1959年の映画『地底探検』は、地底に着くまでがいちばん面白かった。
地底に入ってからは、正直なところ少し気分が落ちた。それでも観終わってみると、古い冒険映画らしい味わいはちゃんと残っている。この映画については、その両方を書いておきたい。
原作はジュール・ヴェルヌの小説。

作:エドゥアール・リウー
引用元:Wikipedia
1880年代のエディンバラで、地質学者のリンデンブロック教授が、火山岩の中から数百年前の探検家が残した暗号を見つける。地球の中心へ通じる道が、アイスランドの火山にあるという。

降りるまでの40分がいい
探検隊が地底に降り始めるまで、40分から45分ほどかかる。
暗号の謎解きがあり、研究を横取りしようとするライバルが現れて謎の死を遂げる。亡き夫の遺志を継ぐ未亡人カーラが加わり、無口な案内人ハンスとアヒルのガートルードが加わる。人が一人ずつ集まって、ようやく火山の頂に立つ。
今の映画なら10分で済ませるところだろう。でも、この遠回りが楽しかった。まだ何も起きていないのに、これから何かが起きるという気配だけで観ていられる。
少なくともこの映画では、いちばんおいしいところは出発前にあった。
アトランティスで、少し冷めた

地底に入ると、塩の洞窟、巨大なキノコの森、地底の海と、見せ場が続く。襲ってくる古代の巨大生物は、イグアナやトカゲに背びれを付けて撮ったもので、どこかユーモラスだ。

一つひとつには味がある。ただ、それが映画の半分近く続くと、少しずつ気持ちが離れていく。
決定的だったのは終盤だ。一行は最後に、失われた都市アトランティスの跡にたどり着く。かつて都市があったであろう風景は映る。でも、それ以上の謎も深掘りもない。地球の中心で伝説の都市を見つけたのに、物語はそこで立ち止まらない。

そしてクライマックスに出てくるのは、またしても巨大化した赤い蛇系の怪獣だった。え、こんな感じでクライマックスなのか、と思ってしまった。

前半であれだけ期待を溜めたぶん、たどり着いた先の薄さが目立った。
「特撮の名作」とだけは言えない
この映画はよく、CGのない時代の職人技、今見ても魅力的な手作りの特撮、という言い方で語られる。本物の鍾乳洞で撮った場面や、描かれた背景の広がりには、たしかにその良さがある。
作られた時代を考えれば、ここまでの不満はぜいたくだと思う。分かってはいる。それでも、いろいろな冒険映画を観てきた後だと、ついそう考えてしまう。
もう一つ、出演者を自分はあまり知らなかった。
リンデンブロック教授役のジェームス・メイソンは「海底二万里」のネモ船長だったのでかろうじて売る覚え程度。ほかの出演者ははっきり言って全く知らない。

知らない。歌手らしい。

こちらも知らない・・・
古い映画には「この人は昔こんな役をしていたのか」という楽しみ方があるけれど、今回はそれがほぼなかった。懐かしさで補えないぶん、映画そのものの力だけで観ることになった。
不満を書いたけれど、嫌いな映画ではない。
ゆっくりした前半、作り物の地底、人の好さそうな登場人物たち。全部まとめて、古い冒険映画を一本観たという手触りが残る。
広い画面の中を、知らない場所へ少しずつ進んでいく。その速度は、今の映画にはあまりないものだ。
誰に向いているか
物語の「準備」や「出発前」を楽しめる人には向いている。
逆に、冒険映画をたくさん観てきて、地底に入ってからの見せ場に期待する人には、後半が物足りないかもしれない。前半を楽しむ映画だと思って観るくらいが、ちょうどいい。

コメント