ドイツが大勝発進|キュラソーが刻んだ、初出場国の一瞬の夢

ワールドカップには、結果だけを見ると一方的に見える試合がある。

けれど、その中にも、ちゃんと記憶に残る瞬間がある。ドイツ対キュラソーは、まさにそういう試合だった。

グループEの初戦。ドイツは7-1でキュラソーを破った。スコアだけを見れば、ドイツの圧勝である。実際、試合が終わってみれば、ドイツの力、選手層、決定力がはっきり出た一戦だった。

だが、この試合をただ「ドイツが強かった」で終わらせるのは、少しもったいない。

キュラソーにとって、これは初めてのワールドカップ本大会だった。カリブ海の小さな島国が、世界最大のサッカー大会にたどり着いた。その事実だけでも大きい。相手はドイツ。ワールドカップの歴史そのものを背負うような国である。初出場の国が、いきなりその巨人と向き合う。試合前から、そこには大きな物語があった。

試合は早い時間に動いた。

前半6分、ドイツがフェリックス・ヌメチャのゴールで先制する。大会でも最速級の先制点であり、キュラソーにとっては厳しい入りになった。ドイツは立ち上がりからテンポが速く、前線の選手たちが次々とゴールへ向かっていく。強いチームが、相手に慣れる時間を与えない。そんな始まりだった。

出典:Yahoo!ニュース – Yahoo! JAPAN

普通なら、このままドイツが押し切るだけの試合になる。

しかし、前半21分、キュラソーが一瞬だけ試合の空気を変えた。リヴァノ・コメネンシアが同点ゴールを決める。キュラソーにとって、ワールドカップ本大会での初ゴールである。

出典:Vietnam.vn

この場面は、スコア全体とは別に記憶されるべき瞬間だった。

ドイツ相手に追いつく。初出場の国が、世界の強豪を相手にゴールを奪う。ベンチが沸き、選手たちが走り寄る。その喜びには、試合の勝敗を超えた重みがあったはずである。たとえこの後に大きく突き放されることになっても、あの一点は消えない。

出典:FIFA公式

ただ、ドイツはそこで揺らがなかった。

前半38分、ニコ・シュロッターベックが勝ち越しゴールを決める。さらに前半アディショナルタイムにはカイ・ハヴァーツがPKを決め、ドイツは3-1で前半を終えた。キュラソーの夢の時間は長くは続かなかった。だが、それをすぐに現実へ戻したところに、ドイツの強さがあった。

後半に入ると、ドイツはさらにギアを上げた。

47分にジャマル・ムシアラ、68分にナサニエル・ブラウン、78分にデニズ・ウンダフ、そして88分に再びハヴァーツ。次々と得点が入り、試合は大きく開いていった。ハヴァーツは2得点を挙げ、攻撃の中心として存在感を示した。

出典:Yahoo!ニュース – Yahoo! JAPAN

7-1。

ドイツにとっては、これ以上ない白星発進である。近年のワールドカップでは、ドイツは苦い記憶を抱えてきた。2018年、2022年と続いたグループステージ敗退。その影は、今大会を迎えるうえでも消えていなかったはずである。

だからこそ、この初戦の大勝には意味がある。

もちろん、相手との力の差はあった。だが、初戦で確実に勝ち、得点を重ね、グループEの中で強いメッセージを出したことは大きい。ドイツが再び大会の中心へ戻ろうとしている。その意思表示のような試合だった。

一方で、キュラソーにとっては厳しい現実も見えた。

ワールドカップに出ることと、ワールドカップで勝つことの間には、大きな距離がある。ドイツのスピード、判断、個々の質、試合運び。ひとつひとつの差が、時間とともにスコアへ表れていった。

それでも、キュラソーはただ飲み込まれただけではなかった。初めての舞台で、初めてのゴールを決めた。しかも相手はドイツである。敗戦の悔しさの中にも、国のサッカー史に残る一点がある。そこに、この試合のもう一つの価値があった。

サッカーは残酷である。

小さな国の夢を、大きな国の力が踏み越えていくことがある。けれど同時に、たった一つのゴールが、その国の記憶を長く照らすこともある。キュラソーの同点弾は、まさにそういうゴールだった。

グループEは、ドイツ、キュラソー、コートジボワール、エクアドルの組である。ドイツはこの大勝で大きく前に出た。得失点差の面でも、心理的な面でも、初戦としては理想的な出発である。キュラソーは苦しい船出になったが、次の試合で何を残すかが問われる。

この試合を見ていると、ワールドカップの幅の広さを感じる。優勝を狙う国があり、初めて世界に名前を刻む国がある。同じピッチに立っていても、それぞれが背負っている時間はまったく違う。

ドイツは強かった。

キュラソーは、夢を一瞬だけ現実にした。

7-1というスコアは、力の差をはっきり示している。だが、前半21分の同点ゴールだけは、その大差の中でも消えない。大会の記録にはドイツの大勝が残る。けれど、キュラソーの人々の記憶には、あの一瞬の歓喜が残るのだと思う。

ワールドカップは、勝者だけの大会ではない。

この試合を見終えて、そんなことを静かに思った。

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