優勝候補であることを背負い続ける国、ブラジル代表――ワールドカップ2026出場国紹介・第9回

ワールドカップ2026出場国紹介は、ここからグループCに入る。

グループAでは、メキシコ、南アフリカ、韓国、チェコを見てきた。グループBでは、カナダ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、カタール、スイスを取り上げた。

そしてグループCで最初に紹介するのは、ブラジル代表である。

いよいよ出てきた、という感じがする。

ワールドカップでブラジルという名前を見ると、やはり特別な気持ちになる。サッカーにそれほど詳しくなくても、ブラジルがサッカーの国であることは多くの人が知っている。黄色いユニフォーム、自由なドリブル、華やかな攻撃、ペレ、ジーコ、ロマーリオ、ロナウド、ロナウジーニョ、カカ、ネイマール。名前を挙げればきりがない。

ブラジル代表は、単なる強豪国ではない。

ワールドカップそのものの記憶と結びついている国である。

まず、基本情報を整理しておきたい。

項目内容
国名ブラジル
愛称セレソン
2026年大会南米予選を突破して出場
グループC組
対戦相手モロッコ、ハイチ、スコットランド
監督カルロ・アンチェロッティ
W杯優勝5回
優勝年1958年、1962年、1970年、1994年、2002年
2026年大会の目標6度目の優勝
注目選手ヴィニシウス・ジュニオール、ラフィーニャ、ロドリゴ、アリソン、マルキーニョスなど
大きなテーマ2002年以来の優勝を取り戻せるか

ブラジル代表をひと言で表すなら、私は「優勝候補であることを背負い続ける国」と書きたくなる。

普通の国にとって、ワールドカップ出場は大きな目標である。グループリーグ突破なら立派な成績であり、ベスト8まで進めば大きな成功になる。初勝利だけでも歴史になる国もある。

しかし、ブラジルは違う。

ブラジルは、出場するだけでは評価されない。グループリーグを突破しても、当然のように見られる。ベスト8に進んでも、そこで負ければ「失敗」と言われてしまう。

なぜなら、ブラジルだからである。

これは、かなり重いことだと思う。

ブラジルはワールドカップで5回優勝している。1958年、1962年、1970年、1994年、2002年。どの優勝にも、それぞれの時代のスターがいる。ペレの時代、1970年の美しいチーム、ロマーリオの1994年、ロナウド、リバウド、ロナウジーニョがいた2002年。

出典:FIFA公式

サッカーの歴史を振り返ると、ブラジルの名前は何度も出てくる。

だから、ブラジル代表を見る側は、つい期待してしまう。

ブラジルなら面白い試合をしてくれるだろう。
ブラジルなら勝つだろう。
ブラジルなら最後まで残るだろう。
ブラジルなら、優勝を狙うのが当たり前だろう。

だが、選手たちにとっては、それが重圧になる。

ブラジル代表は、2002年日韓大会を最後にワールドカップで優勝していない。

これは意外に長い。

2002年というと、日本と韓国でワールドカップが開催された年である。日本代表が初めて決勝トーナメントに進み、韓国代表がベスト4に進んだ大会でもある。その大会で優勝したのがブラジルだった。

ロナウド、リバウド、ロナウジーニョ。

あの攻撃陣の名前は、今でも強く記憶に残っている。特にロナウドの髪型まで思い出す人もいるかもしれない。ブラジルはあの大会で、やはりブラジルらしい強さを見せて優勝した。

しかし、それ以降は優勝から遠ざかっている。

2006年も、2010年も、2014年も、2018年も、2022年も、ブラジルは最後に届かなかった。毎回のように優勝候補として大会に入りながら、途中で敗れている。

この「優勝候補なのに優勝できない時間」が、今のブラジル代表には積み重なっている。

特に2014年のブラジル大会は、強烈な記憶として残っている。

自国開催のワールドカップで、ブラジルは準決勝まで進んだ。しかし、ドイツに1対7で敗れた。いわゆる「ミネイロンの惨劇」である。

26/06/2014.Crédito: Daniel Ferreira/CB/D.A Press. Brasil. Brasília-DF. Copa do mundo 2014. Portugal x Gana no Estádio Nacional Mané Garrincha em Brasília.
出典:ゲキサカ

