グループDの最初に取り上げたのは、開催国アメリカ代表だった。
アメリカは、自国開催の期待を背負い、クリスチャン・プリシッチらの世代で大会に向かう。サッカーの国として、どこまで存在感を示せるか。そんな視線を集めるチームである。
そのアメリカと同じグループに入ったのが、今回取り上げるパラグアイ代表である。
パラグアイは、ブラジルやアルゼンチンのような派手な名前で語られる国ではない。南米の中でも、強烈なスター軍団というより、粘り強く、簡単には倒れないチームという印象がある。
しかし、ワールドカップにおいて、この「簡単には倒れない」という性格はとても厄介である。
相手からすれば、なかなか崩れない。焦って攻めれば、逆に少ないチャンスを突かれる。派手さではなく、試合を重くする力がある。パラグアイ代表には、そんな南米らしいしぶとさがある。
出典:FIFA公式
2026年大会は、パラグアイにとって久しぶりのワールドカップである。
最後に本大会に出場したのは、2010年南アフリカ大会だった。そこから2014年、2018年、2022年と3大会連続で出場を逃してきた。サッカーの時間で16年というのは長い。代表チームの顔ぶれも、サッカーの戦い方も、国際舞台の空気も変わってしまう。
それでも、パラグアイは戻ってきた。
南米予選を勝ち抜き、再び世界の舞台に立つ。その事実だけでも、この国にとっては大きな意味がある。
パラグアイ代表の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 国名 | パラグアイ共和国 |
| 大陸連盟 | CONMEBOL |
| 愛称 | ラ・アルビロハ |
| ワールドカップ出場回数 | 9回目 |
| 最高成績 | ベスト8(2010年大会) |
| 2026年大会 | 南米予選を突破して出場 |
| 監督 | グスタボ・アルファロ |
| 主な選手 | グスタボ・ゴメス、ミゲル・アルミロン、アントニオ・サナブリア、ディエゴ・ゴメス、フリオ・エンシソ |
| グループ | D組 |
| 同組 | アメリカ、オーストラリア、トルコ |
16年ぶりのワールドカップ
パラグアイ代表を語るとき、まず触れたいのは、やはり16年ぶりの本大会復帰である。
パラグアイは、1998年、2002年、2006年、2010年と4大会連続でワールドカップに出場していた時期がある。あの頃のパラグアイは、南米予選を勝ち抜いてくる常連国のひとつだった。
特に印象深いのは、堅い守備と粘り強い試合運びである。大勝するチームというより、相手に楽をさせないチーム。どの国が相手でも、簡単には勝たせないチームだった。
1998年フランス大会
出典:FIFA公式
しかし、その後は本大会から遠ざかった。
南米予選は、世界でも特に厳しい予選のひとつである。ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、コロンビア、チリ、エクアドルなど、どの国にも力がある。ホームでもアウェーでも、簡単な試合はほとんどない。
その中で一度流れを失うと、立て直すのは難しい。パラグアイもまた、長い停滞の時期を過ごした。
だからこそ、2026年大会への出場は、単なる「久しぶりの出場」ではない。失われた時間を取り戻すような大会であり、もう一度パラグアイの名前を世界に思い出させる大会でもある。
2010年、南アフリカでのベスト8
パラグアイのワールドカップ最高成績は、2010年南アフリカ大会のベスト8である。
この大会でパラグアイは、日本とも対戦した。決勝トーナメント1回戦、日本対パラグアイ。試合は0-0のまま延長戦でも決着がつかず、PK戦へ進んだ。
日本にとっては悔しい記憶である。駒野友一のPKがクロスバーに当たり、パラグアイが勝ち抜いた。日本サッカーの歴史の中でも、いまなお語られる試合である。
一方で、パラグアイにとっては、ワールドカップで初めてベスト8へ進んだ大きな一戦だった。
準々決勝ではスペインと対戦した。のちに優勝するスペインを相手に、パラグアイは最後まで粘った。試合は0-1で敗れたが、あのスペインに対して簡単には崩れなかった。
2010年のパラグアイは、世界を驚かせる華やかな攻撃チームではなかった。しかし、相手を苦しめ、試合を緊張感のあるものにする力があった。
2010年南アフリカ大会
出典:FIFA公式
その記憶は、2026年大会を見るうえでも大事である。
パラグアイという国は、強豪国のように常に注目されるわけではない。だが、一度大会に戻ってくれば、相手にとって嫌な存在になれる国である。
グスタボ・アルファロがもたらした立て直し
現在のパラグアイ代表を率いるのは、アルゼンチン人監督のグスタボ・アルファロである。
アルファロは、クラブチームでも代表チームでも経験を積んできた指導者である。エクアドル代表を率いて2022年カタール大会に出場した経験もある。南米のサッカーをよく知り、短期決戦の難しさも知っている監督である。
出典:FIFA公式
パラグアイは、2026年大会の南米予選で苦しい時期もあった。だが、アルファロのもとでチームは立て直され、最終的に本大会への切符を手にした。
アルファロのチームに期待されるのは、まず守備の安定である。
パラグアイらしさは、やはり簡単に崩れないことにある。相手にボールを持たれても、最後のところで体を張る。試合の流れが悪くても、失点を最小限に抑える。そうした粘りが、このチームの土台になる。
ワールドカップでは、攻撃力だけで勝ち上がることは難しい。特にグループリーグでは、勝ち点1を拾う力、接戦を落とさない力が重要になる。パラグアイは、まさにその部分で強みを出せるチームである。
主役は守備だけではない
左からFWミゲル・アルミロン、MFディエゴ・ゴメス、DFディエゴ・レオン、DFオマル・アルデレテ
出典:ゲキサカ
パラグアイというと、どうしても守備的なチームという印象が先に立つ。
だが、2026年大会のパラグアイには、前線や中盤にも楽しみな選手がいる。
まず、経験とリーダーシップの中心になるのがグスタボ・ゴメスである。パラグアイ代表の守備を支える存在であり、最終ラインの柱である。ワールドカップのような舞台では、派手なプレー以上に、後ろでチームを落ち着かせる選手の存在が大きい。
攻撃面では、ミゲル・アルミロンの名前が挙がる。プレミアリーグでも知られる選手で、スピードと運動量を持つ。パラグアイが守備から攻撃へ移るとき、彼の推進力は大きな武器になる。
アントニオ・サナブリアは、前線で体を張れる選手である。パラグアイの攻撃は、細かくつなぐだけではなく、前線で起点を作れるかどうかも重要になる。サナブリアのような選手がボールを収められれば、チーム全体が押し上がる時間を作れる。
若い世代では、ディエゴ・ゴメスやフリオ・エンシソのような選手にも注目したい。特にエンシソは、創造性と個の力を感じさせる選手である。守備のチームという印象の中に、こうした若い才能が加わることで、パラグアイはただ耐えるだけのチームではなくなる。
もちろん、ワールドカップ本大会ではコンディションや起用法によって状況は変わる。だが、パラグアイには、守備だけでなく、少ないチャンスを試合の流れに変える選手がいる。
それが、このチームの怖さである。
グループDでのパラグアイ
パラグアイが入ったグループDには、アメリカ、オーストラリア、トルコがいる。
まず、アメリカは開催国である。ホームの大声援を受け、プリシッチらを中心とした世代で戦う。パラグアイにとって、アメリカ戦は相手の勢いをどう受け止めるかが大きなポイントになる。

