ノルウェー、イラクを突き放す|ハーランドの初舞台と、40年ぶりに戻ったイラクの意地

ワールドカップの舞台に、ノルウェーが戻ってきた。

最後にノルウェーが本大会に出たのは1998年である。そこから28年。長い空白を経て、ようやく世界の大舞台へ帰ってきた。その先頭に立っているのが、アーリング・ハーランドである。

出典:中日新聞

一方のイラクも、長く待った国だった。

1986年以来、40年ぶりのワールドカップ本大会である。国の歴史や情勢を思えば、ただピッチに立っているだけでも重みがある。だからこの試合は、強豪候補ノルウェーがイラクをどう倒すか、というだけの試合ではなかった。長く大会から遠ざかっていた二つの国が、それぞれの時間を背負って戻ってきた一戦でもあった。

ワールドカップ2026グループI、イラク対ノルウェー。結果は1-4でノルウェーの勝利である。

スコアだけを見れば、ノルウェーの快勝である。ハーランドが2点を決め、レオ・エスティゴーが追加点を奪い、最後はオウンゴールもあって突き放した。だが、試合の途中までは、そこまで一方的な印象ではなかった。

イラクはよく戦っていた。

前から出る時間もあり、ただ守るだけではなかった。ノルウェーの方が力のあるチームであることはわかる。ハーランドがいる。ウーデゴールがいる。ヨーロッパ予選を勝ち抜いた勢いもある。だが、イラクはその名前に飲まれなかった。久しぶりのワールドカップで、慎重になりすぎることなく、しっかり自分たちの試合を始めようとしていた。

それでも、ハーランドはやはりハーランドだった。

出典:x.com

29分、ノルウェーが先制する。左からのクロスに、ハーランドが合わせた。ワールドカップ初出場、初戦、そして初ゴール。これだけ注目される選手が、期待どおりに決める。簡単なことのようで、実はとても難しい。

ハーランドには、妙な重さがある。

走っているだけで怖い。ゴール前に入るだけで、守備側の視線が集まる。ボールが来る前から、もう何かが起きそうに見える。ワールドカップという舞台でも、その圧力は変わらなかった。ノルウェーの28年ぶりの帰還に、彼はいきなり自分の名前を刻んだ。

だが、イラクもすぐには折れない。

39分、アイメン・フセインが同点ゴールを決める。イラクにとって、40年ぶりのワールドカップで生まれた大きなゴールである。ノルウェーに先制されても、そこで沈まずに追いついた。スタジアムの空気が少し変わったように見えた。

出典:FIFA公式

この時間帯、イラクには明らかに勢いがあった。

「もしかすると、この試合は面白くなるかもしれない」と思わせるだけのものがあった。ハーランドに先制されても、すぐに追いついた。ノルウェーの守備には少し隙も見えた。イラクがもう一度前へ出れば、試合はわからない。そんな期待が生まれかけた。

しかし、ワールドカップでは、いい時間のあとに落とし穴がある。

前半終了間際、イラクに痛いミスが出る。GKジャラル・ハッサンの処理が乱れ、ハーランドがその隙を逃さなかった。これでノルウェーが2-1。せっかく追いついた直後の失点である。イラクにとっては、あまりにも痛い時間帯だった。

ここが、試合の分かれ目だったと思う。

1-1で前半を終えられていれば、イラクはかなり違う気持ちで後半に入れたはずである。だが、現実には2-1。しかも相手のエースに2点目を許した。ハーランドのような選手に一度ならず二度決められると、相手の守備はどうしても重くなる。

後半、イラクはなおも前に出ようとした。

完全に崩れたわけではない。むしろ、点差以上に粘っていた時間もあった。中盤でボールを奪い、ノルウェーの守備を揺さぶる場面もあった。40年ぶりの本大会で、ただ大敗を受け入れるような姿ではなかった。

しかし、ノルウェーには攻撃の出口があった。

ハーランドがいるだけで、相手の守備は下がる。そこにウーデゴールやヌサが絡み、チャンスを作る。前半から完璧なチームだったわけではない。守備には不安もあったし、イラクに押される場面もあった。けれど、前線に決め切る選手がいる。その差は、やはり大きかった。

後半に入って、レオ・エスティゴーがヘディングで3点目を決める。

出典:日刊スポーツ

これで試合はかなりノルウェーへ傾いた。イラクはまだ諦めていなかったが、2点差は重い。終盤にはアイメン・フセインのオウンゴールもあり、最終的には1-4となった。スコアは広がった。

ただ、イラクの試合が悪かったとは言い切れない。

むしろ、1-4という数字ほど弱かったわけではないと思う。前半に追いついた場面、後半も前へ出ようとした姿勢、ノルウェーを慌てさせた時間帯。そこには、40年ぶりに戻ってきたチームの意地があった。

もちろん、ミスは痛かった。

ワールドカップでは、強い相手に対して一つのミスがそのまま失点になる。特に相手がハーランドならなおさらである。イラクは、いい時間を作りながらも、要所で相手の決定力に飲み込まれた。そこが悔しい。

ノルウェーにとっては、理想的な再出発だった。

28年ぶりのワールドカップで、初戦を4-1で勝つ。ハーランドが2得点。しかもグループIでは、先にフランスがセネガルを3-1で下している。得失点差で見れば、ノルウェーはグループの上位に立つ形になった。次のセネガル戦へ向けて、大きな勝ち点3である。

ただし、ノルウェーにも課題はある。

イラクに追いつかれた場面や、押し込まれた時間帯を見ると、守備は万全ではない。ハーランドの決定力で勝った試合でもある。フランスやセネガルを相手に同じ隙を見せれば、簡単には済まないだろう。ノルウェーが本当に上へ行くには、前線の迫力だけではなく、試合全体を落ち着かせる強さも必要になる。

それでも、ハーランドのワールドカップ初戦としては、これ以上ない始まりだった。

期待され、注目され、相手に警戒され、そのうえで2点を取る。スター選手には、そういう仕事が求められる。彼はその仕事を、初めてのワールドカップでいきなりやってみせた。

イラクは敗れた。

だが、戻ってきた意味はあった。40年ぶりの本大会で、アイメン・フセインがゴールを決め、チームは一度ノルウェーに追いついた。結果は重い。しかし、ただ押しつぶされた試合ではなかった。

1-4。

ノルウェーにとっては、長い空白を越えた快勝である。イラクにとっては、世界の厳しさを改めて知る敗戦である。それでも、この試合には両国の長い時間が重なっていた。

28年ぶりのノルウェー。

40年ぶりのイラク。

その帰還の夜、主役になったのはハーランドだった。だが、イラクが見せた一瞬の反撃もまた、ワールドカップの記憶として残るはずである。

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