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鑑賞ノート
『美食探偵 明智五郎』が照らし出す、孤独と欲望のかたち
人は、何かを食べるとき、ほんのわずかに“弱さ”を見せる。『美食探偵 明智五郎』を見ていると、料理の美しさの裏側に、人間の脆い部分が静かに浮かび上がってくる。その弱さに寄り添うように、明智五郎は淡々と、しかしどこか寂しげに事件へと向き合うので... -
鑑賞ノート
悪なしでは生きられない――『二人のカーク』が問う、自己の闇と転送装置という哲学的装置
カーク船長は、自分の「悪」に向かってこう言った。 「君なしでは生きられない……君は私の力だ……君が必要なんだ。我々は一人の人間の半分ずつなのだから、二人とも生き延びる」 これは敵への降伏ではない。自分自身の暗い側面への、命がけの抱擁だ。 出典:... -
鑑賞ノート
感情は弱さか、力か――『魔の宇宙病』が示す、理性と感情の統合というスター・トレックの哲学
感情を持たないはずの男が、泣いていた。 ブリーフィング・ルームの片隅で、膝を抱えて嗚咽するスポック。彼の口から漏れたのは「私に感情はない!」という叫びだった。感情に押しつぶされながら「感情はない」と叫ぶ——これほど痛烈なアイロニーが、1960年... -
鑑賞ノート
罠の中に自ら入った男――『パイルD-3の壁』が示す、コロンボ最大の逆転劇
コロンボは、わざと負けた。 パイルD-3を掘削する許可を取り、手間とコストをかけ、衆人環視の中で掘り返した。そして何も出なかった。マーカムは勝ち誇り、コロンボは屈辱を受けた——ように見えた。 しかしそれは全て、コロンボの計算の内だった。 『刑事... -
鑑賞ノート
恐怖を証拠に変えた男――『死の方程式』が示す、コロンボの心理戦という真実
コロンボには、物証がなかった。 爆弾は爆発で消え、葉巻の箱も燃え尽きた。残ったのは、犯人への疑念と、一瞬の視線だけだ。 それで十分だった。 『刑事コロンボ』第8話「死の方程式」(原題:Short Fuse、1972年1月放送)は、証拠ではなく人間の心理を武... -
鑑賞ノート
『D坂の殺人事件』考察|明智小五郎の登場と乱歩が描いた人間心理
はじめに:古い探偵小説を読む面白さ 江戸川乱歩の「D坂の殺人事件」を読むと、まず印象に残るのは、事件そのものの派手さよりも、どこか湿ったような空気です。 舞台は大正時代の東京。古本屋、狭い路地、日本家屋、そこに暮らす人々の視線や気配。今の感... -
鑑賞ノート
友人を殺した男の慈悲――『光るめだま』が問う、論理と義務と人間性
スポックは正しかった。そしてカークも正しかった。 同じ出来事に対して、どちらも正しいということがある。それがこのエピソードをスタートレック史上、最も後味の重い一編にしている理由だと思う。 『スター・トレック 宇宙大作戦』第3話『光るめだま』... -
鑑賞ノート
力だけを持った子供――『セイサス星から来た少年』が問う、制御なき権力と帰る場所のない孤独
「ここにいたいんだ」。 チャーリー・エヴァンスが連れ去られる直前に叫んだこの言葉が、このエピソードのすべてを要約している。彼は最後まで、誰かのそばにいたかっただけだった。しかしその願いは、誰も傷つけずには叶えられないほど、危険な力と結びつ... -
お店と日々
正しいことを言う前に、少し立ち止まる夜
先日、同級生から店の周年祝いのメールをもらった。(3月11日で18周年!🎉) ただ、その文面が少しおかしかった。祝いの言葉ではあるのだが、どこか落ち着かず、普段の調子とも違っていた。気になって、こちらから電話をしてみた。 すると、受話器の向こう... -
鑑賞ノート
幻想の罠――『惑星M113の吸血獣』が問う、欲望と記憶の危うさ
誰もが「見たいもの」を見ている。 惑星M-113に降り立ったマッコイ医師が旧友ナンシーと再会したとき、彼の目に映ったのは「少しも歳をとっていない」若々しい女性だった。 一方、カーク船長は年相応の女性を見た。若いクルーのダーネルは、まったく別の見...