フランス、後半に目を覚ます|セネガルの勇敢な前半と、ムバッペが決めた王者候補の初戦

フランスが3-1でセネガルを下した。

スコアだけを見れば、王者候補がきっちり初戦を勝った試合に見える。実際、終わってみればフランスは強かった。キリアン・ムバッペが二つ決め、ブラッドリー・バルコラもゴールを奪い、グループIの初戦で勝ち点3を手にした。

だが、試合の印象はそれほど単純ではなかった。

前半を見ている間は、むしろセネガルの方がよく見えた。フランスはボールを持つ時間こそあったが、どこか重い。攻撃にいつもの鋭さが出ず、セネガルの守備と圧力にうまく流れを切られていた。対するセネガルは、強豪相手に引きすぎることなく、前へ出る意思を見せていた。

出典:Vietnam.vn

ワールドカップ2026、グループIの初戦。フランス対セネガルというカードには、どうしても2002年大会の記憶が重なる。あの時、前回王者だったフランスをセネガルが1-0で破った。大会の幕開けを揺らした、忘れがたい番狂わせである。

もちろん、時代も選手も違う。

それでも、セネガルがフランスに向かっていく姿を見ると、どこかであの記憶がよみがえる。序盤からセネガルは怖がっていなかった。ニコラス・ジャクソンが前線で動き、サディオ・マネも存在感を見せる。フランスの守備陣に対して、身体能力でも気持ちでも簡単には負けていなかった。

前半、フランスは苦しんだ。

決定機を作るまでに時間がかかり、攻撃のリズムも途切れがちだった。ムバッペはもちろん怖い。けれど、彼にいい形でボールが入らない。ウスマン・デンベレやマイケル・オリーズがいても、セネガルの守備を完全には崩せない。フランスが強いことはわかっているのに、その強さがまだ画面の中で形になっていない感じがあった。

出典:毎日新聞

一方で、セネガルにはチャンスがあった。

前半のうちに先制していても不思議ではなかった。フランスのGKマイク・メニャンの対応や、わずかな精度の差がスコアを動かさなかっただけで、流れとしてはセネガルが先に何かを起こしそうな時間帯もあった。0-0で折り返したことは、フランスにとって救いだったかもしれない。

後半、試合は変わった。

フランスが少しずつ前へ出る。オリーズが中央寄りでボールに関わり、攻撃の形が整理されていく。前半の重さが、後半には少しずつ消えていった。こういうところが、フランスの怖さである。うまくいかない時間があっても、修正して、最後には個の力でこじ開けてくる。

66分、ムバッペが先制する。

オリーズのパスに反応し、ペナルティエリア内でしっかり仕留めた。前半はセネガルがよく耐え、むしろ主導権を握る場面もあった。だが、フランスにはムバッペがいる。少しの隙があれば、そこを逃さない。世界最高級の選手がいるチームとは、こういうものなのだと思わされるゴールだった。

出典:毎日新聞

このゴールで、試合の空気は大きく変わった。

セネガルは悪くなかった。むしろ、よく戦っていた。だが、先に取ったのはフランスだった。ワールドカップでは、内容とスコアが必ずしも一致しない。いい時間を過ごしていても、そこで決めなければ強豪に持っていかれる。セネガルにとっては、その厳しさを突きつけられた場面だった。

82分、フランスが追加点を奪う。

途中出場のブラッドリー・バルコラが決めた。ベンチから出てきた選手が、試合を決めにいく。ここにもフランスの層の厚さが出ていた。スターターだけではない。途中から出てくる選手にも、流れを変える力がある。大会を勝ち進む国には、こういう余力が必要になる。

2-0。

この時点で、試合はフランスのものになりかけた。

それでもセネガルは終わらなかった。アディショナルタイムにイブラヒム・エムバイェが1点を返す。若い選手の一撃が、セネガルの意地を示した。

出典:毎日新聞

スコアは2-1。ほんの短い時間ではあったが、試合にもう一度緊張感が戻った。

ただ、その直後にムバッペがまた決める。

遠い位置からの強烈な一撃。セネガルが希望をつないだ直後に、フランスのエースが試合を終わらせた。あの場面には、少し残酷なほどの力の差があった。追いすがる相手に対して、最後の最後でさらに突き放す。フランスは、苦しみながらも、結局は勝ち切るチームだった。

ムバッペはこの2得点で、フランス代表の歴代最多得点者となった。

オリヴィエ・ジルーが持っていた記録を超え、27歳でフランス代表の頂点に立った。しかもワールドカップの初戦で、チームを勝たせる2ゴールである。記録のためのゴールではなく、勝利のためのゴールだったところに、彼の特別さがある。

ただ、この試合をムバッペだけで語るのは少しもったいない。

前半のセネガルは、本当に良かった。強豪相手に臆せず、前へ出て、フランスを困らせた。攻撃の迫力もあり、守備の集中もあった。もし前半のチャンスを一つ決めていれば、試合はまったく違うものになっていたかもしれない。

セネガルにとっては、悔しい敗戦である。

3-1というスコアは、少し差がついたように見える。だが、内容としてはそこまで一方的ではなかった。前半に勝機があり、終盤にも一点を返した。アフリカ王者の系譜を持つ国として、セネガルは十分に堂々としていた。だからこそ、決定力と終盤の守備の差が悔しい。

フランスにとっては、理想的ではないが大きな勝利だった。

出典:毎日新聞

前半は重かった。セネガルに苦しめられた。だが、後半に修正し、ムバッペとバルコラで3点を奪った。初戦は内容よりも結果が大事になることがある。ましてこのグループIには、ノルウェーとイラクもいる。簡単な組ではない。そこでまず勝ち点3を取ったことは大きい。

フランスは、やはり強い。

ただし、完璧ではなかった。そこが逆に怖い。完璧ではないのに勝つ。前半苦しんでも、後半にギアを上げて勝つ。世界大会で優勝を狙う国には、そういう勝ち方がある。

セネガルは負けた。

けれど、消えたわけではない。次の試合に向けて、十分に可能性を残した敗戦だった。むしろ、この前半の出来を見れば、グループIはまだ簡単には決まらないと思う。セネガルがこのまま沈むとは思えない。

3-1。

フランスが勝った。ムバッペが記録を作った。バルコラが試合を決め、セネガルは最後まで抵抗した。結果だけを見れば順当な勝利である。だが、その中身には、セネガルの勇敢な前半と、フランスが後半に見せた王者候補の底力が同時に残っていた。

ワールドカップの初戦は、チームの現在地を映す。

フランスは、まだ余力を残したまま勝った。セネガルは、敗れてなお強さを見せた。グループIは、ここからさらに面白くなりそうである。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次