日本はブラジルへ。決勝トーナメントの扉が開いた ワールドカップ2026・決勝トーナメント組み合わせ決定

グループリーグが終わった。

長かったようで、終わってしまえばあっという間である。48か国が並んだ大会は、各組の最終戦を経て、ようやく決勝トーナメントの形を見せた。ここから先は、もう勝ち点計算ではない。得失点差でもない。目の前の相手に勝てば進み、負ければ帰る。それだけの世界になる。

ワールドカップは、ここから表情を変える。

グループリーグでは、負けても次があった。引き分けにも意味があった。3位チームの成績比較という、長い待ち時間もあった。だが、決勝トーナメントでは、その猶予が消える。90分で決まらなければ延長へ行き、それでも決まらなければPK戦へ行く。ひとつのミス、ひとつのセーブ、ひとつの判定が、国の大会を終わらせる。

その舞台に、日本も立つ。

日本の相手は、ブラジルである。

この一文だけで、胸の奥が少しざわつく。グループFを2位で通過した日本は、グループCを首位で抜けたブラジルと対戦することになった。オランダ、スウェーデン、チュニジアと戦ったグループリーグを無敗で終えた日本に、いきなりサッカー王国が待っている。

決勝トーナメント1回戦には、他にも興味深い組み合わせが並んだ。

南アフリカ対カナダ。初の決勝トーナメントへ進んだ南アフリカと、開催国の一角として勝ち上がったカナダがぶつかる。オランダ対モロッコは、グループリーグで強さを見せた両国の対戦である。ドイツ対パラグアイ、フランス対スウェーデン、コートジボワール対ノルウェーも、それぞれ違う重みがある。

アメリカはボスニア・ヘルツェゴビナと戦う。開催国として首位通過したアメリカが、3位から勝ち上がったボスニア・ヘルツェゴビナを迎える形になる。スペインはオーストリアと対戦し、ポルトガルはクロアチアと向き合う。アルゼンチンはカーボベルデと戦う。初出場で2位通過を果たしたカーボベルデが、全勝のアルゼンチンに挑む構図も、ワールドカップらしい。

ベルギー対セネガル、オーストラリア対エジプト、コロンビア対ガーナ、スイス対アルジェリア。どの試合にも、グループリーグをくぐり抜けてきた国の理由がある。勝ち点4で残った3位チームもあれば、最後の大勝で道を開いたチームもある。3位から入った国は、ただのおまけではない。大会の中で、どうにか自分たちの場所をつかんだ国である。

その中で、日本対ブラジルは、どうしても特別に見える。

もちろん、ブラジルは強い。ワールドカップの歴史そのもののような国である。黄色いユニフォームを見るだけで、過去の名場面が浮かんでくる。何度も世界の頂点に立ち、いつの時代にもスターを生んできた国だ。日本にとって、簡単な相手であるはずがない。

出典:FIFA公式

だから、世の中では「最悪の相手を引いた」という声も出るだろう。

たしかに、勝ち上がりだけを考えれば、ブラジルは避けたかった相手かもしれない。もっと組みやすい相手がいたのではないか。首位通過していれば、別の道があったのではないか。そう考えるのは自然である。トーナメントでは、相手運も大きい。ブラジルと当たることを、厳しいと見る人は多いはずだ。

けれど、ワールドカップは4年に一度の大会である。

しかも、決勝トーナメントでブラジルと戦える機会など、そう何度もあるものではない。親善試合ではない。強化試合でもない。本番のワールドカップ、負ければ終わりの舞台で、日本がブラジルと向き合う。これは、怖いことであると同時に、ものすごく大きなことでもある。

中途半端な相手と戦って、じりじりした試合になり、引き分けのままPK戦で敗れる。そういう終わり方もワールドカップにはある。もちろん、それもまたサッカーである。だが、どうせ大きな舞台に立つなら、ブラジルに真正面からぶつかる方が、見ている側としてはずっと腹が決まる。

玉砕覚悟、という言葉は少し乱暴かもしれない。

けれど、そのくらいの気持ちでぶつかれる相手であることは間違いない。日本が失うものばかりの試合ではない。むしろ、世界に何を見せられるかという試合である。ブラジルを相手に、日本がどれだけ自分たちのサッカーを出せるのか。どれだけ耐え、どれだけ前へ出られるのか。その一つひとつが、次の時代の記憶になる。

