カナダの旅が、ここで終わった。
決勝トーナメント第2回戦。勝てばベスト8、負ければ大会を去る。グループリーグを越え、決勝トーナメント1回戦も越えてきた国だけが立てる場所である。そこまで来たこと自体が、すでにひとつの物語だった。
だが、その物語をさらに先へ進めたのはモロッコだった。カナダを3-0で下し、準々決勝への扉を開いた。
前半のカナダは、決して悪くなかった。むしろ、開催国としての意地を前面に出していた。自分たちから前へ出て、相手に圧力をかけ、スタンドの空気も味方につけようとしていた。0-0で折り返した時点では、カナダにも十分に道は残されていた。
しかし、ワールドカップの決勝トーナメントは、残酷なほどに一瞬で景色が変わる。
50分、モロッコが先制する。決めたのはアゼディン・ウナヒである。均衡が破れた瞬間、試合の重心は大きくモロッコへ傾いた。カナダは追いかける側になり、モロッコは待つだけではなく、次の一撃を狙える側になった。
この先制点が、試合の表情を変えた。
カナダは諦めていたわけではない。だが、前半にあった勢いは少しずつ削られていった。追いつかなければならない時間が増えるほど、焦りも出る。攻めたい。しかし、無理に前へ出れば、モロッコの速さと落ち着きに背後を突かれる。その迷いの中で、試合はモロッコのものになっていった。
82分、再びウナヒが決めた。これで0-2である。
この2点目は大きかった。1点差なら、まだ最後の押し込みに希望が残る。だが2点差になると、カナダは得点だけでなく、時間とも戦わなければならなくなる。選手たちの足が止まったというより、背負うものが急に重くなったように見えた。
そして後半アディショナルタイム、スフィアン・ラヒミが3点目を決める。スコアは0-3。延長にもPK戦にも持ち込ませず、モロッコがはっきりと試合を閉じた。
モロッコは、強い勝ち方をした。前半は苦しい時間もあった。カナダに押し込まれ、思うように試合を進められない場面もあった。それでも崩れなかった。耐える時間を過ごし、後半に入って決めるべき場面で決めた。派手な支配ではなく、勝ち抜くための現実的な強さである。
2022年大会で準決勝まで進んだ国が、2026年にもまたベスト8へ届いた。あの快進撃が一度きりの夢ではなかったことを、モロッコはこの試合で示した。ワールドカップの決勝トーナメントで続けて勝ち残ることは簡単ではない。勢いだけではできない。経験、我慢、決定力、そのすべてが必要になる。
出典:Yahoo!ニュース – Yahoo! JAPAN
一方で、カナダの敗退もまた、ただの敗戦として片づけたくない。
開催国として迎えた大会で、カナダはグループリーグを越え、決勝トーナメント1回戦も勝ち抜いた。自国の観客の前で、ワールドカップの物語をここまで伸ばした。その事実は消えない。0-3というスコアだけを見れば完敗である。だが、そこに至るまでの歩みまで、同じスコアで塗りつぶしてしまう必要はない。
選手たちは勝つつもりで戦っていた。モロッコを倒し、ベスト8へ進むつもりでピッチに立っていた。その思いが足りなかったわけではない。ただ、決勝トーナメントのこの段階では、思いだけでは届かない瞬間がある。ほんの少しの精度、ほんの少しの落ち着き、そして決め切る力。その差が、最後には大きなスコアとなって現れた。
試合後、モロッコは次の扉へ向かう。準々決勝の相手はフランスである。2022年大会の準決勝を思い出させる顔合わせでもある。あの時、モロッコの夢を止めたのはフランスだった。今度はベスト8の舞台で、再びその相手と向き合うことになる。
カナダはここで去る。だが、去り際は決して小さくない。開催国としての重圧を背負い、自分たちのサッカーを見せ、初めての景色をいくつも開いた大会だった。敗れたからといって、その道のりまで消えるわけではない。
出典:サッカーダイジェストWeb
0-3という結果の向こうに、モロッコの成熟と、カナダの成長が並んでいた。
ワールドカップは続く。モロッコの夢も続く。
そしてカナダの物語は、ここでいったん静かに幕を下ろした。



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