敗れたが、3位決定戦で韓国に勝ち、堂々の3位となった。
トルコにとっては、ワールドカップ史上最高の成績である。
日本のファンにとっても、トルコは忘れにくい相手である。日本が初めてワールドカップの決勝トーナメントに進んだ大会で、その歩みを止めた国がトルコだったからだ。
派手な大量得点で勝ち上がったというより、集中力があり、勝負強かった。ルシュトゥ・レチベル、ハカン・シュキュル、イルハン・マンスズといった名前が残っている。あのときのトルコは、技術と気迫がうまく噛み合ったチームだった。
しかし、その後のトルコは、ワールドカップ本大会から遠ざかった。
2006年、2010年、2014年、2018年、2022年。何度も欧州予選に挑みながら、本大会には届かなかった。ヨーロッパの予選は厳しい。少しのつまずきで、すぐに道が狭くなる。トルコもまた、その厳しさの中で長い時間を過ごしてきた。
だからこそ、2026年大会の出場には重みがある。
2002年の記憶を持つ世代にとっては、ようやく戻ってきたトルコである。若い世代にとっては、自分たちが初めて見るワールドカップのトルコ代表かもしれない。
モンテッラが率いる新しいトルコ
出典:FIFA公式
現在のトルコ代表を率いるのは、イタリア人監督のヴィンチェンツォ・モンテッラである。
現役時代はイタリア代表のストライカーとして知られ、監督としてもイタリアやトルコで経験を積んできた人物である。トルコ代表を率いてからは、チームに一定の形と落ち着きを与えている。
トルコには、もともと情熱がある。良いときは一気に試合を動かす力がある。だが、そのぶん、試合の流れが乱れたときに感情が前へ出すぎることもある。
モンテッラに求められるのは、その熱を消すことではない。
むしろ、熱を持ったまま、試合を壊さないことだろう。勢いを力に変えながら、冷静さも保つ。トルコ代表にとって、そこが大きな課題になる。
ワールドカップでは、短い時間で流れが変わる。先制しても安心できない。失点しても慌ててはいけない。トルコのように感情の強いチームは、その波をどう扱うかが勝敗を分ける。
チャルハノールという中心
出典:footballista
トルコ代表の中心にいるのが、ハカン・チャルハノールである。
インテルでプレーする中盤の選手で、キックの質、展開力、試合を読む力を持っている。直接フリーキックの印象が強い選手でもあるが、現在の彼はそれだけではない。中盤の底から試合を組み立て、チームのリズムを整える役割も担う。
ワールドカップのような大会では、こういう選手がいるかどうかが大きい。
試合が慌ただしくなったとき、誰がボールを落ち着かせるのか。相手に押し込まれたとき、どこから攻撃のスイッチを入れるのか。チャルハノールは、その答えを持てる選手である。
トルコには若い才能が多い。だが、若い才能だけでは大会を戦い切れない。そこにチャルハノールのような経験ある選手がいることで、チームは一本の線でつながる。
アルダ・ギュレルとケナン・ユルディズ
2026年のトルコ代表で、最も目を引くのは若い攻撃の才能である。
まず、アルダ・ギュレルである。
出典:ALLSTARS CLUB
レアル・マドリードでプレーする左利きの技巧派で、ボールを持ったときの雰囲気がある。まだ若いが、すでに大きな期待を背負っている選手である。狭い場所で前を向き、左足で決定的なパスやシュートを出せる。
トルコ代表が試合の流れを変えたいとき、ギュレルのひと振りが必要になる場面はあるだろう。
もうひとりが、ケナン・ユルディズである。
出典:きちのうすめ雑記 – はてなブログ
ユベントスで注目される若手で、前線で違いを作れる選手である。ドリブル、シュート、動き出し。まだ粗さはあっても、相手にとっては予測しにくい。ワールドカップのような舞台では、こういう若さの勢いが一気に大会の空気を変えることがある。
ギュレルとユルディズは、トルコの未来そのもののような存在である。
ただし、若い才能がいるからといって、すぐに勝てるわけではない。相手は徹底して警戒してくる。体をぶつけられ、スペースを消され、思うようにボールを持てない時間もある。
そのときに、トルコが焦らず彼らを生かせるか。
ここに、2026年大会の見どころがある。
守備の強さと不安定さ
トルコには、攻撃の才能だけでなく、守備にも経験ある選手がいる。
メリフ・デミラルやチャーラル・ソユンジュは、欧州の舞台でプレーしてきたセンターバックである。強さがあり、空中戦にも強い。激しい試合になればなるほど、存在感を出せるタイプである。
一方で、トルコの守備は常に安心と言い切れるものでもない。
勢いを持って前に出たあと、裏にスペースができる。試合が荒れたとき、ラインが乱れる。攻撃の力があるチームほど、守備とのバランスが難しくなる。
トルコ代表にとって、守備は単に後ろの選手だけの問題ではない。
中盤がどれだけ相手の前進を止められるか。前線がどれだけ守備のスイッチを入れられるか。チーム全体で、攻撃の熱と守備の冷静さを両立できるかが問われる。
もしそこが整えば、トルコは非常に厄介なチームになる。
グループDでのトルコ
トルコが入ったグループDには、アメリカ、パラグアイ、オーストラリアがいる。
この組は、特別に巨大な優勝候補がいるわけではない。だが、どの国もはっきりとした個性を持っている。
アメリカは開催国である。プリシッチらを中心とした世代が、ホームの大声援を受けて戦う。トルコにとっては、相手の勢いをどう受け止めるかが大きな課題になる。アメリカが前へ出てくるなら、その背後を突くチャンスもある。

