ワールドカップ2026出場国紹介の第10回は、モロッコ代表である。
前回からグループCに入った。第9回では、ブラジル代表を取り上げた。ブラジルはワールドカップ5度優勝の国であり、2026年大会では6度目の優勝を目指す。優勝候補であることを背負い続ける国、と書いた。
そのブラジルと、グループCの初戦で対戦するのがモロッコ代表である。
グループCは、ブラジル、モロッコ、ハイチ、スコットランドの4か国で構成されている。こうして名前を並べると、やはりブラジルが大きく見える。けれど、今のモロッコは、ただブラジルに挑むだけの国ではない。
2022年カタール大会で、モロッコは世界を驚かせた。
アフリカ勢として初めて、ワールドカップの準決勝まで進んだのである。
これは本当に大きな出来事だった。
まず、基本情報を整理しておきたい。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 国名 | モロッコ |
| 愛称 | アトラスのライオン |
| 2026年大会 | アフリカ予選を突破して出場 |
| グループ | C組 |
| 対戦相手 | ブラジル、ハイチ、スコットランド |
| W杯出場 | 3大会連続出場 |
| W杯最高成績 | 4位 |
| 最高成績の大会 | 2022年カタール大会 |
| 注目選手 | アクラフ・ハキミ、ハキム・ツィエク、ユセフ・エン=ネシリ、ソフィアン・アムラバトなど |
| 大きなテーマ | 2022年の快進撃を、一度きりの奇跡で終わらせないこと |
モロッコ代表をひと言で表すなら、私は「もう驚きではなく、実力を証明する国」と書きたくなる。
2022年大会のモロッコは、本当に印象的だった。
グループステージで強豪国を相手に堂々と戦い、決勝トーナメントでもスペイン、ポルトガルを破って準決勝まで進んだ。ワールドカップで、アフリカの国がベスト4に進む。これは、それまで誰も達成していなかったことだった。
出典:FIFA公式
モロッコの戦い方は、派手な攻撃で相手を圧倒するというより、非常に粘り強いものだった。
守るところは守る。
走るところは走る。
相手にボールを持たれても、簡単には崩れない。
そしてチャンスが来れば、一気に前へ出る。
この戦い方が、ワールドカップの舞台で見事にはまった。
ワールドカップでは、ボールを多く持つチームが必ず勝つわけではない。どれだけ守れるか。どれだけ集中を切らさないか。少ないチャンスをどれだけものにできるか。モロッコは、その大切さを世界に見せた。
特に、スペイン戦は象徴的だったと思う。
スペインはボールを持つことを得意とする国である。パスを回し、相手を動かし、主導権を握る。だが、モロッコは崩れなかった。長い時間耐え、最後まで集中を保ち、PK戦で勝った。
これは、ただの偶然ではない。
さらにポルトガル戦では、ユセフ・エン=ネシリの高いヘディングが決まった。あのゴールは、モロッコの大会を象徴する場面のひとつだった。相手が強くても、ひとつのチャンスを逃さない。その強さがあった。
出典:FIFA公式
そして、モロッコは準決勝まで進んだ。
最後はフランスに敗れ、3位決定戦でもクロアチアに敗れた。最終成績は4位である。それでも、モロッコが残したものは非常に大きかった。
「アフリカ勢はここまで行ける」
その事実を、世界に示したのである。
ただ、2026年大会のモロッコには、別の難しさがある。
2022年は、挑戦者だった。
もちろん力のあるチームではあったが、大会前から優勝候補として見られていたわけではない。相手からすれば、少し見誤った部分もあったかもしれない。モロッコは大会が進むにつれて、どんどん注目される存在になっていった。
しかし、2026年は違う。
もう、誰もモロッコを軽く見ない。
これが大きい。
2022年のモロッコは、「驚きのチーム」だった。
2026年のモロッコは、「警戒されるチーム」である。
この違いは、とても大きい。
相手はモロッコの守備の堅さを知っている。カウンターの鋭さを知っている。ハキミのスピードを知っている。アムラバトの中盤での強さを知っている。エン=ネシリの高さも知っている。
つまり、モロッコはもう隠れられない。
自分たちが強い国として見られる中で、もう一度結果を出さなければならない。
これは、前回大会より難しい部分もあると思う。
モロッコ代表の象徴的な選手といえば、まずアクラフ・ハキミである。
ハキミは、右サイドを駆け上がる力を持つ選手である。スピードがあり、攻撃にも守備にも関われる。パリ・サンジェルマンでプレーし、世界のトップレベルを知っている選手である。
出典:FOOTBALL ZONE
モロッコの試合を見るとき、ハキミの動きはとても分かりやすい。
彼が前へ出ると、チーム全体が一気に前へ押し上がる。守備から攻撃へ切り替わる瞬間、ハキミのスピードは大きな武器になる。モロッコ代表の勢いを感じたいなら、まず右サイドを見ておくとよいと思う。
ハキム・ツィエクも重要である。
出典:ゲキサカ
左足のキックに特徴があり、チャンスを作ることができる選手である。モロッコの攻撃に創造性を加える存在であり、セットプレーでも期待できる。彼の一本のパスやクロスが、試合を動かすことがある。
ソフィアン・アムラバトは、中盤の心臓のような選手である。
出典:ゲキサカ
2022年大会では、彼の守備範囲の広さ、球際の強さ、最後まで走り続ける姿が非常に印象的だった。派手なゴールを決める選手ではないかもしれない。しかし、モロッコの堅さを支えているのは、こういう選手である。
ユセフ・エン=ネシリは、前線で高さと決定力を持つ選手である。
モロッコが守って耐えたあと、少ないチャンスで点を取るには、前線に基準になる選手が必要である。エン=ネシリはその役割を担う。クロスに合わせる高さ、ゴール前での強さは、相手にとって非常に嫌なものになる。
出典:FIFA公式
モロッコ代表は、ただ守るだけのチームではない。
守備が堅い。
中盤で粘れる。
サイドにスピードがある。
前線に高さがある。
このバランスがあるから、強い相手とも戦える。
2026年大会のモロッコは、グループCに入った。
初戦はブラジルである。
これは、いきなり大きな試合である。
ブラジルはワールドカップ5度優勝の国であり、2026年大会でも優勝候補である。前回の記事でも書いたように、ブラジルは「優勝候補であることを背負い続ける国」である。そのブラジルと初戦で当たる。