周りは「どうせ負ける」と言うかもしれない。

だが、監督や選手たちは絶対にそんなふうには思っていないはずである。彼らは、ベスト16に入るためだけに大会へ来ているわけではない。ニュースでは「目標はベスト8」や「過去最高成績」といった言葉が並ぶ。もちろん、それは分かりやすい目標である。けれど、ピッチに立つ本人たちは、もっと先を見ているはずだ。

出典:THE DIGEST

優勝する気がなければ、ワールドカップには立てない。

本気で世界一を目指していなければ、ブラジルの前に立つことなどできない。口に出すかどうかは別として、選手たちは勝つために準備している。日本代表のユニフォームを着て、世界の頂点を夢見ずに戦う選手などいないと思う。

だから、見る側も腹をくくりたい。

勝てば歴史である。負ければ終わりである。だが、全力で戦って負けたなら、それはそれで仕方ない。悔しさは残るだろう。もっとできたのではないかと考える夜も来るだろう。それでも、ピッチで走り、削られ、息を切らし、最後まで戦うのは選手たちである。僕らはその試合を見届けるだけである。

応援はできる。願うこともできる。けれど、終わったあとに外から簡単に責めることはしたくない。

そのことを考えると、韓国のことが頭に浮かぶ。

韓国はグループリーグで敗退した。第1戦でチェコに勝ちながら、メキシコ、南アフリカに敗れ、3位チームの成績比較でも最後は届かなかった。勝ち点3を取りながら、決勝トーナメントには進めなかった。厳しい結果である。

その韓国代表に対して、国民やメディアから批判の声が上がっているというニュースを見ると、悲しい気持ちになる。

もちろん、期待が大きかったからこその失望なのだろう。ワールドカップに出る国では、代表チームは国の感情を背負う。勝てば称えられ、負ければ責められる。それもまた、サッカーの現実かもしれない。だが、選手たちが手を抜いたわけではない。誰も負けようとして負けたわけではない。

韓国の選手たちも、最後まで戦ったはずである。

出典:THE ANSWER

負けたチームには負けた理由がある。うまくいかなかった部分もある。監督の判断、選手のプレー、試合運びへの批判は、サッカーの議論として存在してよい。けれど、それが選手を傷つける言葉になるなら、少し立ち止まりたくなる。

ワールドカップは、勝者だけの大会ではない。

去っていく国も、敗れた選手も、同じだけの時間をかけてこの舞台に来ている。負けた瞬間に、その努力まで消えるわけではない。国の期待に届かなかったからといって、すべてを否定されるべきではない。

日本がブラジルに勝つかどうかは分からない。

正直に言えば、ものすごく難しい試合である。相手はブラジルである。少しの隙が失点になる。耐える時間は長くなるかもしれない。日本が良い入りをしても、個の力で一気に壊される可能性もある。それくらいの相手である。

それでも、だからこそ見たい。

出典:FIFA公式

ブラジル相手に、日本がどう戦うのか。世界の強豪に対して、今の日本がどこまで立てるのか。勝ち筋を探し、怖がらずに前へ出て、最後まで諦めない姿を見たい。これは「どうせ負ける試合」ではない。「勝つために全力を尽くす試合」である。

ワールドカップの決勝トーナメントは、夢を見るための場所である。

現実を見れば、ブラジルは強い。歴史を見ても、ブラジルは大きい。だが、試合が始まれば、ピッチにいるのは11人と11人である。名前ではなく、90分で決まる。そこに、サッカーの救いがある。

日本はブラジルへ向かう。

最悪の相手だと言うこともできる。最高の相手だと言うこともできる。どちらも間違いではない。だが、せっかくワールドカップの決勝トーナメントでブラジルと戦えるのなら、僕は後者として見たい。

大きすぎる相手に、全力でぶつかる。

勝てば歴史。負けても、全力で戦ったなら、その試合はきっと残る。

決勝トーナメントの扉は開いた。

ここから先は、もう順位表ではない。ひとつの試合、ひとつの国、ひとつの夜である。日本とブラジルの90分が、どんな記憶になるのか。怖さもある。楽しみもある。

それでも、こういう相手と戦うために、ワールドカップはあるのだと思う。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次