開催国は、初戦から前へ出てくる可能性がある。観客もそれを望む。だが、パラグアイにとっては、そこに隙が生まれるかもしれない。耐えて、焦らせて、少ないチャンスを狙う。そういう展開に持ち込めれば、パラグアイらしい試合になる。
オーストラリアは、体の強さと走力を持つチームである。簡単に崩れないという意味では、パラグアイと似た部分もある。お互いに球際で譲らない、重い試合になるかもしれない。こういう試合で勝ち点をどう取るかが、グループ突破には大きい。

トルコは、技術と勢いを持つ難しい相手である。個の力で試合を動かせる選手がいて、感情の乗ったときの迫力もある。パラグアイとしては、トルコの勢いに付き合いすぎず、試合を落ち着かせることが必要になる。

このグループDは、アメリカが開催国として注目される一方で、どの国にも突破の可能性がある組である。パラグアイは、その中で派手な本命ではないかもしれない。だが、最も相手にしたくない国のひとつにはなり得る。
小さく見えて、大きな壁になる国
ワールドカップでは、名前の大きさだけで試合は決まらない。
パラグアイは、世界的なスターを何人も並べるチームではない。ブラジルやアルゼンチンのように、攻撃の華やかさで大会を彩る国でもない。
しかし、ワールドカップで本当に嫌な相手とは、必ずしも派手な相手ではない。
点が取れない。リズムが出ない。相手は焦らない。時間だけが過ぎていく。気づけば、ひとつのセットプレー、ひとつのカウンター、ひとつのミスで試合が動いている。
パラグアイは、そういう試合を作れる国である。
16年ぶりに戻ってくるこのチームは、懐かしさだけで大会に出るわけではない。南米予選を勝ち抜いた現実の力を持って、2026年の舞台に立つ。
グループDの中で、パラグアイは主役として大きく語られる存在ではないかもしれない。だが、主役を困らせる存在にはなれる。
アメリカのホーム開催の熱気、オーストラリアの粘り、トルコの勢い。その中で、パラグアイがどのように自分たちの時間を作るのか。
16年ぶりに帰ってくる南米のしぶとい挑戦者を、静かに見てみたい。






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