ベルギー代表 / 黄金世代の余韻と、赤い悪魔の再出発 ワールドカップ2026出場国紹介・第25回

グループFでは、オランダ、日本、スウェーデン、チュニジアを見てきた。

オランダは、準優勝3回の歴史を背負うオレンジ軍団。
日本は、ベスト16の壁を越えようとする青のチーム。
スウェーデンは、北欧の記憶と静かな反撃を抱えた国。
チュニジアは、カルタゴの鷲として、まだ越えていない一線に挑む国であった。

ここからシリーズは、グループGへ移る。

最初に登場するのは、ベルギー代表である。

ベルギーと聞くと、チョコレート、ビール、ワッフル、そしてヨーロッパの小さな国という印象がある。だが、サッカーにおいては、ここ十数年、世界の中心に近い場所にいた国である。

その愛称は「赤い悪魔」。
この呼び名は、なかなか強い。

ただ怖いだけではない。
赤いユニフォーム、鋭い攻撃、豊かな才能、そしてどこか燃え尽きなかった物語。
ベルギー代表には、そんな印象がある。

目次

基本情報

項目内容
国名ベルギー
代表チームの愛称赤い悪魔
大陸連盟UEFA
ワールドカップ出場15回目
初出場1930年ウルグアイ大会
最高成績3位(2018年)
2022年カタール大会グループステージ敗退
2026年大会予選欧州予選グループJを首位通過
監督ルディ・ガルシア
主将ユーリ・ティーレマンス
グループGの相手エジプト、イラン、ニュージーランド

小国という言葉では収まらないサッカー国

ベルギーは、国土の大きさで見れば決して大国ではない。

フランス、ドイツ、オランダに囲まれたヨーロッパの小さな国である。言語も一つではない。オランダ語圏、フランス語圏、ドイツ語圏があり、地域ごとの文化も違う。そう考えると、一つの代表チームとしてまとまること自体にも、独特の難しさがあるのかもしれない。

しかし、サッカーの世界でベルギーは、長く存在感を示してきた。

初めてワールドカップに出場したのは1930年の第1回大会である。そこから何度も本大会に出場し、1986年メキシコ大会では4位に入った。そして2018年ロシア大会では、ついに3位まで進んだ。

ワールドカップ優勝国ではない。
だが、ベルギーは「勝てそうだった国」として、強く記憶に残っている。

この「勝てそうだった」という感覚が、ベルギー代表の物語を少し切ないものにしている。

黄金世代という眩しい時間

出典:ABEMA TIMES

近年のベルギー代表を語る時、「黄金世代」という言葉は避けて通れない。

エデン・アザール。
ケヴィン・デ・ブライネ。
ロメル・ルカク。
ティボー・クルトワ。
ヴァンサン・コンパニ。
ヤン・フェルトンゲン。
トビー・アルデルヴァイレルト。
アクセル・ヴィツェル。
ドリース・メルテンス。

名前を並べるだけで、すごい時代だったことがわかる。

前線には個人で違いを作れる選手がいた。
中盤には試合を動かせる選手がいた。
守備には経験と強さがあり、ゴールには世界屈指の守護神がいた。

これほどの選手たちが、同じ時代にベルギー代表に集まった。
だからこそ、世界は期待した。

このチームなら、ワールドカップを獲るかもしれない。
少なくとも、決勝まで行くのではないか。
そう思わせるだけの力があった。

だが、代表サッカーは、名前の豪華さだけでは完成しない。
大会の流れ、相手との相性、コンディション、ほんの一瞬の判断。いくつもの要素が重なり合う。

出典:FIFA公式

黄金世代は、眩しかった。
しかし、その眩しさは、最後に金色のトロフィーには届かなかった。

2018年、日本戦からブラジル戦へ

ベルギー代表の記憶として、日本の読者にとって最も忘れにくいのは、2018年ロシア大会の日本戦だろう。

決勝トーナメント1回戦。
日本はベルギーを相手に、後半に2点を先に取った。

あの時、日本がベスト8に近づいたと思った人は多いはずである。
私も、あの試合の空気は今でもよく覚えている。
これは本当に行けるのではないか。
日本が、ワールドカップで新しい景色を見るのではないか。