モロッコにとっては、自分たちの現在地を測るにはこれ以上ない相手である。
2022年にベスト4へ行った国として、ブラジル相手にどこまでやれるか。守れるのか。カウンターを出せるのか。勝ち点を取れるのか。もしブラジル相手に勝ち点を取ることができれば、モロッコのグループ突破はかなり現実味を帯びる。
ただし、初戦でブラジルと当たる難しさもある。
ブラジルは大会の入り方に注意してくるはずである。モロッコを軽く見ることはないだろう。2022年の実績があるからこそ、ブラジルも本気で警戒してくる。
これは面白い。
2022年なら、モロッコが強豪国を驚かせる立場だったかもしれない。
しかし2026年のブラジル戦では、ブラジルもモロッコを強敵として見ている。そこに、モロッコの立場の変化がある。
次に、モロッコはスコットランドと対戦する。
スコットランドは、久しぶりにワールドカップへ戻ってくる国である。伝統があり、サポーターの熱もある。モロッコにとっては、ここで確実に勝ち点を取りたい試合になるだろう。

スコットランドは簡単な相手ではない。
体を張り、粘り強く戦う国である。モロッコもまた粘り強い国である。つまり、この試合は派手な打ち合いというより、非常に厳しい競り合いになるかもしれない。
そして最後がハイチ戦である。
ハイチは、グループCでは挑戦者の立場に見られるだろう。モロッコにとっては勝ち点3を狙いたい相手である。しかし、ワールドカップでは「勝たなければいけない試合」ほど難しい。

特にモロッコは、2022年大会で強い相手を倒す側だった。だが、2026年には、自分たちが勝つべき相手を相手にする立場にもなる。そこでもきちんと勝ち切れるかどうか。
これが、モロッコが本当の実力国になれるかどうかの試金石になる。
2026年大会のモロッコには、はっきりした問いがある。
2022年のベスト4は、一度きりの奇跡だったのか。
それとも、モロッコが本当に世界の上位を狙える国になった証明だったのか。
2026年は、その答えを出す大会になる。
ワールドカップでは、突然輝く国がある。
一大会だけ、すべてがうまくいく。守備がはまり、選手が走り、サポーターが熱狂し、勢いに乗って勝ち上がる。そういう大会は確かにある。
だが、本当に強い国は、その次の大会でも結果を出す。
一度だけではない。
続けて出る。
続けて勝つ。
相手に警戒されても、それでも勝ち点を取る。
モロッコが2026年大会で求められているのは、そこだと思う。
私は、モロッコ代表には少し特別な魅力を感じる。
ブラジルのような王者の華やかさとは違う。フランスのようなスター軍団とも違う。モロッコには、国全体がひとつになって戦うような熱がある。2022年大会で、選手たちが家族やサポーターと喜ぶ姿は、とても印象に残った。
あの大会のモロッコには、サッカーが単なる勝敗を超える瞬間があった。
国の誇り。
大陸の誇り。
移民の背景を持つ選手たちの物語。
そして、アフリカ勢として初めてベスト4に進んだという歴史。
そういうものが重なっていた。
2026年大会では、その熱をもう一度見られるだろうか。
出典:FIFA公式
ただし、同じ物語は繰り返せない。
2022年のモロッコは、2022年だけのものだった。2026年のモロッコは、新しい大会で、新しい結果を出さなければならない。
それは少し厳しいことでもある。
過去に大きな成功をしたチームは、次の大会で必ず比較される。グループステージを突破しても、「前回はベスト4だった」と言われるかもしれない。ベスト16で敗れても、「物足りない」と見られるかもしれない。
成功は、誇りであると同時に、重荷にもなる。
これは韓国代表の記事でも書いたことに近い。2002年のベスト4が韓国代表にとって大きな記憶であるように、2022年のベスト4はモロッコ代表にとって、これから長く背負う記憶になる。
モロッコは、その記憶とどう向き合うのだろうか。
もう一度、世界を驚かせるのか。
それとも、驚かせるのではなく、強い国として普通に勝つのか。
私は、後者のほうが難しく、そして面白いと思う。
2022年のモロッコは「驚き」だった。
2026年のモロッコは「証明」になる。
その違いを見ながら、モロッコ代表を追いかけたい。
グループCは、ブラジルがいることで注目される組である。しかし、モロッコの存在によって、さらに面白くなる。もしブラジルとモロッコが順当に勝ち上がるなら、グループCはかなり強い2チームを決勝トーナメントに送り出すことになる。
だが、ワールドカップは順当だけでは終わらない。
スコットランドも、ハイチも、それぞれの物語を持っている。モロッコにとって、ブラジル戦だけが大事なのではない。すべての試合で、2022年の記憶を背負いながら、2026年の結果を作らなければならない。
もう「驚き」ではなく、実力を証明する国。
モロッコ代表の2026年は、その言葉にふさわしい大会になるのだろうか。
ブラジルとの初戦から、しっかり見ておきたい。








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