イラン、二度追いつく|負けないアジア勢と、静かに広がる旋風の気配

今大会のアジア勢は、まだ負けていない。

そんなことを思いながら、イラン対ニュージーランドを見ていた。

もちろん、まだ大会は始まったばかりである。数試合を見ただけで大きなことは言えない。けれど、韓国はチェコに勝ち、日本はオランダに追いつき、オーストラリアはトルコを退け、サウジアラビアはウルグアイを追い詰めた。そしてこの試合では、イランがニュージーランドに二度リードされながら、二度とも追いついた。

ワールドカップ2026グループG、イラン対ニュージーランド。結果は2-2の引き分けである。

スコアだけを見れば、勝ち点1ずつの分け合いだ。だが、見ている側としては、そこに少し不思議な感覚があった。ニュージーランドが先に点を取っても、どこかで「イランは追いつくだろう」と思っていたのである。

それは根拠のある予想というより、試合の空気から来るものだった。

イランには、簡単には折れない雰囲気があった。リードされても慌てすぎない。試合が荒れても、流れが相手に行っても、どこかで自分たちの時間を取り戻すだろうという重さがあった。中東の強豪として何度もワールドカップを経験してきた国の、見えにくいしぶとさである。

試合は、ニュージーランドが先に動かした。

前半早い時間、イライジャ・ジャストがゴールを決める。クリス・ウッドが関わり、ニュージーランドが理想的な形で先制した。ニュージーランドにとっては、これ以上ない入りだったはずだ。ワールドカップでの初勝利をまだつかめていない国にとって、この先制点は大きな希望になった。

出典:Vietnam.vn

けれど、イランはすぐに沈まなかった。

前半のうちにラミン・レザイアンが同点に追いつく。こぼれ球に素早く反応し、相手GKの前へ押し込む。きれいな崩しというより、ゴール前の一瞬を逃さない、実にイランらしい得点だった。これで1-1。試合は振り出しに戻った。

出典:東京新聞

この時点で、やはりと思った。

ニュージーランドが先に取ったとしても、イランは追いつく。そんな妙な予感が、実際のスコアになったからである。チームの形がどうこうというより、ワールドカップでの経験値、体の強さ、最後にねじ込む力。そういうものが、イランにはあるように見えた。

後半、ニュージーランドがもう一度前に出る。

再びクリス・ウッドが絡み、イライジャ・ジャストがこの日2点目を決めた。ニュージーランドにとっては、勝利が現実味を帯びるゴールだった。二度リードしたのである。ここまで来れば、初勝利が見えてくる。ニュージーランドの選手たちにも、スタンドにも、その期待が広がったはずだ。

だが、ここでもイランは終わらない。

10分後、モハマド・モヘビがヘディングで同点に追いつく。レザイアンのクロスから、ファーポストへ当てるような見事な一撃だった。イランはまた追いついた。二度リードされ、二度追いつく。これで2-2。試合はまた振り出しに戻った。

出典:Yahoo!ニュース – Yahoo! JAPAN

この日のイランは、勝ち切ることはできなかった。

終盤にはさらにチャンスを作ったが、最後の一点までは届かなかった。だから、イラン側から見れば満足できる引き分けではないだろう。ニュージーランド相手に勝ち点3を取りたかったはずだし、グループGを突破するには、こういう試合で勝つことが重要になる。

それでも、負けなかったことには意味がある。

今大会のアジア勢を見ていると、一つの国だけが目立っているわけではない。韓国、日本、オーストラリア、サウジアラビア、そしてイラン。それぞれ試合の中身は違う。勝った国もあれば、追いついた国もある。だが共通しているのは、強豪や曲者を相手に簡単には負けていないということだ。

以前なら、ワールドカップでアジア勢が一つ勝つと、それだけで大きな話題になった。

もちろん、今でも勝利は大きい。だが今回は、少し違う感じがする。一つの国だけが奇跡を起こすのではなく、アジア勢全体が大会の空気を揺らしているように見えるのである。韓国が勝ち、日本がオランダに追いつき、オーストラリアがトルコを倒し、サウジアラビアがウルグアイと引き分け、イランもニュージーランドに二度追いつく。

これは偶然だけではないのかもしれない。

アジアのチームは、それぞれ違うサッカーをしている。日本は技術と粘り、韓国は強度と勢い、オーストラリアは守備の粘りと決定力、サウジアラビアは大物相手の大胆さ、イランは重くしぶとい勝負強さ。国ごとに色は違う。けれど、その違いを持ったまま、ワールドカップの舞台で簡単には倒れない。

そこに、今大会の面白さがある。

出典:Yahoo!ニュース – Yahoo! JAPAN

ニュージーランドにとっては、悔しい引き分けだったと思う。

二度リードした。イライジャ・ジャストは2点を決めた。クリス・ウッドも攻撃の基点となった。ワールドカップ初勝利に、かなり近づいていた。だからこそ、試合後には「勝てたかもしれない」という思いが残ったはずである。

それでも、ニュージーランドもまた、ただ守るだけのチームではなかった。

二度リードを奪ったことは大きい。イラン相手に堂々と攻め、点を取った。ワールドカップで勝つことの難しさをまた味わった一方で、自分たちにも十分戦えるという手応えは得たはずだ。次のエジプト戦へ向けても、この勝ち点1は決して小さくない。

グループGは、初戦からすべてのチームが引き分けた。

ベルギーとエジプトが1-1。イランとニュージーランドが2-2。4チームが勝ち点1で並ぶ形になった。まだ誰も抜け出していない。逆に言えば、次の試合で大きく景色が変わる。イランはベルギーと、ニュージーランドはエジプトと向き合う。

ここからが本当の勝負である。

ただ、この試合を見終えたあとに残ったのは、グループGの混戦だけではなかった。アジア勢がまだ負けていないという事実が、思った以上に大きく感じられた。大会前にどれだけ予想しても、実際に始まってみないとわからないことがある。今大会では、アジア勢全体が何かを起こすのではないか。そんな気配が、少しずつ濃くなっている。

イランは勝てなかった。

だが、負けなかった。

二度リードされても追いついた。そのしぶとさは、今大会のアジア勢全体に流れている空気とも重なる。どこか一つの国だけではない。いくつもの国が、それぞれの形で世界に食らいついている。

2-2。

ニュージーランドにとっては逃した勝利であり、イランにとっては取りこぼした勝利でもある。だが、アジア勢という大きな流れで見れば、この引き分けもまた、負けない大会の一部である。

ワールドカップ2026の序盤、アジアのチームたちは静かに、しかし確かに存在感を増している。もしかすると今回は、一国の番狂わせではなく、アジア全体の旋風として記憶される大会になるのかもしれない。

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