しかし、ベルギーはそこから追いついた。
そして最後の最後、カウンターで逆転した。

日本にとっては、あまりにも痛い敗戦だった。
だが、ベルギー側から見れば、あれは黄金世代の底力を示した試合でもあった。

ただ強いだけではない。
追い込まれても崩れない。
試合の最後に、あれだけ美しい速攻を出せる。
あの瞬間に、ベルギーの才能と勝負強さが凝縮されていた。

出典:BBC

続く準々決勝では、ブラジルを2-1で破った。
これは大きな勝利だった。

ブラジルを倒して、ベルギーは準決勝へ進んだ。
世界一まで、本当にあと少しだった。

3位という成果と、届かなかった頂点

2018年ロシア大会で、ベルギーは3位になった。

これはベルギー代表にとって、ワールドカップ最高成績である。
準決勝ではフランスに敗れたが、3位決定戦でイングランドを破った。

3位は立派な成績である。
世界で3番目に勝ち上がったということなのだから、胸を張っていい。

しかし、黄金世代に対する期待が大きかった分、そこには少しだけ複雑な感情も残る。

あのチームなら、優勝できたのではないか。
あの世代が、ついにベルギーに初めてのワールドカップを持ち帰るのではないか。
そう思わせるだけのチームだった。

だからこそ、3位という結果は、成功でありながら、未完の物語でもある。

サッカーの世界には、優勝しなかったのに忘れられないチームがいる。
1970年代のオランダがそうであるように、ベルギーの黄金世代もまた、タイトルだけでは測れない記憶を残した。

2022年、静かに終わった一つの時代

2022年カタール大会は、ベルギーにとって苦い大会だった。

グループステージで敗退したのである。

2018年に3位まで進んだ国が、次の大会では決勝トーナメントに届かなかった。
カナダには勝ったが、モロッコに敗れ、クロアチアとは引き分けた。結果として、ベルギーはグループで姿を消した。

出典:footballista

この敗退は、単なる一大会の失敗ではなく、一つの時代の終わりのようにも見えた。

アザールは大会後に代表を退いた。
多くの選手が年齢を重ね、黄金世代という言葉にも、少しずつ過去の響きが混じり始めた。

どれほど才能があっても、時間は止まらない。
代表チームも、いつかは世代交代を迎える。

ベルギーは、その現実に向き合うことになった。

ルディ・ガルシアと新しい赤い悪魔

2026年大会でベルギー代表を率いるのは、ルディ・ガルシアである。

出典:FIFA公式

フランス人監督で、クラブで多くの経験を積んできた人物だ。リール、ローマ、マルセイユ、リヨン、ナポリなどを率いてきた経歴があり、2025年1月にベルギー代表の監督に就任した。

代表チームの監督には、クラブとは違う難しさがある。
毎日選手と練習できるわけではない。短い時間でチームをまとめ、大会に合わせて形を作らなければならない。

ベルギーは今、完全な若返りだけをしているわけではない。
デ・ブライネ、ルカク、クルトワ、ヴィツェルのような経験ある選手がまだいる。
一方で、ジェレミー・ドク、アマドゥ・オナナ、ユーリ・ティーレマンスといった、次の時代を担う選手たちもいる。

つまり、ベルギーは過去を完全に手放したわけではない。
黄金世代の余韻を残しながら、次へ進もうとしている。

その中で主将を務めるのが、ユーリ・ティーレマンスである。
彼はもう若手ではなく、チームの中心を担う年齢になった。デ・ブライネやルカクの世代と、新しい世代をつなぐ存在でもある。

ベルギー代表の2026年大会は、単なるリベンジではない。
一つの時代から次の時代へ、どう橋を架けるかの大会でもある。

デ・ブライネ、ルカク、クルトワの存在

それでも、2026年のベルギーを語る上で、やはりデ・ブライネ、ルカク、クルトワの名前は外せない。

ケヴィン・デ・ブライネは、長く世界最高級のミッドフィールダーとして見られてきた。
正確なパス、広い視野、試合を一瞬で変えるキック。彼がいるだけで、ベルギーの攻撃には特別な質が生まれる。

