グループDは、開催国アメリカから始まり、16年ぶりに戻ってきたパラグアイへと進んできた。
アメリカにはホーム開催の期待がある。パラグアイには、南米らしいしぶとさと、久しぶりのワールドカップへ戻ってくる物語がある。
そして今回取り上げるのは、オーストラリア代表である。
オーストラリアは、サッカーだけの国ではない。ラグビー、クリケット、オーストラリアンフットボール、テニス、水泳など、さまざまなスポーツが強い国である。その中でサッカーは、長い間、主役の一番手ではなかったかもしれない。
それでも、ワールドカップの舞台でオーストラリアを見る機会は、いつの間にか珍しいものではなくなった。
2006年ドイツ大会から、2010年、2014年、2018年、2022年、そして2026年へ。オーストラリアは6大会連続で本大会に出場する。これはもう、偶然の出場ではない。世界のどこかでしぶとく勝ち残り、最後には必ず本大会に顔を出してくる国である。
派手な優勝候補ではない。
だが、簡単に負ける国でもない。
オーストラリア代表には、そういう強さがある。
オーストラリア代表の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 国名 | オーストラリア |
| 大陸連盟 | AFC |
| 愛称 | サッカルーズ |
| ワールドカップ出場回数 | 7回目 |
| 連続出場 | 6大会連続 |
| 最高成績 | ベスト16(2006年、2022年) |
| 2026年大会 | アジア予選を突破して出場 |
| 監督 | トニー・ポポヴィッチ |
| 主な選手 | マシュー・ライアン、ジャクソン・アーバイン、マシュー・レッキー、ネストリ・イランクンダ、モハメド・トゥーレ、アレッサンドロ・チルカーティ、ジョーダン・ボス |
| グループ | D組 |
| 同組 | アメリカ、パラグアイ、トルコ |
オセアニアからアジアへ、遠い道を歩いてきた代表
オーストラリア代表の歴史を考えるとき、まず思い浮かぶのは「移動距離」である。
地理的にも遠い。対戦相手も遠い。かつてオセアニアに所属していた時代、オーストラリアはワールドカップに出るために、地域予選を勝ち抜いたあと、さらに大陸間プレーオフを戦わなければならないことが多かった。
国内では力があっても、最後の最後で南米やアジアの相手に阻まれる。そういう悔しさを何度も味わってきた国である。
出典:FIFA公式
1974年西ドイツ大会に初出場したあと、オーストラリアは長く本大会から遠ざかった。再び戻ってきたのは、2006年ドイツ大会である。
この2006年大会は、オーストラリアサッカーにとって大きな転換点だった。
日本代表と同じグループに入り、初戦で日本を相手に終盤の逆転勝利を収めた。あの試合を覚えている日本のサッカーファンは多いだろう。日本がリードしていた試合を、オーストラリアが最後にひっくり返した。
あの粘り、あの体の強さ、あの終盤の迫力は、いかにもオーストラリアらしかった。
そしてその大会で、オーストラリアはベスト16に進んだ。ここから、オーストラリアはワールドカップの常連国になっていく。
2022年カタール大会の記憶
出典:FIFA公式
近年のオーストラリア代表で最も印象深いのは、2022年カタール大会である。
この大会でオーストラリアは、グループリーグを突破し、ベスト16へ進んだ。決勝トーナメント1回戦では、のちに優勝するアルゼンチンと対戦した。
結果は1-2の敗戦だった。
だが、オーストラリアは簡単に崩れなかった。リオネル・メッシを擁するアルゼンチンを相手に、最後まで試合を投げ出さなかった。終盤には同点に迫る場面もあり、世界王者になるチームを相手に、冷や汗をかかせた。
この試合を見て、オーストラリアという国の強さを改めて感じた人も多かったのではないか。
技術のきらびやかさでは、アルゼンチンに及ばないかもしれない。だが、走る。競る。戻る。体を張る。最後まで諦めない。
それは、サッカーの基本でありながら、ワールドカップの舞台では最も難しいことでもある。
オーストラリアは、その基本を大事にして戦う国である。
トニー・ポポヴィッチのチーム
現在のオーストラリア代表を率いるのは、トニー・ポポヴィッチである。
現役時代にはディフェンダーとしてプレーし、2006年ワールドカップのメンバーでもあった人物である。つまり、オーストラリアが世界の舞台へ再び戻っていった時代を、選手として知っている監督でもある。
出典:FIFA公式
ポポヴィッチのチームには、守備の固さと規律の強さがある。
オーストラリアは、相手に自由を与えない。簡単に中央を通させず、球際で強くいく。攻撃では派手な連係で崩すというより、走力、クロス、セットプレー、カウンターを生かす。ワールドカップのような短期決戦では、こういう戦い方はとても現実的である。
もちろん、現代のサッカーでは守るだけでは勝てない。
だからこそ、今回のオーストラリア代表で面白いのは、経験ある選手たちの中に、若い攻撃の才能が加わっているところである。
ベテランと若い力
出典:FIFA公式
オーストラリア代表には、経験を持つ選手がいる。
ゴールキーパーのマシュー・ライアンは、長く代表を支えてきた存在である。ワールドカップの空気を知っている選手がゴール前にいることは、チームにとって大きい。大会では、ひとつのセーブが流れを変えることがある。
中盤では、ジャクソン・アーバインが重要な存在になる。クラブでもキャプテンを務めるリーダーであり、代表でもチームの心臓のような役割を果たす。派手なスターというより、チーム全体を動かし、支える選手である。
マシュー・レッキーも、オーストラリアを象徴するような選手である。2022年大会のデンマーク戦で決勝点を決め、チームを決勝トーナメントへ導いた。走り、戦い、ここぞという場面で仕事をする。まさにサッカルーズらしい選手である。
一方で、若い世代にも注目したい。
ネストリ・イランクンダは、スピードと爆発力を持つ攻撃の選手である。若さゆえの勢いがあり、試合の流れを一瞬で変える可能性を持っている。オーストラリアにとって、こういう「何かを起こせる選手」がいることは大きい。
モハメド・トゥーレも、前線の新しい力として期待される。オーストラリアは長く、前線で確実に得点を取る選手を探し続けてきた。トゥーレが本大会で力を示せれば、チームの攻撃は大きく変わる。
さらに、アレッサンドロ・チルカーティ、ジョーダン・ボスといった若い守備陣、サイドの選手たちもいる。経験ある選手だけでなく、次の世代が入り始めているところに、いまのオーストラリア代表の面白さがある。
グループDでのオーストラリア
オーストラリアが入ったグループDには、アメリカ、パラグアイ、トルコがいる。
この組は、非常にわかりやすい優勝候補がいるグループではない。だが、どの国も簡単ではない。むしろ、力の差が大きくないぶん、ひとつの勝ち点、ひとつの得点、ひとつのミスが順位を左右するグループである。
まず、トルコは技術と勢いを持つチームである。若い才能も多く、試合が動き出したときの爆発力がある。オーストラリアにとっては、相手の勢いを受け流し、試合を落ち着かせることが重要になる。

