グロリア・スチュアート– tag –
グロリア・スチュアートといえば、ジェームズ・キャメロン監督の『タイタニック』(1997年)における老境のローズ役で広く知られているが、彼女の映画史における真の凄みは、1930年代のユニバーサル・ホラー黄金期にまで遡る。ジェームズ・ホエール監督の『魔の家』(1932年)や『透明人間』(1933年)において、彼女は古典的なハリウッド美女の気品を湛えながら、ゴシックな恐怖に直面するヒロインを見事に演じきった。アーネスト・セシジャーらが放つ特異な狂気や、暗鬱なスタジオセットの影に対し、スチュアートの知的で洗練された佇まいは、作品世界に美しいコントラストと人間的なドラマをもたらす「光」の役割を担っていたのである。1930年代のスタジオ・システム全盛期から、世紀末のデジタル超大作に至るまで、文字通りハリウッド映画史の生き証人となった彼女のキャリアは極めて稀有だ。本タグでは、『タイタニック』で歴史的再評価を受ける遥か以前、1930年代の銀幕において彼女が怪奇映画やサスペンスの演出にいかなる格調高さを付与していたのか、その初期傑作群を中心に紐解いていく。