ベルギー、エジプトに追いつく|サラーの誕生日と、ルカク登場のラスボス感

現地日付の6/15はモハメド・サラーの誕生日である。

ベルギー対エジプトの試合を見ながら、まず頭に残ったのはそこだった。6月15日。この日、サラーは34歳になった。エジプト代表の象徴として、長く世界の前線を走り続けてきた選手である。その誕生日に、ワールドカップの初戦を迎える。

相手はベルギーである。

かつて「黄金世代」と呼ばれた国。ケヴィン・デ・ブライネ、ティボー・クルトワ、そしてロメル・ルカク。名前を並べるだけで、まだまだ迫力がある。だが、ベルギーもまた、いつまでも若いチームではない。頂点に届きそうで届かなかった時間を重ね、今大会ではもう一度、自分たちの立ち位置を示さなければならない。

一方のエジプトも、サラーという絶対的な存在を抱えながら、ワールドカップでは思うような結果を残せてこなかった。だから、この試合には両国の少し複雑な時間が重なっていた。

試合は前半、エジプトの方が印象に残った。

19分、エジプトが先制する。サラーが関わり、エマム・アシュールが見事に決めた。

出典:スポニチ Sponichi Annex

サラーの誕生日に、サラーが導いた先制点である。本人が決めたゴールではない。だが、エジプトの攻撃が彼を中心に動いていることは、画面越しにもよく伝わってきた。

34歳になっても、サラーはただのベテランではない。

走る。受ける。周りを動かす。相手の守備を引きつける。若い頃の爆発的なスピードだけで語る選手ではなくなったかもしれないが、試合の中で何をすべきかを知っている選手になっている。エジプトの先制点には、そういうサラーの成熟がにじんでいた。

ベルギーはボールを持つ時間こそあったが、前半はどこか重かった。

デ・ブライネがボールに触れても、ドクが仕掛けても、最後のところでエジプトの守備が立ちはだかる。クルトワがいる。デ・ブライネがいる。それでも、ベルギーは簡単には試合を動かせなかった。エジプトは派手ではないが、よく整理されていた。サラーの誕生日を祝うように、チーム全体が集中していた。

このままエジプトが勝つのか。

後半に入っても、そんな空気が少しずつ強くなっていった。ベルギーには焦りが見え、エジプトには「これはいけるかもしれない」という気配があった。サラーの誕生日に、エジプトが強豪ベルギーを倒す。もしそうなれば、かなり美しい物語になる。

だが、そこで出てくるのがルカクである。

出典:読売新聞

66分、ロメル・ルカクがピッチに入った。正直、その瞬間の迫力がすごかった。ゲームの終盤に突然、体格も雰囲気もひと回り違う存在が現れる。まるでラスボスが後半から出てきたような感じである。ベルギーの攻撃が停滞していた分、その登場だけで画面の空気が変わった。

そして登場からわずか22秒、ほとんどファーストタッチのような形で試合が動く。

右からのクロスにルカクが入り込む。エジプト守備陣は彼の存在を意識せざるを得ない。結果として、モハメド・ハニーのオウンゴールとなり、ベルギーが同点に追いついた。公式記録ではルカクの得点ではない。けれど、あの場面を見ていると、ほとんどルカクが点を取ったように感じた。

出典:サッカーダイジェストWeb

ファーストタッチでゴールを奪った、というよりも、ファーストタッチで試合の重力を変えた。

それくらいの存在感だった。

それまでエジプトが丁寧に守ってきた時間を、ルカクは一瞬で揺らした。大きな体でゴール前に入るだけで、相手は迷う。マークがずれる。判断が遅れる。守備側からすると、そこにいるだけで厄介な選手である。ラスボス感という言葉が妙にしっくりくるのは、ルカクが単に大きいからではない。登場した瞬間に試合の景色を変えてしまうからである。

出典:www.starnewskorea.com

ベルギーは救われた。

負けていてもおかしくない試合だった。前半はエジプトの方がよく見えたし、サラーの誕生日という物語もあった。だが、ベルギーにはルカクがいた。ベンチから出てきて、ほとんど最初のプレーで同点を呼び込む。こういう選手がいること自体が、強豪国の怖さである。

一方で、エジプトにとっては悔しい引き分けだろう。

勝てる試合だった。少なくとも、勝利の匂いはかなりあった。サラーの誕生日に先制し、ベルギーを苦しめ、終盤まで主導権を手放さなかった。だからこそ、オウンゴールで追いつかれたことは痛い。自分たちの手から、勝ち点3がすり抜けていったような感覚が残ったはずである。

それでも、エジプトは十分に存在感を示した。

サラーだけのチームではない。もちろんサラーは大きい。だが、この試合ではアシュールの一撃があり、守備の粘りがあり、ベルギー相手に堂々と戦うチーム全体の姿があった。34歳の誕生日を迎えたサラーが、代表を引っ張る姿には、派手な若さとは違う重みがあった。

ベルギーにとっても、この勝ち点1は軽くない。

負ければ初戦からかなり苦しくなるところだった。ルカクの投入で何とか追いついた。だが、内容としては不安も残る。デ・ブライネを中心にボールを動かしても、決定的な形を作り切れない時間が長かった。ルカクが出てきて空気を変えたことは救いである一方、そこに頼らざるを得なかったとも言える。

グループGは、まだ始まったばかりである。

ベルギー、エジプト、イラン、ニュージーランド。初戦で勝ち点1を分け合った両国にとって、次の試合の意味はさらに大きくなる。ベルギーは立て直しが必要であり、エジプトはこの手応えを勝利につなげたい。

試合前は、ベルギーの強さを見る試合になるのかと思っていた。

だが終わってみれば、サラーの誕生日、エジプトの粘り、そしてルカク登場の迫力が残った。特にルカクのあの登場は、やはり忘れにくい。ベンチからゆっくり出てきて、最初の一撃で試合を変える。まるで終盤に現れる巨大な敵キャラのようで、味方にすれば頼もしく、相手にすれば本当に嫌な存在である。

1-1。

勝者はいなかった。だが、物語は多かった。

サラーは34歳の誕生日にエジプトを導き、ルカクは途中出場からベルギーを救った。どちらの国にも、勝ちたかった理由があった。だからこそ、この引き分けはただの引き分けではない。グループGの始まりに、少し苦く、少し濃い余韻を残す一戦だった。

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