連休と長雨でバタバタしていて、気付かなかった。9月27日の日曜日から始まっていた。知ったのは10月1日、配られた回覧板が最初だった。
「鞆の浦 de ART 2026」は10月18日まで。14回目で、20組の絵画、造形、映像が、町なかの10か所に置いてある。五日遅れで知ったこちらのところへは、回覧板が一枚、先に届いた。
町並み保存拠点の鞆てらすには、彫刻家の高垣リミさんの「群れでなく道として」がある。漆を染み込ませた綿で作った、大小のヤギだ。隊列が、来た人を2階へ連れていく。高垣さんは、鞆の人や観光客に寄り添い、一緒に前へ進む姿だと話している。

寄り添う、という言葉は大きい。まだ列の前には立っていない。回覧板の字面だけでいうと、ヤギは案内板より先に、次の部屋のほうを向いているように読める。
その2階で、映像作家の矢吹貴子さんの「港坊主/MinatobOzu」が上映されている。市立鞆の浦学園の7年生と一緒に、架空の妖怪を実話風に仕立てたモキュメンタリーだ。矢吹さんは、子どもが妖怪を生み、物語を紡いだ、虚構と現実の境目を楽しんでほしいと話している。
港の妖怪は、昔からいくらでもいる。今回足されたのは、子どもが名前をつけた一本だ。実在しない話を、実在する建物の2階で見る。それだけで、帰り道の角が一つ増えるはずだ。これは、まだ見ていない側の予想である。
実行委員会の岡本純夫委員長は、「鞆は古くから人とモノが行き交う場所だった、現代アートを入り口に散策し、歴史と文化に触れてほしい」と呼びかけている。
入り口、という言い方は正しい。ただし入り口は、作品の前にはない。作品の横を通り過ぎて、いつもの道に戻ったところにある。こちらにとっては、その入り口が回覧板だった。
会期中はフォトコンテストや作品見学ツアー、ワークショップもある。作品は、作家が鞆に来てから作っている。問い合わせは福山商工会議所産業課、084-921-2349。会場は公式サイトに出ている。
アートが町を説明し始めると、道はただの動線になる。今年のヤギは、まだ動線になりきっていない、と書きたい。
ただ、列のあとを歩いたのはこれからだ。知っている角を一つ外れる。それくらいが、この催しのちょうどいい大きさだと思っている。
10月18日まで。
雨は上がった。回覧板は、もう机の端にある。

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