パラグアイは、南米らしいしぶとさを持つ。簡単には崩れず、試合を重くする力がある。トルコにとっては、焦って攻め続ける展開が一番危ない。相手のペースにはまらず、冷静にチャンスを待つ必要がある。

オーストラリアは、走力と球際の強さを持つ。最後まで足を止めないチームであり、体をぶつけることを嫌がらない。トルコの若い攻撃陣にとっては、かなりタフな相手になるだろう。

グループDは、どの国にも突破の可能性がある。
アメリカにはホームの力があり、パラグアイには南米の粘りがある。オーストラリアにはワールドカップ常連国としてのしぶとさがある。そしてトルコには、若い才能と試合を一気に動かす熱がある。
この組でトルコが上に行くためには、才能だけでは足りない。感情を力にしながら、同時に試合を壊さない成熟が必要になる。
24年分の空白を越えて
ワールドカップに24年ぶりに戻ってくるというのは、簡単なことではない。
2002年を知る人にとって、トルコ代表は特別な記憶を持つ国である。日本を破り、準決勝まで進み、最後は3位になった。あの大会のトルコは、世界の中で確かな存在感を示した。
だが、2026年のトルコは、2002年の再現をしに来るわけではない。
チャルハノールが中心にいて、ギュレルやユルディズのような若い才能がいる。モンテッラがチームを率い、グループDで新しい物語を作ろうとしている。
過去の記憶は大切である。
しかし、ワールドカップはいつも現在の大会である。24年前の3位は、今回の勝ち点を保証してくれない。大事なのは、今のトルコがどんな試合をするかである。
赤いユニフォーム、月と星、若い才能、そして熱を持ったサポーター。
出典:FIFA公式
トルコ代表には、見る者を引き込む何かがある。うまくいけば、一気に大会の主役に近づくかもしれない。逆に、少し歯車が狂えば、グループリーグで苦しむ可能性もある。
その危うさも含めて、トルコらしい。
24年ぶりに戻ってくる月星軍団が、グループDでどんな熱を見せるのか。
静かに、しかし少し身を乗り出して見てみたい。







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