サッカーの国ブラジルが、自国のワールドカップで、あれほど大きな敗戦を喫した。その衝撃は、今もブラジル代表の歴史に深く刻まれている。

2022年大会でも、ブラジルは優勝候補だった。

ネイマールを中心に、タレントはそろっていた。しかし、準々決勝でクロアチアに敗れた。

出典:FIFA公式

勝てそうで勝てない。届きそうで届かない。ブラジルほどの国でも、ワールドカップでは一つの試合で道が閉ざされる。

そこに、ワールドカップの怖さがある。

2026年大会のブラジル代表には、カルロ・アンチェロッティ監督がいる。

これも大きな話題である。

アンチェロッティは、クラブサッカーで非常に大きな実績を持つ監督である。ACミラン、チェルシー、パリ・サンジェルマン、バイエルン、レアル・マドリードなど、世界の名門クラブを率いてきた。チャンピオンズリーグでも大きな実績を残している。

出典:FIFA公式

そのアンチェロッティが、ブラジル代表を率いる。

ブラジル代表といえば、長くブラジル人監督のイメージが強かった。そこに、イタリア人の名将が入る。この組み合わせには、少し不思議な面白さがある。

ブラジルの自由さと、アンチェロッティの落ち着き。

ブラジルの攻撃力と、欧州的なバランス。

個の力と、試合を管理する力。

その二つがうまく合えば、ブラジルは非常に強いチームになるかもしれない。

2026年のブラジルには、ヴィニシウス・ジュニオールがいる。

ヴィニシウスは、現在のブラジルを象徴する選手のひとりである。スピードがあり、ドリブルがあり、相手を一対一で壊せる。左サイドでボールを持つと、何かが起こりそうな雰囲気がある。

出典:webスポルティーバ – 集英社

ブラジル代表を見るとき、ヴィニシウスのプレーは大きな見どころになる。

彼が仕掛ける。
相手を抜く。
ゴールへ向かう。
スタジアムの空気が変わる。

そういう選手がいる国は、やはり見ていて楽しい。

ラフィーニャも重要である。

出典:サッカーダイジェストWeb

バルセロナでプレーし、右サイドから仕掛けることができる選手である。2022年大会を経験し、2026年にはより成熟した選手として臨むことになる。ブラジルの攻撃には、ヴィニシウスだけでなく、複数の角度から相手を崩す力がある。

ロドリゴもいる。

出典:Goal.com

レアル・マドリードで大きな試合を経験してきた選手であり、前線の複数ポジションでプレーできる。決定的な場面で顔を出す力もある。ブラジルは、攻撃の選択肢という点ではやはり豊かである。

一方で、ブラジルが優勝するためには、華やかな攻撃だけでは足りない。

ワールドカップを勝つには、守備が必要である。試合を閉じる力が必要である。うまくいかない時間帯を我慢する力が必要である。

その点で、アンチェロッティの存在は大きいと思う。

ブラジルがブラジルらしく攻めるだけではなく、必要なときには落ち着いて守る。無理に華やかさを求めすぎず、勝つための現実的なサッカーも受け入れる。そこができるかどうかが、2026年大会の鍵になるのかもしれない。

グループCの相手を見てみる。

ブラジルは、モロッコ、ハイチ、スコットランドと同じ組に入った。

まず初戦はモロッコである。

これはいきなり面白い試合である。モロッコは2022年大会でベスト4に進んだ国である。アフリカ勢として初めてワールドカップ準決勝に進んだチームであり、守備の堅さとカウンターの鋭さで世界を驚かせた。

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ブラジルにとって、初戦から簡単な相手ではない。

しかも、モロッコはただの挑戦者ではない。すでに前回大会で大きな結果を出している国である。ブラジルが優勝候補として大会に入るなら、こういう相手をしっかり倒せるかどうかが問われる。

