アルゼンチン審判団の笛の下で フランス、モロッコを越える

準々決勝に入ると、ワールドカップの空気はまた少し重くなる。

もう勢いだけでは勝ち上がれない。ここまで来た国には、それぞれの理由があり、ここで去る国にも、ここまで来ただけの物語がある。フランスとモロッコ。4年前のカタール大会準決勝でも顔を合わせた両国が、今度は2026年大会の準々決勝で再び向かい合った。

結果は、フランス 2-0 モロッコ。

フランスが勝ち、準決勝へ進んだ。得点は60分のエムバペ、65分のデンベレである。わずか5分の間に試合は大きく傾き、モロッコの長い挑戦はここで終わった。

ただ、この試合は単にフランスが強かった、というだけでは片づけられない夜でもあった。試合前から注目されていたのは、審判団である。主審ファクンド・テージョを中心に、審判団がアルゼンチン勢で構成されていた。ワールドカップの終盤、しかもアルゼンチンがまだ大会に残っている状況で、フランス戦をアルゼンチン人審判団が裁く。その事実だけで、試合前からざわつきが生まれるのは避けられなかった。

それでも、試合後のフランス紙はテージョ主審の裁きをおおむね高く評価したという。大きな混乱を招かず、接触の多い準々決勝を比較的よくコントロールした、という見方である。警戒されていたほどの大きな判定問題は起きなかった。そういう意味では、審判団もまた大きな圧力の中で試合を終えたと言える。

ただし、細かな不満がなかったわけではない。

とくに前半、フランスが得たPKの場面である。判定が確認されてからエムバペが蹴るまで、VAR確認、選手の位置の整理、ボールの置き直しなどが重なり、かなり長い時間がかかったとされる。

エムバペはその待ち時間のあとにPKを失敗した。PKは技術だけでなく、間合いの勝負でもある。待たされる時間が長くなれば、蹴る側の呼吸も乱れる。デシャン監督も、この場面の進め方には納得しきれない様子を見せたという。

出典:FIFA公式

それでも、フランスは崩れなかった。

PKを外したあとでも、試合の主導権を失わなかったところに、このチームの強さがあった。大きな大会では、先に決定機を逃した側が沈んでしまうことがある。だがフランスは違った。前半のもどかしさを抱えたままでも、試合の中で自分たちの時間を待ち続けた。

そして60分、エムバペが決める。

PK失敗の記憶を自分で消すような先制点だった。大きな選手は、失敗したあとにもう一度試合へ戻ってくる。エムバペのゴールは、フランスにとって単なる1点ではなかった。待ち続けた均衡を破る1点であり、前半から続いていた重たい空気を断ち切る1点でもあった。

その5分後、デンベレが追加点を奪う。

0-1ならば、モロッコにもまだ追いかける時間があった。しかし0-2になると、試合の見え方は一気に変わる。攻めなければならない。だが前に出れば、フランスの速さを受ける危険も増える。モロッコは苦しい場所へ押し込まれた。

出典:中日新聞

モロッコのモハメド・ワビ監督は試合後、フランスがより良いチームだったことを認めている。前半は難しく、フランスはボールをよく持ち、サイドでも中央でも問題を起こしてきた。自分たちにはアイデアやフレッシュさが足りなかった。そうした言葉には、悔しさと同時に、相手を認める潔さがあった。

この敗戦は、モロッコにとって悔しい。

2022年大会でアフリカ勢初のベスト4に進み、2026年大会でも再びベスト8まで来た。オランダを越え、カナダを倒し、もう一度世界の上位で戦う国であることを示した。フランスに敗れたからといって、その歩みが消えるわけではない。むしろ、2大会続けてここまで来たことが、モロッコの現在地をはっきり示している。

試合中には、判定への抗議や細かな不満もあった。アディショナルタイムが少なかったのではないか、コーナーキックやゴールキックの判断に小さな誤りがあったのではないか、そうした指摘も出ている。しかし、それが試合全体の結果を変えるほどのものだったとは言いにくい。モロッコ自身も、最後にはフランスの強さを認めざるを得なかった。

フランスは、静かに勝った。

派手に押し切ったというより、耐える時間を受け入れ、外したPKを引きずらず、決めるべき時間に決めた。60分、65分。そこで試合を終わらせる力があった。

出典:www.starnewskorea.com

準決勝の相手は、スペインとベルギーの勝者である。

ここから先は、どちらが来ても厳しい。だがフランスには、また一つ勝ち方の記憶が残った。PKを外しても勝つ。試合前から審判団の話題が大きくなっても勝つ。モロッコの粘りを受けても、最後には勝つ。そういうチームは、大会の終盤でますます重く見えてくる。

モロッコは去る。

だが、胸を張って去ってよい。敗れた夜は苦い。それでも、ここまで来たことは消えない。ワールドカップのベスト8に、2大会続けて名前を残した。その事実は、フランスに敗れたスコアの向こう側で、静かに残り続ける。

ベスト8からベスト4へ。

フランスはまた一歩、頂点へ近づいた。モロッコはその道を譲った。しかし、譲った側にも確かな足跡があった。そういう試合であった。

主な事実確認メモ

  • 試合結果:フランス 2-0 モロッコ
  • 得点者:エムバペ(60分)、デンベレ(65分)
  • フランスが準決勝進出
  • 準決勝の相手:スペイン vs ベルギーの勝者
  • 前半にフランスがPKを獲得したが、エムバペは失敗
  • PKの場面では、VAR確認や選手位置の整理などで再開まで時間がかかったと報じられた
  • 主審:ファクンド・テージョ
  • 審判団はアルゼンチン勢で構成されたと報じられた
  • フランス紙はテージョ主審の裁きをおおむね高評価。一方でPK時の長い中断、アディショナルタイムの短さ、細かな判定には不満も示した
  • 延長戦・PK戦なし
  • 退場なし

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