バート・I・ゴードン– tag –
バート・I・ゴードンは、1950年代から70年代にかけてのアメリカB級映画界に君臨し、自身のイニシャルと作風から「Mr. BIG」の愛称で親しまれたカルト的な映画監督である。『戦慄!プルトニウム人間』(1957年)や『巨大カニ怪獣の襲撃』(1957年)などに代表されるように、放射能の影響で巨大化した生物や人間が暴れ回るSF特撮映画を量産し、当時のドライブイン・シアター文化を大いに熱狂させた。写真の拡大やリア・プロジェクション(背景透過式合成)などの安価な視覚効果を駆使したDIY精神あふれる作風は、洗練されたハリウッド大作とは対極にあるものの、冷戦下の核への恐怖という重い時代精神を、キッチュでいかがわしいエネルギーへと見事に変換している。リチャード・カールソン主演の『空飛ぶ生首』(1960年)のようなサイコロジカルなアプローチの異色作も含め、彼の泥臭くも愛すべき映像マジックは、映画というメディアが持つ「見世物」としての根源的な面白さに満ちている。本タグでは、B級映画特有のチープネスの裏に張り付いた大衆の欲望と狂騒を、力技ともいえる彼の特異な演出手法から深く考察していく。