アメリカは開催国である。ホームの大声援、プリシッチらの世代、そして自国開催の高揚感がある。オーストラリアにとっては、相手の熱に飲まれないことが第一になる。逆に、試合を固く進めることができれば、アメリカの焦りを誘うこともできる。

パラグアイは、オーストラリアと同じく粘り強いチームである。派手ではないが、簡単には崩れない。お互いに球際で激しく戦い、なかなか得点が動かない試合になるかもしれない。こういう試合で勝ち点を拾えるかどうかが、グループ突破の鍵になる。

オーストラリアにとって、このグループは楽ではない。
しかし、まったく手が届かない組でもない。トルコにも、アメリカにも、パラグアイにも、それぞれ隙はある。オーストラリアが自分たちの形を失わず、粘り強く戦えれば、十分に突破を狙える。
サッカルーズというしぶとさ
オーストラリア代表の愛称は、サッカルーズである。
サッカーとカンガルーを合わせた、いかにもオーストラリアらしい愛称だ。少し親しみやすい響きもある。しかし、実際のチームはかなりしぶとい。
オーストラリアは、相手にとって気持ちのよい試合をさせない。体をぶつけ、走り続け、セットプレーで圧をかける。試合が終盤に近づいても、足を止めない。
このチームを相手にする国は、最後まで気を抜けない。
それが、オーストラリア代表の価値である。
ワールドカップでは、スター選手の名前が先に語られる。技術のある国、華やかな国、優勝候補の国に注目が集まる。それは当然である。
だが、大会を本当に面白くするのは、そういう国だけではない。
オーストラリアのように、何度も世界へ戻ってきて、毎回、簡単には終わらない試合をする国がいるから、ワールドカップは面白い。
2026年大会のオーストラリアは、ベテランの経験と若い攻撃の力を持っている。グループDでは、主役として大きく騒がれる立場ではないかもしれない。だが、相手から見れば、できれば避けたい国である。
緑と金のユニフォームを着たサッカルーズが、また世界の舞台でどんな粘りを見せるのか。
静かに、しかし楽しみに見てみたい。





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