出典:number.bunshun.jp

ロメル・ルカクは、ベルギー代表の歴代最多得点者である。
力強さ、決定力、代表で積み上げてきたゴールの数。批判されることもあった選手だが、それでもベルギーの前線を長く支えてきた存在である。

出典:FOOTBALL ZONE

ティボー・クルトワは、ゴール前の最後の砦である。
大舞台を知る守護神がいることは、ワールドカップでは大きい。拮抗した試合では、ゴールキーパーの一つのセーブが勝敗を変える。

出典:Goal.com

この3人がいる限り、ベルギーにはまだ「もう一度」という空気がある。
ただし、それは同時に「最後かもしれない」という空気でもある。

だからこそ、2026年のベルギーには、独特の重みがある。

グループGで待つエジプト、イラン、ニュージーランド

ベルギーが入ったグループGには、エジプト、イラン、ニュージーランドがいる。

まずエジプト。
モハメド・サラーを擁するアフリカの強豪である。ベルギーにとって、初戦から気の抜けない相手になるだろう。サラーのような選手は、一度のチャンスで試合を決めることがある。

あわせて読みたい
エジプト代表 / ファラオの記憶と、サラーの最後の夢 ワールドカップ2026出場国紹介・第26回 グループGの最初は、ベルギー代表を見てきた。 黄金世代の余韻を残しながら、赤い悪魔がもう一度立ち上がろうとしている。2018年の輝き、2022年の失意、そして2026年の...

イランは、アジアの中でも国際大会経験が豊富なチームである。
守備が堅く、粘り強く、相手にとって嫌な試合をする。ベルギーがボールを持つ展開になったとしても、簡単に崩せるとは限らない。

あわせて読みたい
イラン代表 / チーム・メッリの誇りと、越えたい壁 ワールドカップ2026出場国紹介・第27回 グループGでは、ここまでベルギー代表とエジプト代表を見てきた。 ベルギーは、黄金世代の余韻を残しながら、赤い悪魔として再出発を目指す国である。エジプトは、アフ...

ニュージーランドは、グループの中では挑戦者の立場と見られるかもしれない。
だが、ワールドカップではそういうチームこそ怖い。守って耐え、セットプレーや一瞬の隙を狙う展開になれば、ベルギーにとっても簡単ではない。

あわせて読みたい
ニュージーランド代表 / 白いユニフォームと、無敗の記憶 ワールドカップ2026出場国紹介・第28回 グループGでは、ここまでベルギー、エジプト、イランを見てきた。 ベルギーは、黄金世代の余韻を残しながら再出発する赤い悪魔である。エジプトは、アフリカの古豪とし...

ベルギーは、おそらくグループGの中心に置かれる国である。
しかし、中心に置かれるということは、常に相手から狙われるということでもある。

黄金世代の名残を持つベルギーにとって、グループステージはただ勝ち抜けばいいだけではない。
新しいチームとして、どのような姿を見せるのか。
そこも問われる。

赤い悪魔の再出発

ベルギー代表には、少し不思議な魅力がある。

国の大きさからすれば、ここまでの選手が一度に集まったこと自体が特別だった。
その黄金世代は、世界を本気で狙った。
2018年には3位になった。
だが、優勝には届かなかった。
そして2022年には、静かにグループステージで消えた。

普通なら、そこで一つの物語は終わる。

しかし、ベルギーはまだ終わっていない。

デ・ブライネがいる。
ルカクがいる。
クルトワがいる。
ティーレマンスが主将としてチームを引っ張る。
ドクやオナナのような新しい力もある。

過去の記憶を背負いながら、次のチームを作る。
これは簡単ではない。懐かしさに引っ張られすぎてもいけないし、過去を急に捨てすぎてもいけない。

ベルギーは、今ちょうどその難しい場所に立っている。

赤い悪魔は、再び世界の舞台に立つ。
それは黄金世代の最後の余韻なのか。
それとも、新しいベルギー代表の始まりなのか。

グループGの戦いは、その答えを少しずつ見せてくれるはずである。

赤いユニフォームが、北米のピッチに現れる。
そこには、2018年の輝きと、2022年の悔しさが重なっている。

ベルギー代表は、もう一度、自分たちの物語を進めようとしている。
その赤が、今度はどこまで鮮やかに残るのか。静かに見届けたい。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次