準々決勝の2試合目は、スペインとベルギーである。
このカードには、名前だけで少し背筋が伸びるような重みがあった。スペインはポルトガルを1-0で退けてここへ来た。ベルギーはアメリカを4-1で下し、攻撃の力を見せてベスト8へ進んできた。どちらも、ここで止まるには惜しいチームである。
だが、準々決勝とはそういう場所でもある。
惜しいチームが消えていく。強いチーム同士がぶつかり、どちらかが必ず荷物をまとめなければならない。勝者の足音と敗者の沈黙が、同じピッチに残る。ワールドカップの終盤には、そういう冷たさがある。
結果は、スペイン 2-1 ベルギー。
スペインが勝ち、準決勝へ進んだ。次の相手はフランスである。フランスがモロッコを2-0で下したあと、この山のもう一つの答えをスペインが出した形になった。
試合は、スペインらしい入り方だった。
ボールを動かし、相手を揺らし、少しずつ場所を探す。ラミン・ヤマルやダニ・オルモが関わりながら、ベルギーの守備を押し込んでいく。ベルギーも簡単には崩れない。クルトワが後ろにいる安心感は大きく、スペインの攻撃を受けながら、どこか一発の反撃を待っているようでもあった。
30分、スペインが先に扉を開けた。
ファビアン・ルイスである。右サイドから崩し、ダニ・オルモのシュートをクルトワが防いだところ、そのこぼれ球を押し込んだ。スペインが積み重ねていた時間が、ようやく得点という形になった。
このままスペインの流れで進むかと思われたが、ベルギーは黙っていなかった。
41分、シャルル・デ・ケテラーレが決める。ティモシー・カスターニュからのボールを頭で合わせ、試合を1-1に戻した。ベルギーにとっては、少ない機会を逃さなかった同点弾である。そしてスペインにとっては、今大会初失点でもあった。
スペインはここまで、失点しないまま勝ち進んできた。無失点のまま大会を進むということは、見ている側が思う以上に大きな支えになる。だが、その記録はこの夜、ベルギーの一撃で止まった。
しかし、記録が止まっても、スペインそのものが止まったわけではなかった。
後半に入っても、試合は簡単には動かない。スペインがボールを持つ。ベルギーが耐える。そしてどちらにも、次の1点があまりにも大きいことがわかっている。こうなると、ピッチの上の時間は少し粘りを帯びる。時計は進んでいるのに、試合だけが重くなる。
ベルギーには不運もあった。
クルトワが負傷し、後半途中でピッチを退いた。大きな体でゴール前に立ち続けてきた守護神が、涙を見せながら交代する場面は、この試合の流れとは別に胸に残るものがあった。
出典:Yahoo!ニュース – Yahoo! JAPAN
代わって入ったのはセネ・ラメンスである。突然、ワールドカップ準々決勝の終盤を背負うことになった若いGKにとって、それはあまりにも重い時間だっただろう。
そして88分、試合を決めたのはミケル・メリーノだった。
出典:FIFA公式
パウ・クバルシの低いシュートをラメンスが処理しきれず、こぼれたところへメリーノが詰める。スペインが2-1と勝ち越した。ポルトガル戦に続く、メリーノの終盤の決勝点である。
大きな大会には、いつも不思議な役割を持つ選手が現れる。主役として語られ続けるわけではない。だが、いちばん苦しい時間に現れ、試合の最後の結び目をほどく。メリーノは、この大会のスペインにとって、そういう存在になっている。
ベルギーは最後まであきらめなかった。
ルカクを含め、前線に力を残して反撃を試みた。だが、あと一歩届かなかった。1-1で耐え続け、終盤にもう一度試合を動かす可能性はあった。けれど、その前にスペインが決めた。ワールドカップでは、その数分の差が国の旅を終わらせる。
ベルギーにとっては、痛い敗退である。
今大会のベルギーは、決して静かに消えるチームではなかった。アメリカ戦では4点を奪い、攻撃の迫力を見せた。この準々決勝でも、スペインに今大会初めての失点を与えた。スペインの無失点の扉をこじ開けたのは、ベルギーだったのである。
負けたからといって、その事実は小さくならない。
クルトワの負傷、試合前からの負傷者、途中出場GKに降りかかった重い場面。ベルギーには言い訳にできる材料もあったかもしれない。それでも、最後まで戦った。世界の上位を相手に、1-1の時間を長く保ち、準決勝の扉に手をかけた。
その扉を開けたのは、スペインだった。
スペインは16年ぶりにワールドカップ準決勝へ進む。2010年に頂点へ立った国が、またベスト4の場所へ戻ってきた。あの時とは選手も時代も違う。けれど、ボールを動かし、我慢し、最後に勝ち切る姿には、どこかスペインという国の記憶が残っている。
次はフランスである。
フランスはモロッコを下し、スペインはベルギーを下した。準決勝で、ヨーロッパの大きな2つの影がぶつかる。フランスにはエムバペがいる。スペインには、若さと技術と、終盤に現れるメリーノがいる。
ベスト8からベスト4へ。
スペインは苦しみながらも前へ進んだ。ベルギーは去る。しかし、ベルギーがこの試合で残した同点弾と粘りは、敗退のスコアの中に埋もれるものではない。勝者が進み、敗者が立ち止まる。その境目に、88分のこぼれ球があった。
ワールドカップは、時々そういう小さな跳ね返りで、国の運命を動かしてしまうのである。
主な事実確認メモ
- 試合結果:スペイン 2-1 ベルギー
- 大会:ワールドカップ2026 準々決勝
- 試合会場:ロサンゼルス・スタジアム
- 得点者:ファビアン・ルイス(30分)、シャルル・デ・ケテラーレ(41分)、ミケル・メリーノ(88分)
- スペインが準決勝進出
- 準決勝の相手:フランス
- ベルギーGKティボー・クルトワは後半途中に負傷交代
- 交代出場したGKセネ・ラメンスが終盤にシュートを処理しきれず、メリーノの決勝点につながった
- スペインは今大会初失点
- 延長戦・PK戦なし
- 退場なし
- 大きなVAR介入は確認できず



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