スイスが、ボスニア・ヘルツェゴビナを4-1で下した。
スコアだけを見ると、スイスの快勝である。だが、この試合は最初から一方的だったわけではない。むしろ長い時間、ボスニア・ヘルツェゴビナが粘り、スイスがなかなか扉を開けられない試合だった。
グループ第2戦である。
初戦でカタールと引き分けていたスイスにとって、この試合の勝ち点3は大きな意味を持っていた。勝てば一気に突破へ近づく。引き分けなら、最終戦に重さが残る。ボスニア・ヘルツェゴビナもまた、カナダ戦の引き分けを受けて、この試合で勝ち点を積み上げたい立場だった。
つまり、どちらにとっても、簡単に失えない試合だった。
前半のスイスは、ボールを動かしながらも決定的な形を作りきれなかった。押し込む時間はある。攻める姿勢もある。だが、ボスニア・ヘルツェゴビナの守備はしぶとかった。ゴール前で身体を張り、最後のところで踏みとどまる。スイスの攻撃は、何度も入口まではたどり着くが、なかなか中へ入れない。
出典:Yahoo!ニュース – Yahoo! JAPAN
ボスニア・ヘルツェゴビナには、こういう粘りがある。
大きく崩れない。簡単に音を上げない。華やかに試合を支配するわけではないが、相手の時間を長く耐え、試合を自分たちの我慢比べに持ち込む。前半を0-0で終えた時点では、ボスニア・ヘルツェゴビナにも十分に勝ち点の匂いが残っていた。
スイスにとっては、少し嫌な流れだったと思う。
勝ちたい試合で、点が入らない。時間だけが過ぎていく。第2戦の勝ち点3は、目の前にあるようで遠い。こういう試合では、焦りが少しずつ足元に出てくる。
その空気を変えたのが、途中出場のヨハン・マンザンビだった。
74分、マンザンビが先制点を決める。ようやくスイスが扉をこじ開けた。長く重かった試合が、そこで一気に動き出した。先制点というのは、得点そのもの以上に、試合の空気を変える。特にこの試合のように、長く0-0が続いた後の一点は大きい。
出典:Yahoo!ニュース – Yahoo! JAPAN
ボスニア・ヘルツェゴビナにとっては、痛い失点だった。
それまで守ってきた時間が長かった分、失点後にもう一度立て直すのは簡単ではない。さらに80分、タリク・ムハレモビッチが退場となる。10人になったことで、試合の重心は完全にスイスへ傾いた。
ここからのスイスは強かった。
84分、ルベン・バルガスが追加点を決める。2-0。これで試合は大きくスイスのものになった。ボスニア・ヘルツェゴビナは追いかけなければならないが、人数が少ない。守れば届かず、前に出れば空く。苦しい時間である。
さらに90分、マンザンビがこの日2点目を決めた。
途中から出てきた選手が、試合の主役になる。ワールドカップでは、こういう交代選手の働きが大会全体の流れを変えることがある。スイスにとってマンザンビの2得点は、単なる個人の活躍ではない。勝ち点1で終わりかねなかった試合を、勝ち点3へ変えた働きだった。
ボスニア・ヘルツェゴビナも、最後に意地を見せた。
後半アディショナルタイム、エルミン・マフミッチがゴールを決める。1-3。試合の結果を変えるには遅かったかもしれない。それでも、あの一点には意味があった。大差で終わる中でも、ただ沈むだけではない。敗れた国が、最後に自分たちの存在を示す一点だった。
だが、試合を締めたのはスイスだった。
最後にグラニト・ジャカがPKを決め、4-1。スコアは大きく開いた。終盤に入るまでは拮抗していた試合が、最後の20分ほどで一気にスイスの勝利へと形を変えた。
この4-1には、二つの顔がある。
ひとつは、スイスの底力である。難しい時間を我慢し、交代選手が流れを変え、終盤に畳みかけた。勝ち点3が必要な第2戦で、確実に勝ち切った。これは大きい。グループ突破へ向けて、スイスはかなり視界を開いた。
もうひとつは、ボスニア・ヘルツェゴビナの悔しさである。長い時間、試合を壊さずに耐えていた。0-0の時間が続くほど、彼らの粘りは意味を持っていた。だが、一度こじ開けられると、人数を失い、最後は突き放された。4失点という結果は重い。最終戦へ向けて、勝ち点だけでなく得失点差の面でも苦しくなった。
第2戦の勝ち点は、初戦とはまた違う。
初戦はまだ余白がある。だが第2戦では、勝ち点のひとつひとつが、次の試合の表情を変えてしまう。スイスにとってこの勝ち点3は、ただの勝利ではなく、突破へ近づくための大きな一歩だった。ボスニア・ヘルツェゴビナにとっては、最終戦に望みを残しながらも、背中に重い荷物を背負う敗戦である。
スイスは、派手に始めたわけではない。
前半は苦しみ、なかなか点を取れなかった。だが、最後に勝ち点3を取り切った。ワールドカップでは、その現実的な強さが何よりも頼もしいことがある。
出典:FIFA公式
ボスニア・ヘルツェゴビナは敗れた。けれど、最後の一点に、まだ消えていない意地があった。
4-1というスコアの中に、勝った国の前進と、敗れた国の苦さが同時に残った。スイスは次へ向かう足取りを軽くし、ボスニア・ヘルツェゴビナは厳しい最終戦へ向かう。
勝ち点3は、スイスの手の中に残った。
その重みが、グループBの景色を大きく変えた夜であった。




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