グループGでは、ここまでベルギー、エジプト、イランを見てきた。
ベルギーは、黄金世代の余韻を残しながら再出発する赤い悪魔である。
エジプトは、アフリカの古豪として、サラーとともに新しい扉を開こうとするファラオである。
イランは、アジアの強豪として、チーム・メッリの誇りを背負いながら決勝トーナメントの壁に挑む国である。
そのグループGの最後に見るのが、ニュージーランド代表である。
ニュージーランドと聞くと、まず思い浮かぶのはラグビーかもしれない。
黒いユニフォームのオールブラックス。試合前のハカ。世界的な強豪としての存在感。ニュージーランドのスポーツ文化を語る時、どうしてもラグビーの影は大きい。
出典:BBC
その一方で、サッカー代表は「オールホワイツ」と呼ばれる。
黒ではなく、白である。
この対比が面白い。
国の中で圧倒的な存在感を持つラグビーの隣で、白いユニフォームのサッカー代表が、静かに世界の舞台へ向かう。
ニュージーランド代表は、ワールドカップの常連国ではない。
しかし、少ない出場の中で、不思議と記憶に残るチームでもある。
基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 国名 | ニュージーランド |
| 代表チームの愛称 | オールホワイツ |
| 大陸連盟 | OFC |
| ワールドカップ出場 | 3回目 |
| 初出場 | 1982年スペイン大会 |
| 過去の出場 | 1982年、2010年 |
| 最高成績 | グループステージ |
| 2022年カタール大会 | 大陸間プレーオフで敗退 |
| 2026年大会予選 | OFC予選を突破 |
| 監督 | ダレン・ベイズリー |
| グループGの相手 | イラン、ベルギー、エジプト |
オセアニアから世界へ出る難しさ
ニュージーランド代表を考える時、まず大きいのは「オセアニア」という立場である。
ヨーロッパや南米のように、日常的に強豪国と真剣勝負を重ねる環境ではない。アジアやアフリカのように、本大会出場をかけて多くの国が激しく競り合う地域とも少し違う。オセアニアは、地理的にもサッカーの競争環境としても、世界の中心から距離がある。
かつてオーストラリアがOFCにいた時代は、ニュージーランドにとって本大会への道はさらに厳しかった。オーストラリアがAFCへ移ってからは、OFC内でニュージーランドが中心的な立場になったが、それでもワールドカップへ出ることは簡単ではなかった。
大陸間プレーオフが待っていたからである。
2010年大会では、ニュージーランドはプレーオフを勝ち抜いて本大会へ出場した。
2014年大会へ向かう道ではメキシコに敗れた。
2018年大会へ向かう道ではペルーに敗れた。
2022年大会へ向かう道ではコスタリカに敗れた。
あと一歩の場所まで行きながら、世界の扉の前で止められる。
ニュージーランド代表には、そういう悔しさが積み重なっている。
だからこそ、2026年大会への出場には意味がある。
48チームに拡大された大会の中で、オセアニアの代表として、オールホワイツが再び世界の舞台に戻ってくるのである。
1982年、初めてのワールドカップ
出典:FIFA公式
ニュージーランドが初めてワールドカップに出場したのは、1982年スペイン大会だった。
この大会でニュージーランドは、ブラジル、ソ連、スコットランドと同じグループに入った。
今振り返っても、かなり厳しい組である。
結果は3戦全敗。
世界の壁は高かった。
だが、初めてワールドカップに出る国にとって、その経験は数字だけでは測れない。世界の強豪と同じ大会に立つ。国名がワールドカップの舞台に刻まれる。それだけでも、大きな一歩である。
ニュージーランドは、1982年の後、長くワールドカップから遠ざかった。
次に戻ってくるまでには、28年という時間が必要だった。
2010年、無敗で去った不思議な記憶
出典:FIFA公式
ニュージーランド代表を語る上で、最も印象深いのは2010年南アフリカ大会である。
この大会で、ニュージーランドはイタリア、パラグアイ、スロバキアと同じグループに入った。
そして、3試合すべて引き分けた。
スロバキアと1-1。
イタリアと1-1。
パラグアイと0-0。
勝利はなかった。
しかし、敗戦もなかった。
2010年大会で、ニュージーランドは無敗のままグループステージで敗退した。
これは、ワールドカップ史の中でもどこか不思議な記憶である。
優勝したわけではない。
決勝トーナメントに進んだわけでもない。
だが、「無敗で大会を去った国」として、ニュージーランドは確かに記憶に残った。
特に、前回王者イタリアと引き分けた試合は大きかった。
世界王者を相手に、オールホワイツは怯まなかった。守り、走り、粘り、勝ち点を手にした。
ワールドカップには、こういう記憶がある。
勝ち上がったチームだけが大会を作るわけではない。
小さな国、出場機会の少ない国が、強豪国を相手に粘り抜く。
その姿が、見る人の中に残る。
ニュージーランドの2010年大会は、まさにそういう大会だった。
2010年以降の長い遠回り
2010年のあと、ニュージーランドはワールドカップ本大会に戻れなかった。
2014年はメキシコとの大陸間プレーオフで敗れた。
2018年はペルーとのプレーオフで敗れた。
2022年はコスタリカとのプレーオフで敗れた。
どの道も簡単ではなかった。
オセアニアを勝ち抜いても、その先に別大陸の強豪が待っている。そこを越えなければ本大会には届かない。ニュージーランドにとって、ワールドカップはいつも遠い場所にあった。
それだけに、2026年大会への出場は、久しぶりの帰還である。
2010年以来、16年ぶりのワールドカップである。
長く待ったサポーターにとって、オールホワイツが本大会に戻ってくること自体が大きな出来事だろう。
2026年、広がった扉と新しい挑戦
2026年大会は、出場国が48に拡大された大会である。
この拡大によって、オセアニアにも本大会への道が広がった。
ニュージーランドはOFC予選を勝ち抜き、再び世界の舞台へ戻ってきた。
出典:FIFA公式
もちろん、出場枠が広がったからといって、本大会での戦いが簡単になるわけではない。
むしろ、ここからが本当の勝負である。
グループGには、ベルギー、エジプト、イランがいる。
どの国も、ニュージーランドより国際大会での経験が豊富だ。ベルギーは2018年の3位国であり、エジプトにはサラーがいる。イランはアジアの強豪であり、4大会連続出場の安定感を持つ。
その中にニュージーランドが入る。
おそらく、多くの人はニュージーランドを挑戦者として見るだろう。
グループの中では、一番厳しい立場に置かれるかもしれない。
しかし、ワールドカップでは、その挑戦者が流れを変えることがある。
2010年のニュージーランドがそうだった。
強豪を相手に引き分ける。
勝ち点を奪う。
相手を焦らせる。
それだけで、グループ全体の空気は変わる。
ニュージーランドに求められるのは、派手な勝ち方ではないかもしれない。
まずは粘ること。
簡単に崩れないこと。
相手に「思ったより嫌なチームだ」と感じさせること。
そこから、チャンスは生まれる。
クリス・ウッドという大きな柱
出典:theWORLD(ザ・ワールド)
今のニュージーランド代表で、最も名前を知られている選手は、クリス・ウッドだろう。
長くイングランドのクラブで戦ってきたストライカーであり、空中戦、身体の強さ、ゴール前の存在感を持つ選手である。ニュージーランド代表にとっては、攻撃の柱であり、精神的な支えでもある。
ワールドカップのような大会では、前線に基準点があることは大きい。
苦しい時間が続いた時、ロングボールを収める選手がいる。
セットプレーで相手に圧力をかけられる選手がいる。
一つのクロス、一つのこぼれ球で得点を狙える選手がいる。
クリス・ウッドは、そういう存在である。
ニュージーランドがグループGで勝ち点を取るためには、守備の粘りと同じくらい、前線での一発が重要になる。そこでウッドがどれだけ存在感を出せるかは、大きな鍵になるはずである。
また、トミー・スミスのような経験ある選手もいる。
2010年大会を知る選手が、2026年の舞台にも立つ可能性がある。これも、ニュージーランド代表の物語としては美しいつながりである。
2010年の無敗の記憶を知る選手が、16年後のワールドカップで新しい世代と一緒に戦う。
代表サッカーには、こういう時間の重なりがある。
グループGで待つイラン、エジプト、ベルギー
ニュージーランドの初戦はイランである。
この試合は、グループGの流れを左右する重要な一戦になるだろう。
イランはアジアの強豪であり、守備も堅く、前線にはタレミやアズムンのような危険な選手がいる。ニュージーランドにとっては、まずこの試合でどれだけ我慢できるかが問われる。

