横溝正史– tag –

江戸川乱歩と双璧をなす日本探偵小説界の巨星であり、名探偵・金田一耕助の生みの親、横溝正史。エドガー・アラン・ポーやジョン・ディクスン・カーら欧米の本格ミステリが構築した精緻な論理や密室トリックを、日本の土着的な風土、旧家の血の呪縛、そして因習に縛られた閉鎖的な村社会というドロドロとした和風ゴシックの世界観へと見事に移植した功績は計り知れない。

彼の作品はテキストとしての魅力にとどまらず、長きにわたり映像クリエイターたちの表現欲求を激しく刺激し続けてきた。とりわけ1970年代後半、市川崑監督による『犬神家の一族』(1976年)をはじめとする一連の角川映画シリーズは、明朝体の巨大なタイポグラフィや、光と影のコントラストを極限まで強調した先鋭的なカッティングにより、おどろおどろしい横溝の世界を極めてスタイリッシュな映像美へと昇華させている。

本タグでは、敗戦の影や近代化の波に取り残された日本人の土着的な情念を描き出した横溝ミステリの本質を紐解いていく。同時に、中尾彬をはじめとする個性豊かな歴代の金田一俳優たちの比較や、市川崑や高林陽一といった映像作家たちがいかにしてテキストの泥臭さを映像のマジックへと変換したのか、その演出の変遷と映像化の歴史を深く考察していく。