次にハイチと対戦する。

ハイチは、グループCの中では最も挑戦者の立場に見られるだろう。ブラジルにとっては勝ち点3を取らなければならない試合になる。しかし、こういう試合こそ難しいことがある。

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勝って当然と思われる試合ほど、先制点が入らないと焦りが出る。相手が守ってくると、なかなか崩せない。ブラジルのような国は、常に「勝って当然」という空気とも戦わなければならない。

最後はスコットランドである。

スコットランドは久しぶりにワールドカップへ戻ってくる国である。

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伝統があり、サポーターの熱もある。ブラジルとスコットランドの対戦には、過去のワールドカップの記憶もある。1998年フランス大会の開幕戦で、ブラジルはスコットランドと対戦している。

2026年大会のグループCは、ブラジルにとって楽なようで、油断できない組である。

モロッコは前回ベスト4。
ハイチは挑戦者として思い切ってくる。
スコットランドは長く待った復帰の大会である。

ブラジルが普通に力を出せば、グループ突破の本命であることは間違いない。だが、ブラジルには普通以上のものが求められる。

勝つだけではなく、内容も見られる。

ここがブラジル代表の大変なところである。

他の国なら、1対0で勝てば十分に評価されるかもしれない。しかし、ブラジルが1対0で堅く勝つと、「ブラジルらしくない」と言われることがある。逆に派手に攻めて守備が崩れると、「勝つための現実味が足りない」と言われる。

つまり、ブラジルは勝ち方まで問われる国である。

これはかなり難しい。

美しく勝て。
楽しく勝て。
それでいて、確実に優勝しろ。

そういう無茶な期待を、ブラジル代表はずっと背負ってきたのだと思う。

しかし、今のワールドカップで優勝するには、ただ美しいだけでは足りない。

近年の優勝国を見ても、守備、組織、試合運び、交代策、メンタルの強さが必要である。華やかな個人技だけで勝ち切れる時代ではない。ブラジルも、その現実と向き合わなければならない。

それでも、ブラジルにはブラジルでいてほしいという気持ちもある。

これは見る側のわがままかもしれない。

堅実に勝つブラジルも強い。だが、やはりブラジルには、どこかで心が弾むようなプレーを期待してしまう。意味のあるフェイント、軽やかなパス、思い切ったシュート、相手を置き去りにするドリブル。そういう場面があると、「ああ、ブラジルだ」と思う。

ブラジル代表は、勝利と美しさの両方を期待される国である。

だから大変であり、だから特別なのだと思う。

2026年大会で、ブラジルは6度目の優勝を目指す。

2002年以来の優勝である。

もしブラジルが優勝すれば、24年ぶりの世界一になる。ブラジルにとって24年は長い。普通の国なら、24年ぶりの優勝は夢のような話である。しかしブラジルにとっては、「そろそろ取り戻さなければならないもの」に見えているかもしれない。

この感覚もまた、ブラジルらしい。

優勝することが奇跡ではなく、優勝できない時間が問題になる国。

それがブラジル代表である。

グループCの第1回としてブラジルを取り上げると、やはりワールドカップの空気が一気に変わる。

カナダの初勝利、ボスニア・ヘルツェゴビナの復帰、カタールのやり直し、スイスの堅実さ。そういう物語も面白い。けれど、ブラジルが出てくると、そこに「優勝」という言葉が自然についてくる。

これは、ブラジルだけが持つ重さである。

ブラジル代表は、2026年大会でどんな姿を見せるのだろうか。

アンチェロッティの落ち着きと、ヴィニシウスたちの華やかさはうまく混ざるのだろうか。

2002年以来の空白は、ついに埋まるのだろうか。

ワールドカップでブラジルを見るということは、単に一つの強豪国を見ることではない。

サッカーという競技が持っている夢と、期待と、重圧を見ることでもある。

優勝候補であることを背負い続ける国。

ブラジル代表の2026年は、その重い言葉にもう一度答えを出す大会になるのかもしれない。

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