次にエジプト。
サラーを擁するアフリカの古豪である。エジプトもまた、ワールドカップでまだ決勝トーナメントに進んだことがない。だからこそ、ニュージーランド戦では勝ち点3を狙ってくるはずである。

そしてベルギー。
グループの中で最も実績のある国である。デ・ブライネ、ルカク、クルトワといった名前が並ぶチームに対して、ニュージーランドがどこまで粘れるか。もし勝ち点を奪うようなことがあれば、それは大きなニュースになる。

ニュージーランドにとって、どの試合も難しい。
だが、どの試合も完全に閉ざされているわけではない。
守備を固める。
空中戦で競る。
セットプレーを大事にする。
クリス・ウッドの一発に懸ける。
そして、最後まで集中を切らさない。
そういう戦い方ができれば、2010年のように相手を苦しめることはできる。
オールホワイツが残すもの
出典:FIFA公式
ニュージーランド代表は、ワールドカップ優勝候補ではない。
それは誰もがわかっている。
グループGでも、下馬評は高くないだろう。
しかし、ワールドカップは優勝候補だけの大会ではない。
大きな国も、小さな国も、強豪も、挑戦者も、同じピッチに立つ。
そこで何を残すか。
どんな試合をするか。
どんな記憶を持ち帰るか。
ニュージーランド代表には、2010年の無敗という記憶がある。
勝ち上がれなかったのに、忘れられない大会がある。
2026年、オールホワイツは再び世界の舞台に戻る。
その白いユニフォームは、ラグビーの黒とは違う形で、ニュージーランドの誇りを背負っている。
ベルギー、エジプト、イランという難しい相手の中で、どこまで粘れるのか。
2010年のように、また誰かの計算を狂わせることができるのか。
あるいは、今度こそ初めての決勝トーナメントへ進むことができるのか。
ニュージーランド代表の挑戦は、派手ではないかもしれない。
だが、静かに見届けたくなるものがある。
南太平洋から来た白いチームが、北米のピッチでどんな足跡を残すのか。
オールホワイツの新しい物語を、落ち着いて見届けたい。







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